虎博覧会 セ上位7人中6人!阪神 驚異の四球増の秘密を小谷野打撃チーフコーチ明かした

5月22日の巨人戦で四球を選ぶ阪神・大山悠輔。今季52個はセ・リーグトップだ=甲子園球場(撮影・中井誠)
阪神の話題の事象をさまざまな角度から深く掘り下げる「虎博覧会」(不定期掲載)。今回はセ・リーグ最多の357個を数える「四球」に焦点を当てる。52四球でトップの大山悠輔内野手(30)をはじめ、上位7人中6人が阪神勢が占める異例の状況だ。小谷野栄一打撃チーフコーチ(44)がその要因を分析した。(取材構成・萩原翔)

7月10日の広島戦で四球を選ぶ阪神・近本光司。今季49個はセ・リーグ2位だ=マツダスタジアム(撮影・中井誠)
★日本一23年は岡田監督が四球を査定に入れセ最多494個
首位を快走する藤川虎。強力な投手陣に加え、セ・リーグ最多の391得点を挙げている。チーム打率・245もトップながら、巨人(・244)、広島(・243)と差はなく、70本塁打は巨人(79)、DeNA(74)に次ぐ3位だ。
その中で際立つのが、断トツ357個の四球数だ。今季から就任した小谷野打撃チーフコーチはその要因をこう語る。
「ボールの見極めというよりかは、積極的にみんなが振っていくことで、相手が脅威に感じているから。それで相手がいやがったり、怖がったりでボール要求が増えて、結果的にフォアボールが増えていると思いますね。理想的ですね」
個人成績では大山が52個でリーグ最多。さらに2位・近本(49)、3位・佐藤輝(48)、4位・森下(45)、5位・坂本(42)、6位・中野(41)と、上位7人中6人を阪神勢が占めている。驚異的な状況は、酸いも甘いも味わったこの2年をへての進化の証しでもある。
2023年から指揮を執った岡田彰布前監督(現オーナー付顧問)は「四球もヒットと同じくらい評価する」とし、四球の査定ポイントを上げるように球団フロントに直談判。ボールを見極める意識が選手にも浸透し、494個と前年の358個から激増した。レギュラー陣は軒並みキャリアハイの成績を残した。だが、昨季は他球団にそのみる意識を逆手に取られ、カウント不利となる場面が多くなり、指揮官が苦言を呈することも…。四球数441個はリーグ1位ながら、得点力は下がった。

6月6日のオリックス戦で四球を選ぶ阪神・佐藤輝明。今季48個はリーグ3位だ=甲子園球場(撮影・中井誠)
V奪回を目指す今季、打撃陣の共通認識は「積極性」だ。もちろん、仕掛けるぶんだけ、空振りする機会も増える。だが、その姿勢が他球団の投手陣への圧力になり、四球を絡めた効率的な攻撃につながっている。
「今のメンバーはそれぞれ全然(打撃)スタイルが違う。それぞれが勇気を持ってチャレンジしている結果が、四球の数に表れている。選手それぞれの取り組みが、個々にいいものが発揮されている」
26日からは夏の長期ロードを締めくくるDeNA3連戦(横浜)。相手先発はケイ、東、ジャクソンと強力な布陣だが、進化を遂げた猛虎打線が打ち砕く。

5月27日のDeNA戦でサヨナラの押し出し四球を選んだ阪神・森下翔太。今季45個はリーグ4位だ=倉敷マスカットスタジアム(撮影・松永渉平)