今季最強F1マシン、マクラーレンMCL39。シーズン序盤に抱えていた”弱点”を開発で解決
今季のF1前半戦を席巻したマクラーレン。しかしシーズン序盤には弱点も顕在化していたという。ただその弱点は、開発によって克服されたようだ。
マクラーレンは前半14戦を終えた段階で559ポイントを獲得。2番手のフェラーリに対して299ポイントもの大差をつけている。しかも直近4戦では連続で1-2フィニッシュを決めた。このままいけば、最速で夏休み明け3戦目のアゼルバイジャンGPで、今季のコンストラクターズタイトル獲得を決めてしまう可能性がある。
MCL39はタイヤに優しく、長いスティントでも安定したパフォーマンスを発揮するため、レースペースにはほとんど問題はなかった。また、ライバルチームのパフォーマンスが不安定だったことも、マクラーレンの強さを後押しした。
ただ予選でのパフォーマンスは、MCL39の弱点である。ふたりのドライバーは揃って、1周のアタックラップで思い通り操るのが難しいと語る。それは特に、バーレーンでのプレシーズンテストで顕著だった。
「バーレーンでのテストでは、ステアリングやフロントサスペンションに問題があるという懸念があった。マシンの限界でのドライビングが、非常に難しかったんだ」
ピアストリはそうmotorsport.comのインタビューで語った。
「レース想定での走りは、常に好調だった。でも、予選シミュレーションは本当に苦労したんだ」
「その問題を解決するための作業は山積みだった。そして今年もそういうエピソードが見られた。例えばカナダなど、いくつかのサーキットでは限界まで引き出すのがかなり難しかった。他が好調だったから、これはおそらく、僕らが最も声高に訴えてきた点だ」

Oscar Piastri, McLaren
ランド・ノリスは、特にこの点を強く訴えていた。チーム代表のアンドレア・ステラ曰く、ふたりのドライバーが感じていたのは、感覚の鈍さであったようだ。
そのためチームは、フロントサスペンションの新しいパッケージを開発し、実戦投入。このサスペンション・パッケージにより、キャスター角(上下ウイッシュボーンのジョイント角度)が変更され、これに伴いキングピン(操舵角)の傾きも変更された。
これによりドライバーがステアリングを操作している際にホイールに自動調整トルクがかかり、その感触がステアリングホイールに伝わる。手からのフィードバックを重視するノリスは、特にこの恩恵を受けたようだ。
ただこれにはデメリットもある。キャスター角を大きくすると、旋回する際のステアリング操作に必要な力も増える。ただ、F1マシンにはパワーステアリングが備えられているため、それほど大きなデメリットではないはずだ。
しかし、他の運動力学的変数への影響には注意が必要だ。例えばコーナリング時、マシンの挙動はキャンバー角(ホイールの横方向の傾き)によって変化するが、キャスター角を変えるとキャンバー角にも影響を及ぼしてしまう可能性があるのだ。

Mclaren MCL39 technical detail
ノリスはこのサスペンションパッケージを採用したが、一方のピアストリはこれを採用しなかった。ピアストリはノリスに比べて、ステアリングホイールから伝わる感触を重視していない傾向にあるからだ。そしてピアストリは、セッティングの変更によって不安を軽減できたと、感じていることを明かしていた。
「そういう感触やフィーリングに関しては、僕はあまり苦労していない」
そうピアストリは語った。
「フロントサスペンションを色々と試してみて、大きな変化があるかどうかを確認した。でも今のところ満足している」
「大きな懸念事項ではないけど、最初はコンディションによっては、マシンのドライビングがかなり難しいという感覚を抱いていた」
「セットアップでその問題に対処することは、以前よりもずっとうまくいったと思う。僕自身の期待値も高めることができ、マシンに慣れることができた。今はもう、特に気に入らない特徴はないよ」
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