龍伝説の起源か 体長7m、迫力の全身化石 謎に包まれた「マチカネワニ」が天然記念物に

大阪大総合学術博物館で展示されているマチカネワニの化石=大阪府豊中市
60年以上前、日本で初めて発見されたワニ類の全身骨格化石「マチカネワニ化石」について、国の文化審議会が今年6月、天然記念物に指定するよう答申した。秋ごろに正式に指定される見通し。大阪府豊中市待兼山町の大阪大豊中キャンパスの建設現場で見つかったことから「マチカネワニ」と命名され、地元の人にも親しまれてきた。大学関係者は「世界の人に注目してもらえる機会になれば」と喜ぶ。

マチカネワニ化石の発掘現場(大阪大総合学術博物館提供)
巨大…迫力の化石
1メートルを超える巨大な頭骨に、長い体-。豊中キャンパス内にある大阪大総合学術博物館に展示されているマチカネワニの化石は、日本で生息していた様子が想像もつかないほどの大きさで、迫力を醸し出している。
同博物館招聘(しょうへい)准教授の伊藤謙さんによると、化石が見つかったのは昭和39年5月。同キャンパス建設現場で化石好きの青年2人が一部を発見し、大阪市立自然史博物館に持ち込んだ。
当初は牛の骨だと思われていたが、発掘調査で長い頭骨が発見され、ワニと判明。約45万年前に生息していたとみられるが、化石の保存状態はよく、ほぼ完全な形で見つかる大発見だった。
詳しい生息実態は不明
見つかった化石や周辺の調査を基に、マチカネワニの特徴はいくつか浮かび上がっている。

マチカネワニの復元図(大阪大総合学術博物館提供)
ワニは体長7メートル前後、体重約1・3トンと推定。主に熱帯や亜熱帯地域で生息する現在のワニと違い、温帯の気候で生息し、浅瀬にいたと考えられる。
歯などは他のワニとは異なる特徴がみられる。骨から折れた跡やかまれたような穴などけがをした痕跡も見つかった。近くに他の個体がおり、自然繁殖していた可能性がある。近年、マチカネワニの近縁種が「龍(ドラゴン)」のモデルになったとの説も指摘されている。
ただ、詳しい生態は不明で、現在も研究が続く。阪大の化石は、ワニ研究の上で貴重な標本で、伊藤さんは「同じ時期に生息していたワニ類を研究するなら、マチカネワニは絶対に外せない」と強調する。

大阪大公式マスコットキャラクター「ワニ博士」(博物館の頃)
注目度アップに期待
阪大では公式マスコットキャラクターの「ワニ博士」、豊中市では市制50周年を機に誕生したキャラクター「マチカネくん」としても親しまれてきたマチカネワニ。豊中市によると、天然記念物の指定は大阪府内で69年ぶり、同市内では初めてといい、注目度の高まりを期待する。
伊藤さんは「マチカネワニはいまだに分からない謎をたくさん持っている。今後多くの方に研究してもらうことで、謎が解明できれば」と話した。(前原彩希)