強い「愛」「こだわり」で日本一 フライドポテト、静岡の新名物に

ビーフリッツオーナーの小濱雄一郎さん

ステーキやハンバーグといった肉料理の付け合わせでは定番のフライドポテト。近年は専門店なども現れ、地域の名物となるケースも増えてきた。激戦地は材料であるジャガイモの名産地、北海道だが、近年は静岡県からもコンテストで日本一に選ばれる専門店が登場するなど、全国的に注目されている。〝グルメ大国〟静岡の新たな〝名物〟フライドポテトの名店を訪ねた。

ビーフリッツの「グロスフリッツ」

JR静岡駅の北側に広がる中心市街地、下町情緒とリノベーションで誕生した新しい商店や飲食店が立ち並ぶエリア、七間町の一角に「B-FRITES(ビーフリッツ)」というフライドポテトの専門店がある。

フライドポテトは「フレンチフライ」とも呼ばれるが、発祥地はベルギーとされ、「フリッツ」と呼ばれている。この本来の呼び名を店名に冠する同店は令和2年、「(フリッツへの)こだわりを思いっきりぶつけてみよう」と小濱雄一郎さん(42)が出店した。

材料となるジャガイモも国内外から取り寄せ、常時6種類程度の商品を用意する。看板商品は、冬に積もった雪を天然の冷蔵庫として利用する雪室で寝かした北海道産のジャガイモを使用。カットも工夫し、根菜を下ゆでするように常温から二度揚げして仕込んだものを、提供する段階でさらに二度揚げするというこだわりようだ。

素材と手間が生む違い

「ジャガイモは寝かすことででんぷん質が高まります。熱を加えることで糖化が進むため、甘みが増します」(小濱さん)という。そこで、おすすめの「グロスフリッツ」を注文した。まずはシンプルにうま味のあるフランスの岩塩だけでいただく。確かに甘みがある。とともにしっかりとしたジャガイモの風味が感じられる。おすすめのドライトマトを使ったディップソースとの相性も抜群。ほのかな酸味がポテトの甘みを引き立てる。

シンプルな料理だけに、素材や手間が大きな違いを生むことがわかる逸品だ。

店の前は長蛇の列

小濱さんは静岡市出身で、もともとは和食の料理人だったという。10年ほど前に、市内で一度フライドポテトの専門店を出店したが、1年たたずに閉め、以来キッチンカーによる静岡市立日本平動物園(静岡市駿河区)での営業を続けてきた。

ただ、「キッチンカーは実店舗のようにはいきません。アイデアもありましたが、こだわるにも制約があった」という。そんな中で、顧客からは実店舗を求める声もあった。

「利益うんぬんではなくやってみたい」と思っていたときに声がかかり、この店を出店した。開店直後からの厳しいコロナ禍を乗り切ると、令和5年には日本フライドポテト協会が主催するコンテスト「Japan French Fries Championship 2023」で優勝。〝ポテト愛〟とこだわりが日本一に選ばれた格好だ。これを機に、メディアにも取り上げられ、店の前には長蛇の列ができるようになった。

現在はキッチンカー2台とこの実店舗という体制。週末はキッチンカーで日本平動物園のほか全国のイベント会場にも出向く。

静岡県内には、ビーフリッツ以外にもフライドポテトの人気店が多い、静岡おでんなどと並ぶ新たな〝ソウルフード〟との声もある。浜松市の特産品である三方原馬鈴薯を使用するものなどもある。静岡の新たな名物、フライドポテトを食べ歩くのもおもしろそうだ。(青山博美、写真も)

B-FRITES(ビーフリッツ) 住所は静岡市葵区七間町16-7 OMACHIビル1階。JR静岡駅北口から徒歩15分。営業時間は午前11~午後7時(ラストオーダーは午後6時45分)。定休日は月曜日(不定休あり)。料理は「グロスフリッツ」が550円などで、サラダなどをセットにしたプレートセットやビールなどのドリンクも用意する。【問】054・255・6015