「神戸女性殺害容疑者は中国籍で日本に帰化」は根拠不十分 投稿者は様々な事件で関係者自称

「神戸女性殺害容疑者は中国籍で日本に帰化」は根拠不十分 投稿者は様々な事件で関係者自称

検証対象

(以下引用)

兵庫県神戸市で片山恵さんを殺害した谷本将志容疑者 私は彼と同じ会社で働いています 彼は3年前にも逮捕されていますが、もともと中国籍で谷将(コクショウ)と名乗ってました 10年ほど前に日本に帰化し現在の名前となってます 中国人は一人っ子が多く、相手の気持ちを考えられない異常者が多いです

一般ユーザーのX投稿(2025年8月23日、約6200リポスト)

(以上引用)

判定

判定の基準について

この投稿者は様々な事件や災害等に関して、自分や身近な人物が遭遇したり、当事者について知っていたりといった証言を繰り返しているが、相互に矛盾があるなど信憑性は低い。

ファクトチェック

2025年8月20日、兵庫県神戸市のマンションで女性が殺害される事件が発生し、その後容疑者が逮捕された(参照)。容疑者は2022年にも別の事件を起こして有罪となり、執行猶予中だった(参照)。

検証対象の投稿者は、この容疑者と同じ会社で働いていると主張。容疑者は元々中国籍で別の名前を名乗っており、10年ほど前に日本に帰化し現在の名前になったとしている。報道によれば、容疑者は神戸市と千葉県の会社を経て、2023年5月から現在の東京都内の会社で働いている。

様々な事件で関係者を名乗る不自然な証言

しかし、容疑者の出身は大阪府と報じられていて、元々中国籍だったというような情報は確認できない。投稿者の証言を裏付けるような証拠は示されておらず、証言の信憑性を確認することはできない。

投稿者は過去にも、話題になった事件や災害等に遭遇した、自分や身近な人物が当事者であるなどといった証言を不自然に繰り返し投稿している。

例えば、2025年4月には、俳優の広末涼子さんが看護師の女性への暴行容疑で逮捕された際に、自分が被害者の看護師であると主張。「事故の原因が無理な右折が原因だったためネタで 『Majiで骨折する5秒前でしたよw』 と言ったところ急に彼女に殴られました」といった荒唐無稽な説明をしている。なお、広末さんの事故は高速道路上での追突によるものであり、「無理な右折が原因」ではない(参照)。

2025年4月8日の投稿

一方、同年6月には殺人事件の容疑者の夫だと自称していて、上記の投稿と性別が矛盾している。

2025年6月2日の投稿

そのほかにも、5月に侵入事件が起きた東京都立川市の小学校に子供が通っているとし、7月には遺体で見つかった俳優の遠野なぎこさんの自宅(東京都豊島区:参照)の隣に住んでいると主張。それにもかかわらず、同月に北海道福島町に「何十年も住んで」いると矛盾した投稿をし、さらにその2週間ほど後には神奈川県横浜市の窃盗事件被害宅の隣に住んでいるとも述べている。

左上から右へ順に、2025年5月8日、7月4日、7月12日、7月28日の投稿(クリックで拡大)

このほかにも、この数カ月の間に様々な事件や災害について、自身が居合わせていた、容疑者を知っているなどといった内容の証言を繰り返している。ほとんどは容疑者が外国人であるなどとして外国人批判につなげる内容だ。しかし、短期間にこれほど多くの事件や災害に遭遇したり関係したりしたというのは極めて不自然で、一連の投稿の信憑性は低い。

2025年4月~6月の投稿(左上から右へ投稿日順。クリックで拡大)

2025年7月~8月の投稿(左上から右へ投稿日順。クリックで拡大)

なお、検証対象の投稿に付与されたコミュニティノートによれば、他にも3つの事件に関する投稿をしていたようだが、これらの投稿はいずれも削除されており現在確認できない。

検証対象の投稿に対するコミュニティノート### 信憑性無く根拠不十分

以上のように、この投稿者は以前から様々な事件や災害について不自然な投稿を繰り返しており、検証対象の投稿も事実の確認ができないことから、「根拠不十分」と判定する。

なお、本件に関しては、日本ファクトチェックセンター(JFC)も同様のファクトチェック記事を公開している。

YouTubeや他SNSでも拡散

検証対象のX投稿は本校執筆現在約6200リポストされているが、この投稿を根拠として扱ったYouTube動画や、さらにそれを引用したまとめサイト「Tweeter Breaking News-ツイッ速!(以下ツイッ速)」の記事も広く拡散されている。

YouTube動画(約1.3万回再生)、ツイッ速公式アカウントのX投稿(約2100リポスト)、一般ユーザーのX投稿(約1万リポスト)。アカウント名部分のぼかし加工は筆者による

その他にも、検証対象の投稿を根拠として引用した同様の投稿は、X、Threads、Instagramなどでも拡散されている。

いずれも一般ユーザーによる、X(約3600リポスト)、Threads(約1700再投稿)、Instagram(約2300いいね)の投稿

このように、Xに端を発した信憑性の低い情報は、SNSの垣根を越えて広まっている。こうした匿名個人の証言に基づく情報は、たとえ虚偽であってもそれを完全に否定できる証拠を挙げるのは難しい。情報が信用に足るものかどうか、冷静に見極めることが必要だ。

(大谷友也)