「左肩の我慢」が飛距離を生む! “下半身と上半身”を正しく使う“3ステップドリル”【西川哲の“そもそも”ゴルフ論#12(終)】
運命の巡りあわせによってスポーツ史に偉業をもたらすことがある。甲子園を沸かせたPL学園の桑田真澄、清原和博の「KKコンビ」が活躍した同じ頃、日体荏原高校に3人のジュニアゴルファーが集まった。伊澤利光、丸山茂樹、そして「今回の連載」の主人公、西川哲である。全国高校団体優勝の主軸として活躍し、日体荏原黄金時代を築いたメンバーのひとり。個人でも関東高校3連覇、日本ジュニアのタイトルも手中に収め、プロ入り後もツアー3勝を挙げた。伊澤、丸山だけでなく、多くのプロゴルファーが一目置く「西川哲のゴルフ」。これまで多くを語らなかった西川だが、その内容は意外なものだった。

画像: 「左肩の我慢」が飛距離を生む! “下半身と上半身”を正しく使う“3ステップドリル”【西川哲の“そもそも”ゴルフ論#12(終)】
プロゴルファー西川哲
19歳でプロテストをトップで合格(当時の最年少記録)。レギュラーツアー3勝の実績を持つ。現在は「バーディ赤坂24」を主宰。
なお、バーディ赤坂24では初回【無料体験レッスン】を実施中
左肩の我慢がすべてを左右する
前回はゴルフのみならず他のスポーツでも使われている基本的な体の使い方である“体重移動”、そして“捻転差”について解説してもらった。西川がこれまでの連載で幾度となく「体全体を使うのが基本」と話すが、その核心に触れた回だった。クラブを一つの部位に頼って扱うのではなく、全身を効率良く使いながら、自然の勢いも利用することでクラブが勝手に加速する仕組みをつくる。そうすることで自分の肉体以上の力が加わり飛距離に繋がるという話だった。
しかし「実際にアマチュアをレッスンするとほとんどの人が体重移動や捻転差が作れていないんです」と西川は言う。
「クラブ自体がそこまで重たい物じゃないので、アマチュアの方達はどうしても手先だけで操ろうとしてしまうんです。そして間違った使い方でもボールに当たってしまうから、余計に正しいスウィングが分からなくなってしまう。
だから体重移動と上半身と下半身の正しい動かし方を説明してからドリルをやってもらったりしています」(西川・以下同)
西川が伝えているドリルはシンプルな物だ。

西川が伝えるドリルはこの3つの動きのみ
①両足をくっつけた状態でトップを作る
②左足を踏み出す
③左足が地面に触れた瞬間にスウィングする
この3つで完結する。それぞれのポイントを解説してもらった。
「まず①の足のくっつけ方ですが、右足は動かさずに、左足をスライドして作ります。そうすることで右足に体重が乗りやすくなるんです。
②のポイントは左肩が動かないように左足を踏み出します。これまで言ってきた切り返しで上半身と下半身が一緒に回らないようにするための注意点と同じです。この左肩の我慢をするから捻転差が生まれて、飛ばしのエネルギーに変えることができます。
そして③では②で溜めたエネルギーを一気に解放します。左足が地面にふれた瞬間にスウィングしてください。しっかり②で左肩が我慢できていると、手先を使っていないのにクラブが勝手に走ってくれる感覚を体感できます」
▶西川プロは「重たい物を投げる時の動きとゴルフに共通する体の使い方がある」というが……
今も昔も変わらない技術がある
このドリルは実際に西川もウォーミングアップで取り組んでおり、アマチュアがスウィングの基本を網羅するためにうってつけの方法だ。そしてこのドリルを通じて「体の正しい使い方を学んでほしい」と西川は思っている。
「ゴルフの動きが複雑だから難しく感じるかもしれませんが、他の事に例えるなら重たい物を高く投げる時を想像してください。
自分の足腰をその場で止めて上半身の力だけで投げた時と、しっかりと重みを利用して下半身も自由に使いながらフワッと投げた時、どちらが高く上がるかという話と同じなんです。当然全身や重力を合わせて使ったほうが高く上がります。
ゴルフクラブの扱い方も自分の肉体だけではなく、いかに自然の勢いを上手く味方につけられるがとても大切なんです」(西川・以下同)

「自分の肉体だけでなく、自然の勢いを利用してスウィングをすることが大切」と話す
自分の肉体だけで発揮できる力というのはたかが知れている。また特定の部位だけでやろうとすれば、再現性が低くなりミスに繋がってしまう。西川が話す“体と自然の勢い”を調和させたスウィングをすることで、余計な力が働かずにオートマチックにクラブが動いてくれる。だから飛距離と安定感に繋がるというわけだ。
「アマチュアの方のミスで多いのが、上半身と下半身が同時に回ってしまうことです。左肩の我慢ができないことで起こってしまい、クラブがアウトサイドから入りスライスが出てしまいます。そしてスライスを嫌がると手先でクラブを操作して今度は引っかけが出るんです。
根本的な体の使い方を矯正することで、狙ったところに真っ直ぐ飛ばせるようになるので、根気よくこのドリルをやってみてほしいです」
まずは素振りだけでドリルを行ってみよう。そしてリズムに慣れてきたら実際にボールを打つ。具体的な目安として「その日の練習の中でも数十球はやり込んでほしい」と西川は言う。
テクノロジーの発達で細かなデータやトップ選手の共通点が明らかになる時代だ。それでも変わらない技術が体重移動と捻転差である。今も昔も共通しているゴルフスウィングのイロハだからこそ、西川はレッスンで説明をしているわけだ。是非ともこのドリルを通して、揺るがない基本のスウィングを習得してほしい。
・取材協力/バーディ赤坂24