お盆休みに静岡・清水港にやってきた世界に数隻しかない珍しい船 乗客が船に住んでいる?
静岡県の清水港には、多くのクルーズ船がやってきます。2025年度は過去最多の100隻を超えるクルーズ船が訪れる予定です。その中には少し変わった船も。8月15日に清水港に初寄港した船は、世界に数台しかない珍しい船でした。(取材・文=三浦徹)
静岡市によりますと、2024年に清水港に寄港したクルーズ船は87隻で全国で9位でした。外国船に限ってみると、本州では横浜港や大阪港を抑えて1位となっています。
寄港する船の数は、コロナ禍があけた2023年度から右肩上がりとなり、2025年度は過去最多となる100隻を超える船の寄港が予定されています。
寄港する船のほとんどが、早朝に清水港にやってきて、その日の夕方に出港するというスケジュールです。しかし中には清水港に一泊、いわゆる「オーバーナイト」する船も。2025年度、清水港には4隻がオーバーナイトする予定です。
●清水港客船誘致委員会 眞田剛光事務局長 (静岡市清水みなと振興課長)
「清水はあまりありませんが、大阪港などはオーバーナイトは多い。夜でないとできないイベントが企画されたりします。また大阪港に泊まって、京都に行くツアーもあったりします。やはり昼間より夜のほうが単価が高いので企画されるケースは多い」
8月15日に寄港予定の「オデッセイ号」もオーバーナイトする4隻のうちの一つ。総トン数2万4344トン。乗客はおよそ300人とあまり大きくない船ですが、午後0時に入港し、出港するのは翌日の午後6時です。
お盆休みに静岡・清水港にやってきた世界に数隻しかない珍しい船 乗客が船に住んでいる?
8月15日、ほぼ予定の時刻にオデッセイ号が清水港にやってきました。しかし、港は他のクルーズ船がやってきたときの様子とはまったく違うものでした。
通常、クルーズ船がやってくると、港には臨時の案内所が設けられ、露店が並び、船から降りた乗客でにぎわいます。また、ここから観光に出かける乗客のために多くのバスやタクシーが並ぶ光景もおなじみです。
しかし、一般客が入れない第一埠頭というせいもあるのでしょうが、オデッセイ号の入港時、案内所や露店はなく、また観光客向けのバスやタクシーも見当たりません。
通常のクルーズ船は到着すると大勢の乗客が下りてきますが、オデッセイ号は降りてくる乗客もまばら。到着してから1時間で降りてきた人は100人ほどだったということです。
他の船と明らかに違う様子ですが、そこにはこの船の特殊性があるといいます。実はこのオデッセイ号、実は世界でも数少ない珍しい船です。
●清水港客船誘致委員会 眞田剛光事務局長:
「この船は『レジデンス船』と呼ばれ、基本はマンションのように、部屋の所有権を持つ人が住んでいる船です。ホームページを見ると賃貸があったり、空いてる所にスポットではいれたりします。通常のツアーというより、部屋をもって別荘みたいに必要な時だけ使う。マンションのように共益費も毎月必要です。部屋の値段は一番いい部屋で5000万くらい。管理費もいい値段。乗っている人はお金がある人だと思います」
レジデンス船は世界に数隻しかなく、清水港への寄港は2006年の「ザ・ワールド」に続いて2隻目です。
●清水港客船誘致委員会 眞田剛光事務局長:
「通常の船は、船内にコーディネーターがいて、旅行会社と組んでバスツアーを企画したりします。しかしこの船にはコーディネーターのような人はいないようです。通常のツアーではなく、乗客が各自で自由に手配しているようです。乗客は自由にやりたい感じなので、こちらもあまりお世話はしないようにしています。今回、初寄港ですが、セレモニーができなかったので、清水港客船誘致委員会が船を訪ねて、船長たちと記念品の交換を行いました」
スケジュールを見ると、オデッセイ号は他のクルーズ船と違い、どの港にも必ず1泊以上していて、横浜港には3泊します。これもレジデンス船ならではの特徴かもしれません。
数少ない清水港にオーバーナイトする船。この日が金曜日だったこともあり、この船をおもてなししようと、地元の商店街が夜のイベントを企画しました。
●次郎長通り商店会 大石朗紀会長:
「清水港に1泊する船があると聞いて、乗客をおもてなししたいと思って、清水港に近いエスパルス通りでイベントを企画しました。実はそのあと、普通の客船ではなく、乗客があまり降りてこないのではという話も聞きました。ちょうどお盆でもありますし、地元の人でもりあがればそれでもいいと思っています。クルーズ船のお客さんが来てくれればなおいいですが。当日は地元の人が盆踊りを踊るのですが、それに外国から来た方も参加してほしいと思っているのですが、難しそうですね」
果たしてクルーズ船の乗客はイベントにきてくれるのしょうか?
15日夜、清水港に近いエスパルス商店街で行われたイベント「港町夜景(SHIMIZU PORT NIGHT BAZAAR)」。地元の商店などによる露店が10店ほど、通りにならびました。訪れた人は露店で販売されていたお酒や食べ物を片手に、通りをのんびりと散策していました。とても楽しそうです。
お盆休みということもあり、会場には大勢の人が…。ほとんどが地元の人と思われる人たちでしたが、それに交じって乗客とみられる外国人の姿もちらほら。
そして午後8時。地元の人およそ50人ほどが参加した「盆踊り大会」が始まると、イベントは一気に盛り上がりました。
そして盆踊りには、客船の乗客10人ほどが飛び入り参加。見よう見まねで楽しそうに踊っていました。大石さんの狙い通り、船の乗客と地元の人が一緒になってイベントを盛り上げました。
●次郎長通り商店会 大石朗紀会長:
「シンプルにうれしいです。今回、商店会で夜のイベントを企画したのも始めてですし、客船のオーバーナイトに向けたものも初めてでした。地元の人たちが楽しめることがどんどん少なくなっているので、その機会を作れたのがよかったと思います。いろんな人から『またやってよ』と言われました。地元の人が楽しむことが、外国の人に対しても何かしらアピールになっていくと思います。これからもオーバーナイトする船はあると思うので、また今後に向けてどんな形でやれるか模索しながらやっていきたい」
翌朝、清水港の第二埠頭には大型のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が寄港しました。オデッセイ号の前に停まる形で、オデッセイ号がとても小さく見えます。
そして清水港はいつもと同じように、船を降りてきた乗客やバス、タクシーなどでにぎわいました。人が立ち入りできないオデッセイ号の周辺は静かですが、このダイヤモンドプリンセスのにぎわいの中に乗客がまぎれているのかもしれません。
人が住んでいる特殊な船「オデッセイ号」。しかし乗っている人の、その寄港地を楽しもうという姿勢は、大型客船の乗客とかわらないようです。