ハーブが余ったらオイルやビネガーに漬け込んで。6つのレシピとともに活用法も紹介。
撮影・馬場わかな 調理・丸山久美 スタイリング・佐々木カナコ 文・熊坂麻美
もしハーブが余ったら、オリーブオイルやお酢に漬け込んでみませんか。いつもの料理が風味豊かに変身します。
ハーブを漬けたオイルとビネガーを常備しているという丸山久美さん。
「オイルもビネガーもハーブが加わるだけで、料理をぐんと引き立てる調味料になります。ハーブオイルは食材に爽やかさや深みのある香りをプラスし、ハーブビネガーは魚や肉料理のクセを和らげる役目も果たします」
ハーブオイルやビネガーは、丸山さんが料理を学んだスペインの修道院でも長年受け継がれてきたそう。
ハーブが余ったらオイルやビネガーに漬け込んで。6つのレシピとともに活用法も紹介。
「保存の意味合いが大きいですね。余らせやすく、風味が飛びやすいハーブを長く味わえるとてもいい方法です」
作り方は至って簡単で、オイルと酢にハーブを入れて漬け込むだけ。漬ける時間が長いほど、香りの成分が溶けて風味がつく。2~3週間ほど漬けたら古いハーブを取り出し、新しいハーブを入れてさらに漬け込んでも。
「複数のハーブを合わせるとより芳醇な香りになります。このオイルやビネガーがあるとハーブを都度買い揃える必要もなくなり、手軽ですよ。小さめの瓶でいくつか作って自分の好みを探し、料理ごとに使い分けるのもいいですね」
[作り方のポイント]
●カビを防ぐために傷みのないハーブを使い、空気に触れないようにオイルやビネガーにしっかり浸すこと。3~6カ月冷暗所で保存可能。風味のいいうちに使い切り、濁りや分離、カビが出てきた場合は破棄する。
●ハーブは水洗いし、しっかりと水気を切る(キッチンペーパーに重ならないように並べ、上からキッチンペーパーで押さえて水気を取り、さらに1時間以上そのまま置いておく)。
オイル
【作り方】
1.瓶を煮沸消毒するかアルコール消毒液で丁寧にふく。
2.瓶にハーブや材料を入れる。
3.2が浸るようにオリーブオイルを注ぐ。
4.蓋を閉めて直射日光と高温を避け冷暗所で1〜3週間置き、3週間過ぎたら濾す。
左・4種のハーブオイル
深い味わいの万能オイル
【材料(オリーブオイル500ml分)】
タイム 3枝
セージ 1枝
タラゴン 1枝
ローリエ 6枚
赤唐辛子 1本
オリーブオイル 500ml
*タイムとセージの深みある香りにタラゴンの甘い香り、ローリエのスパイシーさが混ざり、さまざまな料理に合わせやすい。
中・ローズマリーオイル
キリッと爽やかな香り
【材料(オリーブオイル500ml分)】
ローズマリー 5枝
にんにく 2かけ
黒粒こしょう 小さじ1
レモンの皮 適量(重曹か塩でこすって水洗いして1cm幅に切る)
オリーブオイル 500ml
*ローズマリーの強い香りは、肉や魚料理、米料理、お菓子作りにも活かせる。修道院では豆の煮込み料理に加えることも。
右・コリアンダーとオレンジのオイル
スパイシーでフルーティ
【材料(オリーブオイル500ml分)】
コリアンダー 8枝
コリアンダーシード 大さじ1
オレンジの皮 適量(重曹か塩でこすって水洗いして1.5cm幅に切る)
オリーブオイル 500ml
*コリアンダーシードの甘い香りとオレンジの爽やかな香りが印象的。サラダや生野菜はもちろん、魚介料理とも相性がいい。
ビネガー
【作り方】
1.瓶を煮沸消毒するかアルコール消毒液で丁寧にふく。
2.瓶にハーブやスパイスなどを詰める。
3.2が浸るようにAを注ぐ。
4.蓋を閉め、直射日光と高温を避けて冷暗所で1~3週間置き、3週間過ぎたら濾す。
左・イタリアンパセリとオレガノのビネガー
果物にも合う繊細な香り
【材料(赤ワインビネガー250ml分)】
イタリアンパセリ 2枝
オレガノ 2~3枝
赤唐辛子 1本(切り込みを入れて種を取り除く)
A[赤ワインビネガー 250ml]
*スッキリしたイタリアンパセリとほろ苦さを感じるオレガノの風味が芳醇な赤ワインビネガーとマッチ。果物の甘さにも合う。
中・タイムとバジルのビネガー
肉料理に合う組み合わせ
【材料(白ワインビネガー500ml分)】
タイム 2本
バジル 6枚
にんにく 2かけ(皮をむく)
白粒こしょう 小さじ1
A[白ワインビネガー 500ml]
*タイム独特の爽やかな香りとほんのり甘いバジルの香りが相まって肉料理にぴったり。シンプルに焼いた肉の旨みを引き立てる。
右・フェンネルのビネガー
甘い香りは食材の臭み消しにも
【材料(りんご酢400ml分)】
フェンネルの株と茎 1/4個分(100g)/葉 1枝(株は硬い表面の皮をむいて縦半分に切り、硬い芯を取って細切り。茎も株に合わせて細切り。葉はざく切り。ボウルにすべて入れ、塩小さじ1/2をふり、軽く混ぜて1時間以上置く)
レモンの皮 1/2個分(重曹か塩でこすって水洗いして1cm幅に切る)
A[りんご酢 400ml、水 250ml、黒粒こしょう 小さじ1/2、塩 小さじ1/2、グラニュー糖 小さじ4、オレンジの皮 適量](鍋に入れて中火にかけ、沸騰したら火を止める)
*漬けた株の部分はそのまま食べても、刻んで調味料として使っても。ビネガーはサラダや炒め物にかけてフェンネルの香りを楽しんで。米酢で作ってもいい。
[コリアンダーとオレンジのオイル]で白身魚のカルパッチョ
コリアンダーとレモンの香りが立ち、蒸し暑い季節も箸が進む。
【材料(2人分)】
たい(刺身用さく)150g
ラディッシュ 3個
紫玉ねぎ 1/6個
コリアンダーオイル 大さじ2
レモン果汁 1/4個分
レモンの皮のすりおろし 1/4個分
粗塩 適宜
【作り方】
1.たいは斜めに薄切りにする。バットに並べ、塩(分量外)とレモン果汁をまんべんなくふり、冷蔵庫で1時間ほど置く。
2.ラディッシュは薄切り、紫玉ねぎはみじん切りにする(辛味が気になれば水につける)。
3.器に1とラディッシュを並べ、紫玉ねぎ、レモンの皮のすりおろしをのせる。コリアンダーオイルをかけ、必要ならば粗塩をふる。
[ローズマリーオイル]で夏野菜のローストカタルーニャ風エスカリバーダ
ぎゅっと凝縮された野菜の甘みとローズマリーの爽快な香りで風味豊かに。
【材料(2人分)】
赤パプリカ 1個
米なす(普通のなすでも)1個
玉ねぎ 1個
トマト 1個
ローズマリーオイル 適量
塩 適量
【作り方】
1.オーブンは220度に温めておく。トマトはヘタを取り除く。2.天板にアルミホイルを敷いてすべての野菜を丸ごと並べ、オーブンで焼く(15分おきに確認しながら約1時間焼く)。焼きあがったものから皿に取り出し、アルミホイルをかぶせて蒸しながら冷ます。
3.冷めたらそれぞれ皮をむき、食べやすい大きさに切り分ける。
4.器に盛り、ローズマリーオイルをかけて塩をふる。
*野菜から出た汁も旨みがあるので、汁ごと器に盛り付けて。
[4種のハーブオイル]でしらすのパン・コン・トマテ
ハーブオイルの複雑な香味で完熟トマトとしらすの旨みが際立つ。
【材料(2人分)】
バゲット 約1/3本(約20cm)
しらす 60g
にんにく 適宜
トマト(完熟)中1個
粗塩 少々
4種のハーブオイル 適量
【作り方】
1.バゲットは8〜10cm長さに切り、さらに半分に切って表面をこんがりとトーストする。好みで半分に切ったにんにくの切り口をバゲットの表面にすり込む。
2.トマトは横半分に切り、おろし器で皮だけが残るまですりおろす。
3.1の上に2としらすをのせ、ハーブオイルをかけて粗塩をふる。
[フェンネルのビネガー]で鮭とフェンネルの酢漬けマスタードソース
甘さとほのかな苦みのある酢漬けも使って。味に深みが増し、食感のアクセントにも。
【材料(2人分)】
鮭切り身 2切れ
フェンネルのビネガー(フェンネル40〜50g+ビネガー大さじ5〜6)
粒マスタード 大さじ1
オリーブオイル 小さじ2
塩・こしょう 各少々
【作り方】
1.鮭に塩、こしょうをふる。フライパンにオリーブオイルを入れて中火で熱し、鮭の両面をこんがりと焼く。鮭に火が通ったら皿に移す。
2.フェンネルとフェンネルビネガー、粒マスタードを混ぜ、1の焼いた鮭にのせる。
*ビネガーに浸けて日数が経っている場合はフェンネルの酸味が強いため、分量は調節を。
[タイムとバジルのビネガー]で鶏手羽先のビネガー焼き
鶏肉の旨みと清涼感ある酸味が絡み合う。しっかり煮詰めてコクを引き出して。
【材料(2人分)】
鶏手羽先 8本
オリーブオイル 小さじ2
白ワイン 大さじ4
タイムとバジルのビネガー 大さじ6
塩・黒こしょう 各適量
アスパラガスなど好みの野菜 適量
【作り方】
1.鶏手羽先は先端を切り落として余分な脂を取り除き、塩、こしょうをふる。
2.フライパンにオリーブオイルを入れて熱し、鶏手羽先を皮目から中火で焼く。こんがりしてきたら裏返してさらに焼く。白ワインを加え、蓋をして中に火が通るまで弱火で蒸し焼きにする。
3.ワインがほぼなくなったらハーブビネガーを全体にふり、中火にして沸騰したら裏返し、半量になるまで煮詰める。器に盛り、焼いたアスパラなどを添える。
[イタリアンパセリとオレガノのビネガー]で桃のガスパチョ
フルーティなガスパチョがハーブビネガーで軽やかに、爽やかに。
【材料(2人分)】
桃(冷蔵庫で冷やしておく)2個
食パン(6枚切り、耳なし)1/2枚
オリーブオイル 大さじ1と1/2
イタリアンパセリとオレガノのビネガー 大さじ1/2
塩 小さじ1/3
【材料(2人分)】
1.桃は包丁を入れて半分に割り、種をスプーンで取り除く。皮をむき、ぶつ切りにする。
2.1とパンをミキサー(またはブレンダー)で撹拌する。
3.2にオリーブオイルを加えて混ぜ、ハーブビネガーを加えてさらに撹拌する。塩で味を調える。
4.器に移し、ハーブビネガーのハーブを飾る。
*桃を撹拌してから長時間冷蔵庫に入れると変色の可能性があるため、あらかじめ冷やしたものを使うとよい。
丸山久美さん(まるやま・くみ) 料理研究家
14年間スペイン・マドリードに滞在し、修道院を巡って料理を習得。『バスクの修道女 畑と庭の保存食』(グラフィック社)など著書多数。
『クロワッサン』1122号