なぜビットコインやイーサリアムは「最高値」を更新し続けるのか? 暗号資産が急成長する時代に持つべき知識と思考とは
「ビットコインがまた、最高値を更新した」そんなニュースが日々流れ、暗号資産、NFT、ステーブルコインの情報収集をしている人も増えたであろう昨今。米国ではトランプ氏が「暗号資産の首都」を掲げ、日本でもWeb3が国家戦略に位置付けられていますが、正直なところ「何が起こっているのかよくわからない」人も多いはずです。安宅和人氏、渡辺創太氏、平将明氏、落合陽一氏など、実務家13名の視点からWeb3・暗号資産の本質と可能性を多面的に描いた『Web3・暗号資産 13人の未来予測 ブロックチェーン・ビットコイン・投資動向まで、時代を乗り切る価値革命の地図とコンパス』を編著した神本侑季さんに、Web3・暗号資産の現状と未来を聞きました。
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■Web3・暗号資産のブームは一過性だったのか?
暗号資産の値動きは激しく、専門用語も多いため、正直なところ「何が起こっているのかよくわからない」「危ない、怪しいのではないか?」そんな声も根強くあります。そもそもWeb3という言葉は、技術・金融・経済・社会制度といった多領域にまたがる概念であるがゆえに、断片的な話題やニュースを追っているだけでは、本質的な理解にはなかなかたどり着けません。
実際のところ、Web3のすべてを完全に語り切れる人は、誰もいないかもしれません。かかわる領域によって定義や視点が異なり、その一つひとつの領域もまた広く、専門性が高いためです。そして、まさにそこに情報格差が生まれ、Web3に触れたことのある人とそうでない人の間に、大きな理解の壁が築かれているのが現状です。
しかし今、私たちはその壁を越えていく「転換点」の真っただ中にいます。
2025年、世界の暗号資産ユーザーはついに人口に対する普及率10%を突破しました。Statista の推計によれば、2024年の7・41%から2025年には11・02%へと急上昇。かつてスマートフォンやインターネットがそうであったように、この10%という水準はネットワーク効果と社会受容により成長が指数関数的に加速し、「ニッチ」から「メインストリーム」へ移行する転換点=ティッピングポイントであると考えられています。
米国ではすでに成人の28%(約6500万人)が暗号資産を保有し、非保有者の14%が購入を検討中、保有者の66%が買い増し意向を持っています。さらに、成人の約3人に2人が暗号資産を認知しており、「一部の投機的な層のもの」というイメージを脱しつつあることがわかります。日本国内でも、2025年6月時点での暗号資産取引口座数は1258万口座に達し、人口の1割に近い水準にまで拡大しました。
こうした数値は、Web3や暗号資産が単なる一過性の話題ではなく、すでに未来の社会基盤の一部へと移行し始めていることを裏付けています。この流れは不可逆的で、いずれ、「インターネット」や「クラウド」という言葉をわざわざ口にしなくなったように、ブロックチェーンやWeb3という言葉を特別に意識せず、誰もが自然にその技術や仕組みを使いこなす時代が訪れるでしょう。
■インターネットの進化の最新形態としてのWeb3
視点を変えて、「Web3」の背景となる基礎的な情報を見ていきましょう。そもそもWeb3の「3」とはなにを示しているのでしょうか。
インターネットのこれまでの歴史を振り返ると、おおよそ10〜15年ごとに3つの大きなフェーズに分けることができます。
・ 最初期のWeb1(1990年代〜2000年代初頭)は、インターネット上で「読む(Read)」ことを可能にし、人々の情報へのアクセスを民主化した時代です。無数のニュースサイトや企業のホームページなどが作られ、ヤフーやグーグルが検索機能等を提供し、一方向の情報発信・閲覧に革命を起こしました。
・ その後のWeb2(2000年代中盤〜2010年後半)では、「書く(Write)」ことが可能になり、誰もがインターネット上で情報を発信し、SNSや動画共有サービスなどを通じて他者とつながることができるようになりました。Facebook、Twitter(現X)、YouTube、Instagram などの登場により、「双方向性」や「ユーザー参加型」のインターネットが急速に広がった一方で、個人のデータや経済的利益は一部の巨大プラットフォームに集中し、自由や自立がむしろ制約されるという構造も生まれました。
・ こうした構造へのアンチテーゼとして登場したのが、Web3(2010年後半以降)です。Web3はインターネットに、「所有する(Own)」という新たな軸を加えました。ユーザーが特定のトークンを持つことで、そのサービスの利用者であると同時に、ガバナンスや価値創出に参加することができ、サービスの価値が高まれば収益を獲得するインセンティブを持つことができるのです。Web1、Web2の体験とまったく異なり、サービスとコミュニティ、投資と参加が一体となった新しい経済圏が生まれました。
改ざんが極めて困難な形で、情報を共有・記録できる分散型のデータベースを実現する「ブロックチェーン技術」を基盤とするこの新しいインターネットは、時代背景とマッチした「分散化」「透明性」「ユーザー主権」といった価値観を技術と組み合わせることで、社会や経済の信頼のあり方そのものを再構築しようとしています。
その意味で、Web3は単なる技術進化ではなく、「インターネットとは本来どうあるべきか」という問いへの応答であり、人々の情報へのアクセスに変革を起こしたWeb1、Web2の「情報革命」に続いて、デジタル上の価値の創造と流通を自由にした「価値革命」として捉えることができます。
2009年にビットコインが登場して以降、暗号資産をはじめとするWeb3のトークン経済圏は急速に拡大しています。たとえば2015年頃に登場したイーサリアムは、条件に応じて自動で送金や取引が執行できる「スマートコントラクト」という機能を備え持ち、「プログラム可能な資産」という概念を広めました。これにより、誰もが独自のトークンを発行し、自分たちの経済圏をつくることが可能になりました。
2017年には、ICO(Initial Coin Offering:アイシーオー)と呼ばれるトークン発行による資金調達がブームになり、Web3の市場全体の時価総額が急速に拡大する、1回目の「バブル」が起こりました。2020年後半から22年頃にブームとなったDeFi(分散型金融)やNFT、DAO(分散型自律組織)などの新しいユースケースの台頭を代表とする2回目のバブル時には、仲介者の存在しない分散型の価値移転やデジタル上のコンテンツや権利等のデータ「所有」の概念が現実のものとなり、イーサリアムに対抗するブロックチェーンなども多く登場。金融やゲーム、ファンコミュニティなど幅広い分野でWeb3サービスの開発が進みました。
■思想から技術への期待―そして急成長を続けるWeb3・暗号資産市場
2021年には新型コロナウイルス感染症の影響に対応した世界的な金融緩和政策によりもたらされた潤沢な資金供給がさまざまな資産への投資に流れてきたことも相まって、暗号資産の市場時価総額は一時当時最大の約3兆ドルに到達。この時期、ビットコインやWeb3という言葉は一般の生活者にも届く朝のニュースなどでも扱われることもありました。もちろんこの過程では、過熱と反動を繰り返し、いくつもの「バブル」が弾けてきましたが、それでもなお、技術や制度の成熟とともに、Web3の経済圏は長期的に拡大を続けてきました。
その後も進化は続きます。2024年には米国でビットコイン現物の上場投資信託(ETF)が初めて承認され、再登場したトランプ米大統領政権での暗号資産への圧倒的に積極的な政策への期待も相まって、2025年7月時点で暗号資産市場全体の時価総額は史上最高値の約4兆ドルに達しました。これはなんと、フランスや英国の株式市場規模に匹敵します。
また、ブラックロックやフィデリティなど世界的な金融機関の参入によりビットコインETFへの資金流入は金のETFを凌ぐ規模に達しました。ビットコイン単体でも市場規模は約2・3兆ドルに達し、これはアップルやマイクロソフトに迫る規模で、グーグル(アルファベット)を上回り、今では「世界5位の資産」に位置づけられ、「デジタル・ゴールド」としての存在感を確立しています。
加えて、小売りやeコマースでも決済手段としての導入が進み、たとえば、一部の米ファストフードチェーンではビットコインによる支払いを受け付けており、米国ではペイパル(PayPal)が2024年にムーンペイ(MoonPay)と提携し、ユーザーがより簡単に暗号資産を購入できるようになりました。日本でもメルカリが売上金をビットコインに変えたり、ビットコインで商品を購入できたりするサービスを開始しています。
東南アジアやアフリカなど銀行インフラと自国通貨が脆弱な地域では、ドルと連動し価格の安定した「ステーブルコイン」の利用が拡大し、スマートフォンやデジタルデバイス上のWeb3ウォレットを通して24時間365日、国境を超えてもリアルタイムに近いスピードで、手数料が圧倒的に安い送金・支払いの普及が急速に進んでいます。また不動産や債券、金(ゴールド)などの現実世界に存在する資産をブロックチェーン上でデジタル化する、RWA(Real World Asset:現実資産)のトークン化市場も国内外で拡大を続けています。
さらに、Web3の主要企業の株式上場もいくつかケースが出てきました。2021年には Coinbase(世界最大級の暗号資産取引所)がナスダックに上場、2024年には Coincheck(国内最大級の暗号資産取引所)の親会社がSPACで同じくナスダックに上場、2025年には Circle 社(ステーブルコインUSDCを発行)がニューヨーク証券取引所に上場するなど、Web3事業者はもはや一部の技術者のものではなく、金融インフラの中核を支え得る、パブリックの存在として社会に認知されるようになりました。
ビットコインが誕生してから、わずか15年弱。このように、Web3は歴史上類を見ない脅威的な早さでさまざまな成長をとげ、社会・経済の基盤に統合されつつある巨大なイノベーションなのです。その意味で、価格変動のみに目を奪われるのではなく、その背後にある技術や制度の進化、そして「お金」や「資産」のデジタル化がもたらす構造的な変化を理解することが重要です。
こうした変化をより体系的に整理し、未来を展望するために、今回私が編著した『Web3・暗号資産の未来予測2025』(朝日新聞出版)には、国内外の有識者が最新の知見を寄稿しています。Web3の本質をとらえ、これからの社会やビジネスにどう影響していくのかを考える一助として、ぜひ手に取っていただければ幸いです。
神本侑季
N.Avenue株式会社/CoinDesk JAPAN 代表取締役社長
2013年にヤフー株式会社(現・LINEヤフー株式会社)に入社。メディア・広告の事業開発に従事した後、出資先の米ユニコーンスタートアップ企業と共に日本での事業立ち上げを経験。2018年、同社の傘下でWeb3情報サービスを運営するN.Avenue株式会社を設立し代表取締役社長に就任。その後同社をグループからスピンアウトさせ、現在までWeb3メディアCoinDeskの公式日本版や法人会員制Web3ビジネスコミュニティN.Avenue clubを運営。