道頓堀ビル火災、フロア崩落し消防隊員2人取り残され死亡か…火災報知機など6項目で法令違反
18日午前9時50分頃、大阪市中央区宗右衛門町の雑居ビルから出火し、5階建てと7階建てのビル2棟計100平方メートルを焼いた。大阪府警や市消防局によると、消火活動中の男性消防隊員2人が死亡。別の男性消防隊員4人と、女性1人が病院に搬送されたが、命に別条はなかった。府警は現場検証して火元や原因を調べ、市は近く調査委員会を設けて検証を進める。

消防隊員2人が死亡したビル火災の現場(18日午前10時48分、大阪市中央区で)=近藤誠撮影
市消防局や府警によると、亡くなったのは、いずれも浪速消防署に勤務する消防司令の森貴志さん(55)(大阪府羽曳野市)と消防士の長友光成さん(22)(同府吹田市)。2人はそれぞれ小隊長、隊員として出動し、7階建てビルの6階で消火活動中、建物内に取り残された。6階で見つかり、他の隊員に救出されたが、搬送先の病院で死亡が確認されたという。

火災で煙を上げるビル(18日午前10時41分、大阪市中央区で、読売ヘリから)=前田尚紀撮影
この日、報道陣の取材に応じた大阪市の横山英幸市長によると、森さんら2人は消火活動中にビルの5階や6階部分で崩落があり、退避する途中だった可能性があるという。横山市長は「崩落の結果、出口方面に退避がかなわず別のフロアに移動し、延焼によって呼吸の問題で命を落としたのではないかと考えられる」と語った。

また、横山市長は「痛恨の極みで、心からご 冥福(めいふく) をお祈りする」と述べ、火災の原因や2人が死亡した経緯を検証した上で公表し、再発防止に努める考えを明らかにした。
火災では、消防車63台などが消火活動に当たり、約9時間後に消し止められた。搬送された別の消防隊員4人は20~30歳代で、うち1人も建物内に取り残されたが、自力で脱出した。女性は20歳代という。
現場は、建物が密集する大阪・ミナミの道頓堀川沿いの繁華街。観光客や通行人らで一時騒然となった。近くの飲食店の店員(21)は「煙のにおいがしておかしいと思っていたら、警察官が来て『早く避難して』と叫んでいた。最初は驚いて頭が真っ白になったが、従業員とお客さんが避難できてよかった」と話した。
現場のビル2棟は内部で一部がつながっており、飲食店などが入居。市消防局によると、2023年6月の立ち入り検査で、年2回の避難訓練の実施や火災報知機の設置状況など6項目で法令違反があったとして、是正を求める行政指導を受けたという。