坪井翔、上々のF1初ドライブ コースレコードまでコンマ2秒、1分17秒470をマーク「夢がかなった最高の1日」【ハースF1テスト2日目】

初のF1テストで108周を走り込み、コースレコードに肉薄した坪井翔(富士スピードウェイ提供)

憧れのF1に乗り込んだ坪井翔(富士スピードウェイ提供)

国内初の公開TPCテストを終えたハースF1チームが記念撮影。前列左が坪井翔で、同右から初日を担当した平川亮。中央左がハースF1の小松礼雄代表で、同右がモリゾウ

走行前は緊張した面持ちだった坪井翔(富士スピードウェイ提供)

 ハースF1の旧型車を使ったTPCテスト2日目(最終日)が7日、静岡県の富士スピードウェイで行われ、坪井翔が初めてのF1ドライブに挑んだ。走行前は緊張で顔もこわばっていたが、いざ走り出すと昨季のスーパーフォーミュラ(SF)とスーパーGTのGT500クラスを制したダブル王者の本領を発揮した。

 安定した走行に加え、着実にタイムを縮めて1分17秒470をマーク。当地で行われた2008年の日本GPで記録されたコースレコード(1分17秒287)に迫った。「めっちゃ楽しかった。小っちゃなころから夢見てきたF1。夢がかなった最高の1日」。満面の笑みを浮かべ、午前、午後の計6時間で、ミスなく走り切った108周を振り返った。

 レコードに迫ったベストタイムだが、実はコース終盤のテクニカルセクションのセクター3は完ぺきではなかったという。「セッティングを変えたら(コース中盤の)セクター2は速くなったけど、セクター3が駄目になって。富士の”あるある”です」と苦笑い。コンマ1~2秒近くは失ったようで、完ぺきに決まっていれば非公式ながら更新もあり得たようだ。

 ただ、今回のテストはタイムを競うものではない。今年初めに「海外進出に興味があるのなら―」というモリゾウこと豊田章男トヨタ会長の粋な計らいで実現したもの。国内では無敵状態の坪井だが、F1を走れる実力を示す場でもあった。午後には連続走行もこなし、SFのポールタイムに匹敵するハイペースで正確な周回を続けた。「しっかりとタイムも出せた。(走り慣れている)富士に関しては、F1を走らせられる実力は示せたと思う」と胸を張った。

 もちろん、前日にクルマの調整を行ってくれたハースのリザーブドライバーを務める平川亮の”準備”や、テスト中の貴重なアドバイス、さらには運転方法までサポートするチームの支えも大きかった。「平川選手がクルマを仕上げてくれ、僕は走ることに集中できた。チームもドライビングアドバイザーという人がいて、運転中にも具体的な指示をもらった」と、周囲の手厚いサポートへの感謝を忘れていない。

 走行中に一番驚いたのが、リアウイングが可動して加速するDRS(空気抵抗低減装置)だったという。「ボタンを押した途端、ブーストがかかったように加速していった。『お~F1だ!』と思った。それ以外はダウンフォース(気流で押さえ付ける力)も強く、ブレーキもパワーもすごいけど、走っているときは集中しているのであまり意識しなかった」。無我夢中の初テストだった。

 「このクルマを使ってレースをしてみたい気持ちになった。世界のトップ選手に混ざって、どこまで(自分が)通用するのか確認してみたい」。遠く、憧れるだけの世界だったF1が、ずいぶん身近になった。乗り越えなければならないハードルはたくさんあるが、新たな目標が生まれた坪井の精進は続く。