ホンダ・レーシング・スクールがEXGEL MAX CHAMPとコラボ。佐藤琢磨「子供たちが夢を実現する、そのサポートをしたい」

 今年の7月、ホンダ・レーシング・スクール・鈴鹿(HRS)とEXGEL MAX CHAMPがコラボレーションしたカートスクール「サマースクール2025」が実施された。HRSのプリンシパルである佐藤琢磨は、このサマースクールにどんなことを期待しているのか? 話を訊いた。

 HRSは昨年まで、”フォーミュラ”と”カート”の2本柱で若いドライバーの育成を行なってきた。しかしプログラム再編の一環で、2025年からはフォーミュラに特化したプログラムへと移行することとなった。

 とはいえカートは、レーシングドライバーになるための第一歩とも言える。カートを経ずしてレースの世界に足を踏み入れたというドライバーはとても少ない。

 今、そのカートの世界で隆盛しているのが、EXGEL MAX CHAMPだ。鈴鹿サーキットの南コースを舞台に行なわれるこのシリーズでは、100人以上のドライバーが参戦するラウンドもある。海外から挑戦しに来ているドライバーも少なくない。

 そのEXGEL MAX CHAMPとHRSのコラボレーションとして行なわれたのが今回のサマースクールで、EXGEL MAX CHAMPから3クラス合計47名が参加。佐藤琢磨をはじめ、中野信治、佐藤蓮、野村勇斗らが講師を務めた。

 この初開催となったサマースクールについて、佐藤琢磨は次のように語った。

「HRSとしてはフォーミュラクラスに集中して行くことになりますが、カートの重要性は十分に理解していますので、これまでのカートスクールで培ってきたカリキュラムなどを取り入れながら、今後もサマースクールを開催できればと考えています」

 そう佐藤は語った。

「カートは若い世代の子たちがトレーニングするには最適な環境です。カートを走っている頃から、ドライバーとしての取り組み方や走らせ方などが見えるので、HRSとしても、早い時期から彼らの成長を把握するのは大切なことだと考えています」

「EXGELの小川さん(EXGELを展開する株式会社加地の小川要社長)には、これまでもスクールにご協力をいただいており、HRSに参加したドライバーの何名かは実際にEXGEL MAX CHAMPの卒業生です。そういう関係もあって、今回はご相談させていただきました。今年の開幕戦を視察させていただいた時に、やはりレース現場ならではの活気を感じましたし、ここでコラボできたら素晴らしいよねということで、話が一気に進みました」

成長する姿を、時間をかけてみていきたい

HRS×EXGEL MAX CHAMPサマースクール

 佐藤はEXGEL MAX CHAMP開幕戦の際、「どんなことが一緒にできるか、話し合っていかなきゃいけない」「ここで頑張っている選手をHRCとして応援できるような、そういう枠組みができれば理想的」だと語っていた。そのひとつが、今回開催されたサマースクールだったということだろう。では今後の協業の可能性はどうか?

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「今後具体的にどうするかというのは、まだ構想の段階なのですが、EXGEL MAX CHAMPに参戦している元気の良い子、ポテンシャルを秘めているなと感じた子を対象にフォーミュラ走行の体験会ができたらどうかと打診しています」

「HRSにはノウハウがあります。このサマースクールがきっかけとなり、スクールの重要性を多くの方に認知して頂ければ、モータースポーツ自体が活性化すると思いますし、より良いドライバーも集まってくるのではと思います」

 HRSとしては、サマースクールを介してEXGEL MAX CHAMPの優れた才能を選抜してくる……そういうことを狙っているのか? そう尋ねると、佐藤は次のように語った。

「ヘッドハンティングは、今もやろうと思えばできます。でも我々は、あくまでスクールとしての取り組みを大切にしていきたいと考えています。ひとりでも多くのドライバーに、自ら考えて動き、その先に広がるチャンスを掴んでもらいたいし、我々は生徒ひとりひとりがさまざまな面で成長する姿を時間をかけて見ていきたいと思っています」

「レースウィークだけを見るなら、当然前の方を走っている子が目立ちます。でもリザルトだけでは分からない、光るモノを持ったドライバーは、たくさんいます。だからレースをやって、その翌日にそのまま居残ってサマースクールをやるというのは、理想的だなと今回改めて思いました」

「子どもたちはもちろん真剣ですが、スクールならば、レースとは少し違った雰囲気でリラックスした環境の中で話もできますし、その子がどんなことを考えて、どんな風に取り組んでいるのかというのも見えます。その中で、我々が興味を持った子、あるいはこちらに興味を持ってくれた子も出てくると思います。将来についてはまだ模索している段階ですが、色々とアイデアが広がるのではとも思います」

 ではリザルトには現れない“光るモノ”とは一体何なのか? 佐藤はこう説明する。

「レースはマシンを使うスポーツなので、道具が重要です。その時代、その環境に合った一番良いモノを使っていると、やはり前に来る……つまり、ドライバーの力というのは、リザルトだけでは見えません」

「苦しい状況の中でも、コーナーでのマシンの操り方や動かし方などのセンスっていうのは見えるので、そういうドライバーに着目してみたりします。今回のサマースクールでは、カートは自分のモノを持ってきてもらいますが、タイヤはこちらで用意したり、子どもたちにも大人気だったコース逆走をしたりして、初めてのことに挑んでもらったりします。そういう時の適応力や、順応する力、工夫する姿勢を見たりします」

夢を実現するサポート

Ren Sato, HRS×EXGEL MAX CHAMPサマースクール

 佐藤はこのスクールを通じて目指していることを、こう熱く語った。

「EXGELさんはスカラシップとして、海外レースに挑戦するサポートを行っています。本当に素晴らしいですよね。HRSとしても、我々ならではのことをやりたいと思っています」

「まだ始めたばかりですから、我々も学びながらではありますが、少しでも多くのドライバーに挑戦してもらい、チャンスを掴める場を提供していきたい。その先にはフォーミュラのスクールがあって、ホンダと共に世界を目指すという志を持った子たちに、夢を実現するサポートができればなと思うんです」

 HRSは、前身のSRS(鈴鹿サーキット・レーシングスクール)の時代には佐藤琢磨が巣立ち、現在レッドブルでF1を戦う角田裕毅も卒業生のひとり。現役ドライバーの中にも、HRSやSRSを卒業したドライバーは数多くいる。

 カートクラスを一旦終了させるなど、新たな時代を迎えたHRS。EXGEL MAX CHAMPとのコラボレーションにより、今後どんなドライバーが現れ、世界へと挑んでいくのだろうか?

HRS×EXGEL MAX CHAMPサマースクール

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