蟬川泰果が涙の〝日本タイトル3冠〟「夢なのかなと」 史上最年少の24歳148日で達成/国内男子ゴルフ

プレーオフの末、優勝して妻・葵さん(左)と写真撮影に臨む蟬川泰果=茨城・宍戸ヒルズCC西コース(撮影・福島範和)

BMW日本ツアー選手権森ビル杯最終日(8日、茨城・宍戸ヒルズCC西C=7430ヤード、パー71)首位に1打差の3位から出た蟬川泰果(たいが、24)=アース製薬=が1イーグル、4バーディー、1ボギーの66と伸ばし、通算10アンダーで並んだ堀川未来夢(みくむ、32)=Wave Energy=とのプレーオフ(PO)を1ホール目で制し、大会初優勝。2022年「日本オープン」、23年「日本シリーズJT杯」の優勝に続き、尾崎将司の27歳248日を抜いて史上最年少の24歳148日で〝日本タイトル3冠〟を達成した。

プレーオフの末、優勝を決めて涙する蟬川泰果(撮影・福島範和)

けがを乗り越えた蟬川が、1年半ぶりの復活Vだ。PO1ホール目。「緊張感の極限だった」と、手が震えた2メートルのバーディーパットを沈め、うれし涙を流した。

「本当に夢なのかなと思うくらい。(故障から)不安の中で復帰して4戦目で優勝できて幸せです」

2番(パー5)で残り36ヤードのラフからチップインイーグル。一時は堀川に2打差をつけられたが、16番(パー3)は第1打を1メートルに、1打差の18番(パー4)は第2打を6メートルにつけて、上がり3ホールで2バーディー。POに持ち込み、「一番難しいコース」という宍戸ヒルズCCを攻略した。

優勝して妻・葵さんと抱き合う蟬川泰果(撮影・福島範和)

2月上旬にコロンビアで開催された米男子下部ツアーを背中痛で途中棄権。帰国後、最初は原因が分からず「ゴルフ人生はどうなるのだろう」と落ち込んだ。寝られない日々が続き、神社に厄払いにも行った。3月、6件目の病院で受けた精密検査で背中側の左肋骨3本の疲労骨折が判明した。電気治療の他、食生活やトレーニング方法を見直し、国内ツアーに戻ってきた。

東北福祉大4年時の2022年に「日本オープン」、23年に「日本シリーズJT杯」を制しており、これで〝日本タイトル3冠〟を達成。男子ツアー通算94勝の尾崎将司の27歳248日を大幅に塗り替える最年少記録に「めちゃくちゃうれしい」と喜んだ。

昨年11月にタレントの久保葵(27)と結婚した。愛妻は全試合に駆けつけ、「大丈夫」「いける」とポジティブな言葉をかけてくれる。

「ここまで支えてもらった。妻の前で優勝することができてうれしい」。黄色の〝ペアルック〟で臨んだ最終日。2人で優勝トロフィーをつかんだ。(石井文敏)

■蟬川 泰果(せみかわ・たいが) 2001(平成13)年1月11日生まれ、24歳。兵庫・加東市出身。1歳でゴルフを始める。兵庫教育大付中-大阪・興国高を経て東北福祉大卒。大学4年時の22年10月に「日本オープン」で第1回大会の赤星六郎以来95年ぶりのアマチュアV。その2週後にプロ転向。ツアー5勝。「泰果」の由来はタイガー・ウッズ。昨季の賞金ランキングは19位(約4620万円)。得意クラブはドライバー。175センチ、77キロ。

★データBOX

蟬川の〝日本タイトル3冠〟は尾崎将司(27歳248日)、丸山茂樹(28歳86日)、中嶋常幸(28歳207日)、片山晋呉(32歳258日)らに続いて史上14人目。直近では昨年のS・ノリス(42歳201日)。24歳148日での達成は史上最年少記録。

★愛妻は涙で祝福

結婚後、初の優勝をグリーンサイドで見届けた葵さんは、「よく頑張ったね」と涙を流しながら蟬川に声をかけた。関西ローカルの情報番組でリポーターやスポーツキャスターを務めていた新妻は、今季全試合に同行し、宿泊施設からコースまでの運転や、着用するウエアの選定など、身の回りでサポートしている。「こんなに真っすぐな人はいない。繊細だけどポジティブ、切り替えるのがうまい」と夫の性格を明かし、「勝つまで我慢させていたので、好きなだけ、買い物をさせてあげようと思います」とおどけた。