「レシピ通りに作っているはずなのになんか違う」という人が見落としていること
レシピ本にレシピ動画、レシピサイト。料理を作るときに参考にしているという方は多いと思います。材料を揃えて、レシピに書いてある通りに作っているつもりなのに、「なんかおいしくない。なんで?」……そんな経験がある人、必見です。いまテレビ界・出版界からオファーが絶えない料理家、長谷川あかりさんがその理由を教えてくれました。
「レシピ通りに作っているはずなのになんか違う」と料理に苦手意識を持たないために
レシピ通りに作っているのに、なんか違う気がすると悩む人は多いようです。おいしそうな料理をみて「よし、作るぞ」と新たなレシピにチャレンジしたものの、予想と違った出来ばえにがっかり。でも理由がわからない……そんな経験から料理に苦手意識を持ってしまうのはすごくもったいないと思っています。
新刊『時間が足りない私たちの新定番「私、天才かも!」レシピ』は、そんな料理に自信が持てない、でもおいしいものを作りたい!という人のためのレシピ本です。どうすれば納得のいく〈正解の味〉になるのか、ヒントをお伝えします。

「レシピ通りに作っているはずなのになんか違う」という人が見落としていること
「“適量”ってどれくらい?」今さら聞けない〈レシピの基本知識〉
料理を作り慣れていないと、まずレシピの材料欄を見るだけで疑問がわいてしまう方がいるかもしれません。例えば、分量にある「適量」ってどれくらい? 「適宜」と何が違う? 「少々」ってなに?…… 料理の仕上げにかけるオリーブオイルや黒こしょう、レモンのしぼり汁などの表記で出てくることが多いんじゃないかと思います。
一般的には「適量」とあったら、これは「ご自身がおいしいと思う量を調整して加えていただければOK」という意味で、「適宜」とあったら、「入れても入れなくてもOK。お好みで加えてください」ということを表します。
塩の分量でよく表記されている「少々」って、皆さん、どのくらいと思っていますか? ちなみに「ひとつまみ」という表記もありますよね。ややこしい(笑)! 以下が目安です。よく登場する料理用語なので覚えておくと便利ですよ。
少々→親指と人差し指でつまんだ量(約小さじ1/8、約0.5g)
ひとつまみ→親指、人差し指、中指でつまんだ量(約小さじ1/5、約1g)
分量つながりで覚えておきたいのが、計量スプーンで量るときの「どこまで入れるか」問題です。醤油やお酢、油といった液体を計る場合は表面張力で盛り上がっている状態まで注ぎます。塩や砂糖といった粉末の場合は山盛りにしてから、へらなどで表面を平らにすりきります。こちらも覚えておきましょう!
「○○がない!」ときに何かで代用……の失敗率は高い
例えば、生クリームを使うレシピをSNSに上げた時、「生クリームを常備してないのですがどうすればいいですか?」といった質問をいただくことがあります。大丈夫です、私も常備していません!(笑)
生クリームのように、‟常備しているわけではないけれど、特定の料理を作るために買った食材”って、だいたい中途半端に余ってしまって困るんですよね。皆さんのお気持ち、私も一緒です(特に生クリームは消費期限が切れるのも早いし、本当に困る……)! だから、私のレシピでは生クリームであれば使用量を100㎖単位にして、100㎖入りのミニパックが1度で使い切れるようにしています。安心して料理に取り組んでもらえたら嬉しいです。
ちなみに、「生クリームの代わりにヨーグルトでいいですか?」「牛乳では?」と尋ねられたりもしますが、その材料で試作をしていないので「大丈夫です」とは言えないんです。料理によっては問題ない場合もあるかもしれないけれど、まずはレシピ通りの材料で作ってみることをおすすめします。まず1回レシピのまま作って、その味を覚えていただいたら、あとは皆さんの料理。そこから先はご自身のお好み次第でアレンジをして楽しんでください。

肌にいいリコピン(トマト)とビタミンE(アボカド)、温め食材(しょうが)の入った、まさに女性におすすめしたい一品の「ツナトマトご飯」。ツナ缶は小缶(70g)すべて、トマトは1個まるごと使い切るレシピにしています。
盲点は「味見」。実は絶対やってほしいコツです
失敗を避けるためにお願いしたいのは、調理の途中で味見をすること! 意外と皆さん、最後まで味見をしないと言いますが、料理って途中で何回味見しても(笑)いいんですよ。私の料理は基本的に、“これがオレの味だぜ!!”というような、派手な味の付け方はしていません。人が「おいしい」と感じる味つけって、想像以上に人それぞれ幅があります。だから、100人中100人の方に確実においしいと思ってもらえるレシピにしようとすると、どうしても味が濃くなりがちなんです(外食が、まさにそのいい例かなと思います)。
健康的で、食べ疲れないおいしさを届けたいから、私のレシピでは、100人中80人くらいの方に、おいしい!!と感じてもらえる味の具合を目指しています。濃いめ味が好きな方は、完成前に必ず味を見て塩で調えるようにしていただけると、料理の仕上がりがぐんと自分好みになるかなと思います。私のレシピ以外のものでも、ちゃんと味見をして、最後は自分の感覚で味を調える作業を欠かさないことで、料理は格段に上達していきます。

野菜をたっぷり食べたいときに作ってほしい「トマトレモン煮込み」。レモン汁とカレー粉、塩で味をまとめているのですが、この味付けの「塩梅」はまさに味見が大事。もっと酸味がほしいなとか、スパイシーさがほしいなとか、味見をすることは“成功”への近道です。
先ほどもお伝えしたように、私のレシピは、少し余白を残した状態で皆さんに紹介しているので、これを料理の発想のベースにして、皆さんそれぞれの味が確立されていく、ということもまた理想的だなと思っています。自由に、楽しく、毎日の食卓にお役立て下さい!
撮影/鈴木泰介 スタイリング/山口裕子(+y design) 取材/首藤奈穂