熱中症で死亡98人のうち93人が屋内…「風に当たると膝が痛む」とエアコン切るのは×

気象庁は9月も平年以上の気温を予想

 東京都心で10日連続の猛暑日を記録するなど、全国的に厳しい残暑が続いている。今年の夏は各地で歴代の最高気温を更新。熱中症の搬送者は、過去最多だった昨年を上回るペースで推移している。暑さは9月以降も続く見込みで、残暑の熱中症対策が欠かせない。

(林麟太郎、尾藤泰平)

気象庁は9月も平年以上の気温を予想, 梅雨明け前から「異常な気温」, 持病悪化のリスク, 室温は「28度」目安に

高齢者宅を訪問し熱中症への注意を呼びかける相談員の小林美緒さん(右)(26日、東京都墨田区で)=高橋美帆撮影

 「まだまだ暑いから油断しないでね」。26日午前、東京都墨田区の「高齢者みまもり相談室」相談員小林美緒さん(26)が、区内で一人暮らしをする女性(85)方を訪れ、熱中症への注意を呼び掛けていた。

 自転車で85歳以上の高齢者宅を回っている小林さん。手元の「熱中症指数モニター」には「厳重警戒」と表示されていた。小林さんは、「エアコンを使っていますか」と声をかけ、塩分補給タブレットを手渡した。女性は「1人で倒れたら大変。夜も冷房をつけています」と汗をぬぐった。

 墨田区に8か所ある相談室では昨年5~9月、熱中症対策のため延べ4259軒の高齢者宅を訪問した。中には「風にあたると膝が痛む」とエアコンの電源を切っている人や、「トイレが近くなる」と水分を取りたがらないお年寄りもいた。

 過去には、エアコンが作動していない部屋で高齢男性が倒れていて、病院に搬送されたケースもあり、小林さんは「対策が命を守ることにつながると粘り強く伝えていきたい」と語る。

梅雨明け前から「異常な気温」

 今年は梅雨明け前から暑い日が続き、気象庁は、月平均気温の最高を塗り替えた6月と7月について「異常な気温」と表現した。

 8月は、群馬県伊勢崎市で国内観測史上最も高い41・8度を記録。埼玉県鳩山町と静岡市で41・4度、群馬県桐生市で41・2度を観測し、昨年までの国内最高の41・1度を上回った。総務省消防庁によると、5月から8月24日までの全国の熱中症搬送者数は8万4521人(速報値)に上り、過去最多だった昨年を超えるペースで推移している。

気象庁は9月も平年以上の気温を予想, 梅雨明け前から「異常な気温」, 持病悪化のリスク, 室温は「28度」目安に

9月の熱中症搬送者数の推移

 東京都監察医務院によると、東京23区では今年、8月26日までに熱中症で死亡した98人のうち95人が60歳以上だった。70歳代が42人、80歳代が32人と多く、屋内で93人が亡くなり、8割はエアコンを設置していないか、使っていなかった。

持病悪化のリスク

 気象庁によると、9月も太平洋高気圧が日本列島に張り出し、平年以上の気温となる日が多そうだ。昨年9月は全国の熱中症搬送者が初めて1万人を超えており、警戒が求められる。

 医師らでつくる「熱中症予防啓発ネットワーク」代表で救命救急医の犬飼公一さん(38)は「暦だけで夏が終わったと判断するのは危険だ」と指摘する。暑さによるダメージの蓄積にも注意が必要だといい、犬飼さんは「体に負荷がかかり続けると、糖尿病患者は血糖値が上がるなど持病が悪化するリスクが高まる。エアコンの使用や水分補給といった基本的な対策を徹底し、規則正しい生活を心がけてほしい」と話している。

室温は「28度」目安に

 熱中症対策で重要になるのが室内の温度管理だ。環境省はエアコン使用のポイントとして、▽室温は「28度」を目安にし、温度計でこまめにチェックする▽扇風機で空気を循環させる▽フィルターを2週間に1度掃除する――などを挙げる。

気象庁は9月も平年以上の気温を予想, 梅雨明け前から「異常な気温」, 持病悪化のリスク, 室温は「28度」目安に

熱中症を防ぐエアコン使用のポイント

 効率のよい使い方も気になるところ。空調大手のダイキン工業によると、日中30分程度の外出なら電源をつけたままにした方が節電につながる。風量は「弱」よりも「自動」の方が電気代が抑えられるという。

 自治体も対策を急ぐ。東京都は30日から、高齢者らが対象のエアコン購入補助を、9000円~7万円から一律8万円に引き上げる。江戸川区は今夏、75歳以上の高齢者がいる全世帯に、エアコンの電気代などに充てる5000円の給付を始めた。福岡県太宰府市は今年度、65歳以上の世帯のエアコン購入時に上限3万円を補助する事業を実施した。