「ようやるんですわ」 メジャー覇者・山下美夢有を生んだ深夜0時過ぎの作戦会議

メジャー優勝を決めた!
◇女子メジャー最終戦◇AIG女子オープン(全英女子) 最終日(3日)◇ロイヤルポースコール(ウェールズ)◇6580yd(パー72)
翌日に最終決戦を控えた深夜0時30分。山下美夢有は宿舎で黙々と、父・勝臣さんにチェックしてもらいながら素振りに明け暮れた。「部屋で、あーでもない、こーでもないって話をし始めて。(夜に)部屋で、ようやるんです」と勝臣さんは笑った。
2日目に「65」をたたきだした翌日は「74」と伸ばせず、後続は1打差まで迫っていた。ショットに納得できず、ホールアウト後は練習場に直行。1時間ほど打ち込んだが、「あまり良い感じで終われなかった」と午後8時30分過ぎにコースから撤収。24歳の誕生日祝いの夕食を取り、宿舎に戻って落ち着いたころに勝臣さんと深夜の親子会議に。就寝を挟み、最終日の朝も会議を続けた。ショット練習場で10球ほど打った時に、ピンとくるものがあったと言う。以前撮っていたスイング動画と見比べると、「頭の軸が動いていた」(勝臣さん)。調整を進め、1番ティに立った時には準備はすっかり整っていた。

最終ホールが終わるまで緊張していた
強風の中でも、前半はほとんどフェアウェイを外すことなくボギーなしの3バーディ「33」。4番はフェアウェイから5mにつけて、8番(パー3)はピンに絡めるショットでそれぞれバーディを奪った。フェアウェイから2オンに成功した9番(パー5)でも伸ばして通算12アンダー。2位に3打差をつけてバックナインに入った。

大ギャラリーが待つグリーンへ
淡々とプレーを続けてきたが、終盤に向けて徐々に高まる緊張感は自覚していた。「後半に入って、ちょっと緊張したけど」とショットの精度が陰りだしたが、ショートゲームで粘って崩れなかった。この日初めてボギーのピンチが来た13番。ティショットをバンカーに入れて第2打がグリーンに届かず、3打目のアプローチも寄らずに長いパーパットが残ったが、1パットでねじ込み踏みとどまった。14番もファーストパットが3mほどオーバーしたが、返しを決めてパーを拾った。

やっと表情が緩んだ瞬間
この日唯一のボギーをたたいた17番は、3日目にラフからの第2打を右のバンカーに入れてピンチが来たホール。この日もティショットを左のラフに入れ、2打目もラフに外して3オン2パットのボギー。「右のバンカーには入れたくなかったし、もうちょっと良いショットを打ちたかった」と悔やんだが、18番(パー5)は3打目でグリーンに乗せてセーフティにパーでフィニッシュ。「あのパットを入れて、優勝したという気持ちになった」と、通算11アンダーで逃げ切りようやく表情を緩ませた。

リンクスで勝てた事は自信になる
「今年に入って、状態として良くなかったと思っていた」と話す中で、より高いショットの精度が求められるリンクスコースで優勝。「父と色々考えながらやってきたことが、メジャー優勝につながった。コツコツ地道に父と取り組んできたことが成果にもつながってくれた」と喜んだ。
目標の一つだったメジャー制覇を果たし、翌日には国内女子ツアー「北海道meijiカップ」に出場するため日本に向かう。「まだ試合も残っていますし、優勝を目指してやりたい」と、さらに飛躍を目指す。(ウェールズ・ポースコール/谷口愛純)