ランク29位は「妥当」と語る松山英樹 続く偉業と他選手のレベルアップ

松山英樹は12年目のPGAツアーで1勝

◇米国男子プレーオフ最終戦◇ツアー選手権 最終日(24日)◇イーストレイクGC(ジョージア州)◇7440yd(パー70)

年明け早々に優勝した開幕戦「ザ・セントリー」の後、松山英樹は2025年シーズンの目標を当初よりも高く設定し直したという。直前のオフにほとんど練習することなく臨んだハワイでのエリート大会を制したことで、「モチベーションもハードルも“上がってしまった”」。PGAツアー12年目のシーズンは、理想と現実の間に自らを長くさまよわせた。

ツアー選手権には2年連続11回目の出場を果たした

初戦の勝利に次ぐ今季の高成績は2月「ザ・ジェネシス招待」と6月「ロケットクラシック」の13位。10月の「ベイカレントクラシック」(神奈川・横浜CC)を残す中、トップ10入りは12シーズンで最も少ない1回にとどまる。年間ポイントレース(フェデックスカップ)上位30人によるプレーオフシリーズ最終戦「ツアー選手権」への進出(2年連続11回目)はやはり、ツアー通算11勝目が大きく働いた。

PGAツアー選手の誰もが目標に掲げる最終戦進出の事実は、松山の一貫した力強さを示し続けている。2007年のフェデックスカップ創設後、松山以上に出場回数が多いのは12回のダスティン・ジョンソンとロリー・マキロイ(北アイルランド)だけ。賞金ランクで争われていた2006年以前を含めても、2人を含む11人しかいない(最多はフィル・ミケルソンの19回)。

年間トップ10入りが1回はキャリアで最少。ベイカレントクラシックで増やせるか

松山は2023年にシリーズ第2戦で敗退し、連続進出記録が継続中選手として最長の9年で潰えた。この数字を追う急先鋒だったトニー・フィナウとザンダー・シャウフェレは今年、それぞれ第1戦と第2戦で姿を消し、最終戦出場が8年連続でストップ。トップ30に入り続けることの難しさが改めて証明された。

エリートとしての松山の地位はいまだ揺るがない。一方でその11回目の出場大会は上位のバーディ合戦についていけず、30人中29位に終わった。このポジションについて「現状からすると妥当だと思う」と口にした。「かといって、トップ10…上位に行けなさそうなゴルフをしているようには感じない。これだけ(結果が)悪いので強がりかもしれないですけど…。そこは強がって、自分が良い状態でいれば上位でプレーできると信じてやるしかない」

松山本人のパッティングのスタッツは上昇傾向に

2022年以降、LIVゴルフの台頭で複数のタレントが去ったPGAツアーだが、この期間も所属選手のスタッツは多くの部門で向上している。ちょうど10年前、松山の2年目のシーズンだった2015年に「71.162」だった平均スコアは20年に「71.099」、今季は「71.018」に下がった(25年はツアー選手権終了時点でのデータ)。1ラウンドあたりの平均バーディ数が15年「3.54」、20年「3.69」、25年「3.72」と増えているのが大きな要因としてある。

レベルアップするPGAツアーで松山英樹はサンドセーブ率、スクランブリング率でトップクラスにいる

伸びが顕著なのは平均飛距離で、15年「289.7yd」→20年「296.4yd」→今季は「303.7yd」と10年間で14ydも長くなった。パーオン成功ホールでの平均パットも「1.776」→「1.767」→「1.763」に減少。サンドセーブ率の平均に至っては20年に「49.68%」だったのが今季は「56.69%」と5年のうちに劇的に良くなった。ちなみにそのトップを走るのが71.32%の松山ではあるのだが…、他選手の着実なレベルアップは疑いようがない。

9月には英国、10月には日本、韓国へ

今年2月に33歳になった。アトランタで初優勝を飾ったトミー・フリートウッドが34歳、最終組でぶつかったパトリック・カントレーが同い年であることを考えれば、まだ老け込む年齢でもない。3年ほど前に選手生命すら脅かした首や背中のけがの症状は年々、軽減されているように感じる。だからこそ現在の地位を守る、さらなる高みを目指す上では“現状維持”では難しい。「何かを変えないといけないのもある。継続してうまくいき始めている部分もある。それをどうしていくか」。次のトライが欠かせない。

「不甲斐ない」とも悔しがるシーズン。伸び盛りの選手たちと自身の強みと弱みを洗い出し、的確な対策を講じられたか。あるいは、ゴルフ場でいつも全力を傾けられる状態にあったか。秋は英国、韓国での欧州ツアー、日本での米ツアーに出場予定。誰よりも松山本人が自分と向き合う時間が始まる。(ジョージア州アトランタ/桂川洋一)