「地球上で最悪の侵略的植物」を大学生らが駆除 千葉・印旛沼周辺、県はアプリで対策も

水路を埋め尽くした特定外来生物「ナガエツルノゲイトウ」を駆除する参加者=19日、千葉県佐倉市の印旛沼周辺(鴨川一也撮影)

千葉県佐倉市の印旛沼周辺の水路で19日、特定外来生物に指定されている水草「ナガエツルノゲイトウ」を駆除する「クリーン大作戦」が始まり、ボランティアの大学生や地元企業・関係機関の職員ら約100人が除去作業に取り組んだ。ナガエツルノゲイトウは「地球上で最悪の侵略的植物」と呼ばれるほど繁殖力や再生力が高く、河川や用水路に生息地を広げて生態系や農業に影響を及ぼす。日本では特定外来生物として栽培や移動が規制され、生息が確認された自治体は対策を講じているものの、抜本的な解決方法はなく頭を抱えているのが実情だ。

終わりが見えないほど水路を埋め尽くすナガエツルノゲイトウ

昨年も除去したが…ほぼ元通りに

参加者らはこの日、外来種の水草に埋め尽くされた水路に腰まで浸かり、手にした鎌やのこぎりで巨大な群落を小さなかたまりに切っていった。それを岸まで移動させ、声を掛け合いながら斜面の上に引っ張り上げた。

「クリーン大作戦」は地元NPOと学生団体などが平成20年から実施。3回目の参加という日本大学3年の土谷諭史さん(21)は「水を吸ったナガエツルノゲイトウは重く、水路から出すのが大変。とにかく人手がいる重労働です」と話した。

昨年も同じ場所で駆除作業を行ったが、今年訪れたらほぼ元通りに水路を埋め尽くしていたといい、地元の男性は「いたちごっこだ」と肩を落とす。除去活動は21日まで続く。

「効率いい除去方法の開発を」と切望

ナガエツルノゲイトウは南米原産の水生植物。繁殖力が非常に強く、もぎれた茎などから再生、拡散する。陸地でも生息可能。群落をつくると排水施設の障害を誘発するほか、本来そこにある生態系への悪影響も懸念される。

ナガエツルノゲイトウの茎や根を切る大学生たち

発見後の駆除も一筋縄ではいかない。草刈り機で刈り取ると、断片化した茎などが飛び散ってしまい、生息場所がかえって拡大する恐れがある。刈り取った場所での再生も早い。農地では適切な農薬を使用できるが、水路などでは除草剤の散布も制限される。

今回、作業が行われた水路を管理する印旛沼土地改良区の長谷川邦彦理事長(79)は、「この外来種はひどい。繁殖した田んぼでコンバインを使えば壊れてしまうだろう」と農業への被害を懸念する。自身もコメ農家の長谷川さんは「環境にも優しく効率のいい除去方法を開発してもらえれば」と切望する。

千葉県によると、県内では平成2年に初めて印旛沼で確認されたあと、北部を中心に発見が相次いでいる。

参加型アプリで調査 「判別難しい」

県生物多様性センターは今年7月から、分布状況を把握するために参加型アプリを活用した調査を実施。見つけた生物を写真と位置情報とともに投稿するアプリ「バイオーム」で、ナガエツルノゲイトウを含む7種の外来水生植物を発見し投稿してもらうミッション「みんなでつくろう!ちば外来水生植物マップ」を展開している。

新規繁殖地や再繁茂の早期発見が拡大防止につながるとして、県民やアプリ利用者に協力を呼びかけている。ただ県の担当者によると、「植物好きな人はすぐに分かるかもしれないが、素人には判別が難しい」という面もある。アプリには20日時点でナガエツルノゲイトウに関する投稿が71件集まっている。

小さくしたナガエツルノゲイトウのかたまりを斜面から上げる大学生たち。水を吸ってかなり重いという

流入源がある限り、つながっている水路を通じて生息域が拡大してしまうナガエツルノゲイトウ。県の担当者は「河川や水路などの各管理者が連携して対処することが必要。部署や関係者と連携して駆除を進めていく」と話している。(文・写真 鴨川一也)