ミャンマーの大地震、観光産業に大きな打撃 客の姿はまばら、再興模索も先行きに不安
地震で被災した、インレー湖の湖岸の水上ホテル=2025年6月、ミャンマー東部シャン州ニャウンシュエ(共同)
2025年3月に大地震が起きたミャンマーでは、観光産業も大きな打撃を受けた。軍事政権は観光客を呼び戻そうと模索するが、国内有数の観光地インレー湖の周辺では外国人はおろか地元客の姿もまばら。新型コロナウイルス禍やクーデター、水害など度重なる困難に直面しており、観光業の回復は難航が予想される。(共同通信ヤンゴン支局=原龍太郎)
美しい景色が広がる丘陵地帯にあるミャンマー東部シャン州のインレー湖の湖岸には、多くのリゾートホテルが立ち並ぶ。2025年6月に訪れると、倒壊した水上ホテルはそのまま放置され、民家は倒壊寸前まで傾き、地震の爪痕が生々しかった。
「観光客の姿はほとんど見ない。深刻な状況だ」。特産のハスの繊維を使った機織りの実演販売工房を営むミンテイントゥンさん(47)が肩を落とす。インレー湖ツアーの定番スポットとして知られる工房には、コロナ禍以前は外国人観光客も含め1日に200隻以上のボートが集まり人であふれ返っていた。
ミャンマーでは2021年のクーデターで国軍が全権を掌握。抵抗する民主派や少数民族武装勢力との間で内戦が激化し、インレー湖があるニャウンシュエでも民主派武装組織「国民防衛隊(PDF)」との衝突が起きている。
工房を訪れるボートはコロナ禍とクーデターで1日30隻まで激減。2024年9月の大雨による洪水被害と大地震で、現在は1日10隻が来ればいい方だ。祖父母の代から続くミンテイントゥンさんの工房は、大部分が崩壊。現在は仮の工房でなんとか営業を続ける。
「コロナ前は常に満席だったのよ」。インレー湖周辺で著名な仏塔「ファウンドーウー・パゴダ」の正面に位置し、観光客を相手に営んできた水上レストラン「トゥントゥン」。閑古鳥が鳴く店内で女性従業員(20)がため息をついた。
かつて1日150組ほどいた客は10組前後まで減り、地震後は4~5組の常連しか訪れない。
クーデター前の2019年にミャンマーに入国した外国人客は約193万人。2021年は約1万9千人にまで落ち込んだ。2024年は約120万人まで回復したとしているものの、政変前には届かない。
軍政は2025年5月、国営紙を通じて被災地への観光客の訪問を促した。「被災地訪問で震災の知識が得られ、観光産業を支えることで地元経済に貢献できる」と強調したが、レストランの女性従業員は懐疑的だ。終わりの見えない内戦などを念頭に「政治状況が良くならない以上、観光客が戻ってくることはないと思う」とうつむいた。
地震で被災した、インレー湖の湖岸の水上ホテル=2025年6月、ミャンマー東部シャン州ニャウンシュエ(共同)
倒壊したミンテイントゥンさんの工房=2025年6月、ミャンマー東部シャン州ニャウンシュエ(共同)
観光客が姿を消した機織りの実演販売工房=2025年6月、ミャンマー東部シャン州ニャウンシュエ(共同)
観光客が姿を消し閑古鳥が鳴くレストラン=2025年6月、ミャンマー東部シャン州ニャウンシュエ(共同)
倒壊した工房で取材に応じるミンテイントゥンさん=2025年6月、ミャンマー東部シャン州ニャウンシュエ(共同)
ミャンマー・ニャウンシュエ、ネピドー、ヤンゴン、中国、タイ
帰還者2百万人に急増、アフガン 不安広がる、タリバン復権4年
カンボジア新空港、9月にも始動 フン・セン氏、政治遺産か
インド洪水で38人死亡 北部、犠牲者増も