熱中症予防にも人気の「梅干し」 立ち食いスタンドやシャーベット風…広がる楽しみ方

すしのようにカウンターで提供される梅干し。3種類が選べる「三粒とほうじ茶」(990円)をはじめ、メニューにお酒、お茶漬けも=東京都墨田区の「立ち喰い梅干し屋」(酒巻俊介撮影)

梅はその日の難逃れ-。昔から病気や食中毒を防ぐために食べるのがよいとされてきた梅。炎暑が続く今夏は、熱中症対策で梅干しを活用している人も少なくない。最近は、ご飯のお供にとどまらない楽しみ方が広がっている。

国内外の観光客でにぎわう東京スカイツリー。隣接する商業施設「東京ソラマチ」(東京都墨田区)に、行列ができる梅干し専門店がある。

その名も「立ち喰い梅干し屋」。カウンターには、ガラス容器に入った16種類の梅干しが整然と並ぶ。目移りしている来店客に、「向かって右端にある『すっぱい梅』が一番酸っぱくて、左へ行くほど甘く、食べやすくなります。どんなタイプがお好みですか?」

作務衣(さむえ)姿の椎名健店長(30)が声を掛ける。真ん中に位置する「鶯(うぐいす)」が、酸っぱさと甘さのちょうど真ん中の塩梅(あんばい)だとか。これを軸に、好みを徐々に絞り込んでいく。

扱う梅干しは、実際に全国の産地へ足を運び、味を確かめた300種類以上の中からのえりすぐり。「だから、お勧めを聞かれても『全部』なのです。お客さまの好みを聞きながら、お気に入りの一粒を見つけるための案内が、われわれの役目です」(椎名店長)

オイル漬けに薫製…変わり種も

昔ながらの製法で漬けた酸味、塩味の強いものから、対照的に甘味、うまみを感じるものまで幅広い。さらにはオリーブオイル漬けや、燻製(くんせい)にした変わり種もあり、その多彩なバリエーションに舌を巻く。

特に多いのは10代後半から20代の女性客。今夏は街歩きの途中に、塩分補給のために訪れる人も目立つという。「若者の梅干し離れがいわれますが、離れているどころか、そもそも出合ってすらいないのでは? 梅干しと気軽に出合える場になるのが願いです」と椎名店長は力を込める。

店内にある中では、やや甘めの「焼き梅」を食べてみた。網状の焼き目がついて、凝縮したような味わい。舌がまとった濃厚な甘味を楽しみつつ、キリッと冷えたほうじ茶を一口すする。

口をついて出そうだった一言を、椎名店長が代弁した。「多くのお客さまが言います。『日本人に生まれてよかった』と」

凍らせて好みのやわらかさで

今夏は凍らせて食べるスタイルの梅干しも、売れ行きを伸ばしている。梅の一大産地である和歌山県みなべ町に本社を置く、昭和25年創業の梅干しメーカー、トノハタの「紀州アイス梅」(9粒、参考価格3240円)は、特にお中元などの贈答品として人気が高い。

贈り物や家庭用に瓶詰めでも販売されている(酒巻俊介撮影)

大粒で果肉がやわらかく、最高品質を表すA級の紀州産南高梅を使用。一般的な梅干しは塩分7~8%が主流の中、2.5%にまで抑え、仕上げてあるのが特徴だ。

まず冷凍庫で一晩凍らせて、食べる前に室温に置き、好みのやわらかさで食べる。冷たく、シャリシャリとした食感の後に甘酸っぱさが広がり、後味はさっぱり。まるで果物のシャーベットのような食べ心地だ。

「低塩に抑えて独自の技術で南高梅ならではのフルーティーな風味を際立たせました。デザート感覚で楽しむかたが多いですね」と広報担当者。予想を上回る人気に「伝統食も、少し視点を変えればヒット商品が生まれる。今後も新発想の梅干しづくりに力を入れたい」と声を弾ませた。(榊聡美)

果物のシャーベットのような食べ心地の「紀州アイス梅」(トノハタ提供)