止まらぬ躍進、最速のマクラーレンF1……外れないアップデートを支えるのは“基礎力”

 過去2年間のマクラーレンF1は大きな成功を収めてきた。マクラーレンは継続的な改善を推し進めてきたが、その躍進を支えている要素はチームがマシンの「基礎」を正しく理解しているからだと説明している。

 マクラーレンは2023年のオーストリアGPで大規模なアップデートを投入すると、それまでポイント圏内をなんとか争う状態だったところから、一気に表彰台の常連へと躍進した。

 翌年の2024年マシンMCL38は初期から上位を争うことができたが、最終的に久しぶりのコンストラクターズタイトル獲得の大きなきっかけとなったのは、マイアミGPで投入されたフロアの改良だった。

 そしてその勢いを維持した結果、2025年型MCL39は今シーズンを通して最速マシンとなり、ライバルはマクラーレンに対してコンスタントに対抗することが全くできていない状況にある。

 マクラーレンの今の強みは、開発中のシミュレーションと実際の走行データの相関プロセスにあるとされている。

 この”相関”とは、シミュレーションツールで得られたデータのパターンが、サーキット走行時におおむね再現される度合いを意味している。数値そのものがわずかにズレていても、そのズレが一貫していればシミュレーションの補正が可能だ。しかしそのズレが車両特性のあらゆる面で大きく変動するようだと問題が発生する。

 この点でマクラーレンはグリッド随一と評されており、サーキットに持ち込んだあらゆるアップデートが想定通りのパフォーマンスを発揮。既存パッケージと噛み合い、マシンの性能を高めているのだ。

 チーム代表を務めるアンドレア・ステラは、その理由をアップデート案の背後にある“基礎”を正しく押さえているからなのだと説明する。

「我々がこれまで確立できた流れ……メカニカル面もそうだが特に空力面、つまり開発が成功しているということだがそれは多くの要素の賜物なんだ」

 ステラ代表はそう語る。

Andrea Stella, Team Principal, McLaren F1 Team

「F1では、成功のための魔法のような解決策はほとんど存在しない。本当に重要なのは“基礎”に取り組むことだ」

「基礎というのは、アイデアを生んで、フロア形状やフロントウイング形状を発案する能力だけではない。その開発手法自体を理解することも重要なんだ。そしてその方法論が革新性を高めるというだけでなく、風洞やCFD(コンピュータ・シミュレーション)で得られた開発成果が実際のサーキットでも機能すると確信できるかどうかを理解することも含まれている」

「これはチームとしてノウハウを蓄積する一環だ。『最高の相関性を得るためのノウハウを蓄積しよう』というのは単純な言葉だが、実際にはどのF1チームにとっても、最も複雑な戦場のひとつでもあるんだ」

「我々はこの点に多くを投資してきた。手法を語るとき、そこには必ず人が関与する。有能なリーダー陣と才能あるチームに恵まれ、とても幸運だった」

 また、マクラーレンはアップデート部品を性急に投入せず、まずフリー走行で試し、データを本拠地で精査してから以降のセッションで使用するかどうか判断する傾向がある。例としてカナダGPで初登録された新フロントウイングは金曜フリー走行で試されたものの、決勝では使用せず、データ分析を経てオーストリアGPで初めて実戦投入された。

 ステラ代表は2025年のチームのパフォーマンスを振り返り、その競争力の高さには驚かされたと認めつつ、昨年型マシンを進化させるにあたってアグレッシブな姿勢を取ったことを強調した。

Lando Norris, McLaren

 マクラーレンはトップチームと互角以上に戦うことをシーズンの目標としていたが、ステラ代表はプレシーズン段階での他チームとの差の予測が十分ではなかったため、開発を継続したという。

「この競争力の高さには驚かされた。昨年、2024年型マシンをどれだけ改良するかを議論した際、我々は非常に野心的でありたいと考えていた」

「昨年は『レースウィークに入ってみないと誰が勝つかわからない』という状況だったが、それを打破するために、通常の開発以上のことをする必要があると考えたんだ」

「では、どうやってそれを実現するのか? 我々は非常にアグレッシブなアプローチを採用した。MCL39は非常に革新的なマシンだ。エンジニアリング的には、実際に実現できるのか不安になるようなソリューションもあった」

「しかしラップタイムやシミュレーションの数字を見たとき、それでも足りないと感じていた。実際、シーズン序盤は十分ではなかった。だがシーズン中にマシンはアップグレードされてきた」

「それが今シーズンに起きていることで、マシンが実際にアップデートされているんだ」

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