内戦を支持しているのは誰？ 米国世論調査から見えた政治的分断の実態
米国は内戦前夜？
政治的分断が深刻化している米国で、内戦を懸念するような声も聞こえてくる。そのような不安を反映したかのような映画も公開されていたが、実際の世論調査の結果を見る限り、内戦を予期したり、あまつさえ支持している米国民はごく僅かなようだ。
全体的には楽観的な見立てを許す結果に
2025年7月に学術誌『Injury Epidemiology』に掲載されたある研究では、2024年中旬に全国から抽出したサンプルに基づくデータが利用された。その結果は、これまでの知見と相反する側面もあるものの、米国の将来に関しては楽観的な見立てを許すものとなった。
内戦についての認識を問う
その研究はカリフォルニア大学デービス校のガレン・ウィンタミュート氏が主導したものだ。学術メディア「PsyPost」によると、2022年および2023年に集計されたデータでは米国民の一定数が内戦が近づいており、国にとって必要ですらあると考えていたものの、今回の結果ではその傾向が弱まったという。
調査期間は大統領選挙前夜
今回の研究は大統領選挙を控えた2024年中旬に集計されたこともあり、高まる米国内での政治的分断を反映して、内戦を予測する傾向も強くなるだろうと予想されていた。だが、実際の結果を分析したところ、そうはなっていなかった。
調査期間は2024年5月から6月
調査対象者は2022年及び2023年と同一で、8,000人以上の米有権者が対象となった。また、調査期間は2024年5月23日から6月14日で、トランプ元大統領（当時）への有罪判決が出る前だったことにも注意が必要だ。
内戦に関する意見を問う
調査対象者は次のような文章に対する賛否を求められた：「今後数年以内に米国で内戦がある」「米国の状況を正すためには、内戦が必要だ」
調査結果は
「PsyPost」によると、「今後数年以内に内戦がある」という意見に「強く同意」あるいは「とても強く同意」した回答者は6.5％で、内戦が必要だという意見に同意したのは3.6％にとどまったという。この数字は2023年からごく僅かに増加しているものの、依然として比較的低いと言えるものだ。
2023年の結果から大きな変化はなし
2023年には同じ意見に対して賛成した人はそれぞれ5.7%と3.8%だった。「PsyPost」によると、研究者らはこの数字が増加すると予測していたという。確かに内戦を予期する人の割合は僅かに上昇しているが、研究者としては懸念すべきほどとは認めていない。
少数のグループについて興味深い結果が
今回の結果で興味深いのは、内戦を予期し、さらに仮に勃発した場合には自ら武器を取る意志があるとした少数のグループについてだ。なお、内戦を予期しているとした人のうち84.2％と大多数は自分は戦闘に参加しないとしている。
戦闘に参加する意志を覆すことも多い
研究によると、自ら戦闘に参加する意志をがあるとした人であっても、さまざまな状況を仮定した場合、その多くは意志を覆したという。
半数近くが家族からの反対を無視しない
たとえば、戦闘に参加する意志があるとした人の45％弱は家族から説得された場合には戦闘を必須とはみなさないとしている。また、家族や宗教的指導者、政治家、メディアなどから説得された場合に意志を覆すだろう人の割合も23％から31％に及ぶとされた。
強固な右派に顕著な傾向
内戦を予期し、さらには必要とすら考えている人はどのような政治的立場からそう認識しているのかも集計されている。それによると、自身の政治的信条を「強固な共和党員」「MAGA共和党員」「極度の保守主義者」とみなしている人の方が、左派よりも内戦を予期している割合が高かったという。
MAGA派の1割が内戦を強く予期
たとえば「PsyPost」によると、自身を「MAGA共和党員」とした人のうち、10.2%が内戦を「強く」あるいは「とても強く」予期し、7.8%が内戦を必要だとみなしていた。
権威主義的・人種差別的な考え方とも相関
同じ研究によると、権威主義的な考え方や人種差別的な考え方に強く同意した回答者のほうが、内戦を予期し、必要とみなす率が高かったという。調査ではさらに、そういった回答者らに対し、いくつかの争点となっている政治的団体・運動への認識も問うている。
極右団体への賛意とも連動
そういった団体とは「Proud Boys」や「Oath Keepers」、「Three Percenters」などの極右団体や「QAnon」などの陰謀論グループだ。これらの団体に強く共感していた人々の間では、内戦を必要とみなす割合がとても高かった。
全体よりもはるかに高い割合に
調査では、一連の団体に賛意を示した回答者のうち55.7%が内戦を予期していたという。「PsyPost」も指摘するように、内戦を予期する人の割合は回答者全体では6.5%だったことを考えると、これは顕著な高さだ。
内戦が必要だとみなす割合も高い
さらに、極右団体に賛意を示した回答者のうち50.8％が米国には内戦が必要だとみなし、39％が戦闘に参加する意欲を示していた。
全体としては不安に思うほどではない
とはいえ、不安要素もあるものの、論文の著者らが指摘するように、全体としては米国における内戦を支持する意見はかなり限られた範囲に置いてしか支持されていないのも事実だ。米国有権者の大半は内戦を予期しておらず、まして米国にとって必要だとも考えていないということだ。
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