イギリス人の部屋はなぜ素敵なのか。モノが多い、狭い、家具が合わない…悩みの改善策
「とにかくモノを捨てて、スッキリさせなければ、素敵な部屋は作れない」、そう思っている人は多いかもしれない。でも、イギリスで学んだインテリアデザイナーの飯沼朋子さんは、「足すインテリアをおすすめします」ときっぱり。
話題の新刊、『イギリス人の部屋はなぜ物が多くても素敵なのか』(飛鳥新社)から、そのノウハウを3回に分けて紹介する。
第1回「イギリス人の部屋はなぜモノが多くても素敵なのか。”捨てない”驚愕の方法」では、イギリス人のインテリアに対する基本の考え方についてお伝えした。
「○○スタイル」にするのではなく、「自分の居心地のいい空間」を作るという発想。日本人には「引き算の美学」があるが、今、多くの人が住んでいるのは和室でなく、シンプルな洋室。だからこそ、「足すインテリア」が生きるのだ。
第2回の今回は、悩みを解決するという形で具体的な方法を紹介する。
<以下、本書からの抜粋>
悩み1:モノが多くてちらかっている
「モノが多いから部屋がちらかってしまう。でも、片づけは面倒……」
最も多い悩みかもしれません。やはり、足すと解決できることがあります。
【解決方法1】視線が集まる場所を足す
「視線が行く場所(フォーカルポイント)」をつくることによって、ちらかっているモノに目線が行かないようにすることができます。
自分が持っているモノの中からお気に入りを見つけてインテリア用品にすれば、個性的で魅力的な部屋に仕上げるチャンスかもしれません。
【解決方法2】収納家具を足す
モノが多くてちらかってしまう部屋は、そもそも収納家具が足りていないこともあります。
「部屋が狭くなるから家具を置きたくない」と考えてしまう「引き算」の発想が、収納家具を足すのをためらわせているのかもしれません。
高価な家具を買う必要はありません。もし押し入れやクローゼットに眠っている家具があれば、それを活用するのも手です。たとえば、高さ80センチくらいのチェストや収納家具です。
同時にその上をいろいろなモノで「飾る」舞台として考えます。
たとえば、アートやミラーなど大きめのモノを足すと映えます。
さらに、ランプ、花や観葉植物、本、写真、置き物など足すモノは自由です。
家具を足すことで、収納の実用面も見た目も整えることができ、心地よい暮らしにつながります。
【解決方法3】壁に色や柄を足す
ほとんどの部屋は白っぽい壁紙が多いと思うのですが、赤、青、緑、濃いグレーなどはっきりした色や柄ものの壁紙にすると、その色柄の世界観に空間全体が包まれ、ちらかったモノが目立ちにくくなります。
柄を足す場合は壁紙を張り替え、色だけ変える場合は上からペンキを塗る方法もあります。子ども部屋にもおすすめです。

壁をはっきりした色にすると世界観がその色になり、ちらかったモノがそれほど気にならなくなる
悩み2:部屋が狭い
「部屋が狭いから家具は増やせない」
気持ちはわかりますが、ここも「足し算」の発想で考えてみましょう。広い部屋はその分、多くの家具が必要ですが、狭い空間では少しの工夫でコストをおさえつつ、魅力的なインテリアをつくり上げることができます。
【解決方法4】 1人がけのイスを足す
部屋が狭くて大きなソファが置けない場合は、1人がけのソファかイスを置きましょう。
1人がけのイスだけでも十分ですが、そこにクッションやフロアランプ、アートなどを追加すると、部屋がよりイキイキとしてきます。特にフロアランプやアートは高さがあるため、空間に立体感を与えてくれます。
日本人には床に座る習慣もありますが、実は何もない床に直接座るよりも、ソファやイスを置いて座るほうが狭さが気にならなくなります。
また、アートやランプ、カーテンなど高さがあるアイテムを組み合わせると、空間が立体的になり、より豊かで魅力的に感じられます。

空間に立体感が出て狭さがそれほど気にならなくなる(イラスト/植田里香)
【解決方法5】壁に個性を足す
狭い空間だからこそ、個性的にすることで部屋を魅力的にできます。
解決方法3のように色を足したり、壁にアートなどインテリア小物を足すことで、狭い空間の邪魔をすることなく独自のスタイルにすることができます。思いきったデザインやカラーの使い方は、広い部屋より狭い部屋のほうが挑戦しやすいものです。狭くても大好きな部屋になるように整えましょう。

空間を邪魔することなく個性を出せる
悩み3:すでにある安い家具が気に入らない
「ホームセンターで買った安い家具を使っているから、おしゃれな部屋にならない。でも買い替える予算はないし......」
こんなとき、「いっそないほうがいいのでは?」と処分してしまうのは「引き算」の考え方です。家具がないと不便ですし、部屋が物足りない印象になってしまうかもしれません。「足す」ことで解決してみましょう。
【解決方法6】クッションを足す
たとえば、ソファがなんだか気に入らないという人は、ソファにクッションを足しましょう。クッションは腰当てという実用品でありながら、インテリア小物としてもとても優秀なアイテムです。
シンプルなTシャツとデニムだけでも、とてもおしゃれに見える人っていますよね。たいていは、服以外のバッグや靴、アクセサリーなど小物の組み合わせ方がうまいのです。
クッションもそれと同じで、クッションの色や素材、サイズなどを変えて組み合わせることで全体のバランスが整い、すてきな光景をつくることができます。

チープなソファでもクッションを足すことで、全体のバランスが整って雰囲気が出る(イラスト/植田里香)
【解決方法7】小さいテーブルに小物を足す
「コーヒーテーブル」「センターテーブル」とは、ソファの前に置く小さめのテーブルのこと。リーズナブルなコーヒーテーブルの上に何も置かなければ、テーブルそのものが目立って、ちょっと殺風景な印象になってしまいます。
でも、テーブルの上に季節の花を飾ったり、旅先で見つけた小物やお気に入りのキャンドルなどを足したらどうでしょう?
すると、主役がテーブルの上にあるインテリア小物になり、テーブルそのものには視線が行かなくなります。
飾るものとしては、私の例で恐縮ですが、岐阜県に旅行に行ったとき、お土産に15センチほどの美濃焼のカエルの置き物を買い、コーヒーテーブル上に置きました。

また、写真集や読みかけの本をテーブルの上に重ねてみるのもいいアクセントになります。
イギリスには「本があってこそ部屋は部屋らしくなる」という格言があるくらい、本は「足す」ためのアイテムとして優秀です。
悩み4:すっきりしているけれど、なんだか殺風景
ミニマリスト的なインテリアを実践している方に多い悩みです。モノが少ないのですっきりはしますが、のっぺらぼうの洋室の場合、モノを減らすほどに実用性と楽しさが失われていきます。
モノが少なくても少ないなりに「フォーカルポイント」をつくると、すてきな部屋になります。また、「足す」とは形あるモノだけではなく、素材や色、柄、光の陰影などさまざまに足すことです。
【解決方法8】植物を足す
シンプルな部屋に生命を吹き込んでくれるのはその名の通り、命があるモノです。
季節の花や観葉植物を足すことで、部屋はイキイキとします。
【解決方法9】クッションやラグで色や柄を足す
色や柄の入ったクッションやラグを足すことで、空間がぐっと華やぎます。もし、
空間に色をあまり足したくない場合は、異なる素材感のアイテムを取り入れるだけで、空間に多様性と豊かさが加わります。
たとえば、部屋全体が白、グレー、ベージュで統一されているなら、あえて、やはり白、グレー、ベージュなどの色を何箇所かで取り入れることで、落ち着いた雰囲気を保てます。この場合、単調にならないように、異なる素材や柄を取り入れることがポイントです。
素材はリネン、ニット、サテン調など、柄は花柄、幾何学、ストライプなどお好みで。細かい織り柄でも変化がつきますし、少し大胆なデザインでも空間にアクセントがつきます。

柄の入ったラグを敷くと空間が一気に華やかに
一方、色を足したい場合は、好きな色のクッションや花、ラグなどで取り入れます。似た色を何箇所かに取り入れたほうが統一感が生まれ、色の効果が高まります。クッションだけで色を足すのでも大丈夫です。
クッションは、季節や気分によっても気軽に変えられるのも楽しいポイントです。たとえば、春ならパステルカラー、夏ならブルー系、秋ならオレンジや茶色、マスタードイエロー、冬なら赤系、または素材感のあるウールやフェイクファーなどのクッションを取り入れると季節感が楽しめます。また、クッションに合わせて、花も同じ色合いにすると、部屋全体に季節感があふれてすてきです。
【解決方法10】アートを足す
壁がガラーンとしていると、殺風景になりがちです。目線の高さ(床から150センチくらい)にちょうどいいのがアートです。殺風景に感じる壁にアートを飾ってみましょう。
アートは、絵だけでなく、家族写真や子どもが描いた絵、旅で買ったポストカードなどなんでもよいのです。
ただし、できれば額縁(がくぶち)に入れて飾りましょう。大げさな額縁でなくても、100円ショップで売っているようなシンプルなフォトフレームで飾るのでもOKです。