カンボジア人ら「金属ケーブル盗難」多発 9月1日“新法”施行で「ボルトクリッパー」など大型切断工具の持ち歩きに制限…“抑止力”となるか

ボルトクリッパーやケーブルカッターを持ち運ぶ際には、正当な理由を示せるよう注意する必要がある(haku / PIXTA)

9月1日から「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」(通称:金属盗対策法)が施行され、特定の工具を正当な理由なく隠して持ち歩くことが禁止される。

具体的に対象となるのは、ケーブルカッターやボルトクリッパーといった大型の切断工具。違反すると100万円以下の罰金や1年以下の拘禁刑が科される恐れもあるため、注意が必要だ。

「銅」の価格高騰などにより「金属盗」が急増

警察庁の発表によると、太陽光発電施設からの金属ケーブル窃盗をはじめとする「金属盗」は、2024年の認知件数が2020年の約4倍になるなど大幅に増加している。また同年の被害額は約140億円で、窃盗全体の約2割を占めた。長期間にわたる発電停止などの経済的損失も発生しており、私たちの生活にも無関係といえない問題だ。

急増の一因は「銅」の価格高騰だ。2023年における金属盗の被害状況(認知件数)を見ると、品目別では金属ケーブルが約55%、材質別では銅が約52%を占めている。

警察庁作成「金属盗対策に関する検討会(第1回)」資料より

8月20日にも、発電施設から銅線ケーブルを盗んだとしてカンボジア国籍の男女8名が新潟県警に逮捕されている。また昨年には養鶏会社で敷地から銅線が盗まれ飼育されていた鶏十数万羽が死んだ事件も起きたが、この事件でもカンボジア国籍の男性ら3名が逮捕された。

警察庁が発表している「金属盗対策に関する検討会」の資料を見ても、2023年に金属ケーブル窃盗で検挙された61人中36人、および2024年6月末までに検挙された60人中28人がカンボジア人と最多だった(日本人の検挙者は2023年は24人、2024年は21人)。

警察庁はこうした状況について、同じ国籍のネットワークを通じ、犯行手口や売却先などが共有され、犯罪グループが形成されているとみている。

また、被害は東京を除く関東に集中しているという。

警察庁作成「金属盗対策に関する検討会(第1回)」資料より

この状況をふまえ、今年6月に金属盗対策法が成立。同法には「特定金属くず買受業に係る措置(買い取り業者への規制)」「金属切断工具の隠匿携帯の禁止(犯行用具の規制)」「盗難の防止に関する情報の周知」が含まれるが、このうち後者2つが9月1日から施行される。

隠して持ち歩く際には業務などの正当な理由が必要に

「犯行用具の規制」の具体的な条文は「何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、指定金属切断工具を隠して携帯してはならない」。逆に言えば、電気工事などの業務のため携帯している場合には罰則の対象にならない。

「隠して携帯する」とは、「自動車のフロアマットの下に置く」「布で包む」など、他人の目に触れないような状態で持ち歩くこと。罰則は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金だ。

規制の対象となる工具は「ケーブルカッター」と「ボルトクリッパー」。ケーブルカッターはニッパーに似た工具だが、より大きく、電線をつぶさず切断できるよう刃の形状が丸みを帯びているのが特徴である。ボルトクリッパーは硬い金属を切断するために設計されており、チェーンや鉄線、ボルトや南京錠なども切り落とすことができる。

具体的には、ケーブルカッターについては長さ45センチ以上のもの、電気装置または油圧装置を備えているもの、ラチェット機構(回転式の刃体を特定の方向にのみ回転させる機構)を備えているものが規制の対象に。

ボルトクリッパーについては長さ75センチ以上のものと、電気装置または油圧装置を備えているものが規制される。

いずれも一般市民が通常持ち歩くような工具ではない。そのため、金属盗対策法の施行によって私たちの生活に生じる直接的な影響は少ないだろう。一方、業務のためこれらの工具を使用する人々には、法律の趣旨を理解し、正当な理由を示せる状態で携帯するよう、注意が求められる。