配当利回り1位5.94%「新NISA2025人気の高配当株ベスト30」ネット証券5社データ集計
配当狙いは新NISAの王道。主要ネット証券5社の人気ランキングから予想配当利回り4%以上の銘柄だけを抽出し、買い付け金額順に並べた。【本記事はアエラ増刊「AERA Money 2025夏号」から抜粋しています】
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ブラックロック・ジャパンの大型株運用チームを率いる重川利枝さんは、2025年1〜3月の新NISA高配当株ランキングを見ながら、長期目線で注目の業種として金融と建設を挙げた。
キーワードはインフレ。日銀が政策金利を段階的に引き上げることで、金利のある世界が戻ってくる。
「金融株には明らかなプラスです。米国など海外は利下げ局面に入っていますが、日本はまだ利上げモードです。先行きの政策金利引き上げを期待できる点が人気を呼んでいるようです」
ランキングの中で、金融株は8位のMS&ADインシュアランスグループホールディングス(予想配当利回り4.45%)、21位の三井住友トラストグループ(4.08%)、25位の野村ホールディングス(5.66%)、26位の大和証券グループ本社(4.31%)、28位のマネックスグループ(5.59%)。
■建設が工事値上げ
建設はこれまで注目度が薄かった気がするが。
「不動産市況は崩れていない一方で、職人が足りない、建設資材は高騰する。大型プロジェクトの延期やキャンセルが続出しています。
建設会社が工事価格を引き上げられるようになっているんです。今回こそ日本株の動きは本物だと、海外投資家は評価しています」
海外顧客のリアルな声を聴く重川さんの実感である。
ランキングの中で建設株は13位の積水ハウスと、30位の大林組だ。
企業が製品・サービスにコストに見合った価格を設定し、顧客が受け入れる。賃金も5%上がる。インフレ下でそんな流れが定着すれば企業の利益率改善に近づく。
「今まで数%だった営業利益率が平均8%まで上昇しています」
ただ、PBR(株価純資産倍率)1倍割れの銘柄もまだ多い。
「同一業種でも勝ち組と負け組があり、インフレがプラスといえるのは勝ち組企業の話です。投資家の選択眼が試されます」
そういえば、2025年2月に「グローバルX プライシングパワー・リーダーズ-日本株式ETF」が上場していた。
インフレ時代を勝ち抜く、価格競争力のある銘柄が対象だ。組み入れ銘柄が個別株投資の参考になりそう。
「日本株の上昇サイクルはまだはじまったばかりです」と重川さんは最後に言っていた。
■さらに高利回りを狙う
楽天証券経済研究所シニアマーケットアナリストの土信田雅之さんは、今回の新NISA高配当株ランキングを見て「こんな投資アイデアがあります」と楽しそうに切り出した。
「11位に不動産大手のヒューリックが入ってますね。予想配当利回りは4.10%です。
この会社がスポンサーのヒューリックリート投資法人は分配金利回り5.71%で、ヒューリック本体より高い。
不動産会社が運営しているREIT(不動産投資信託)って高利回りのことが多いんです。REITも新NISAで個別株同様に買えます」
配当利回り重視の投資家にとって実用的なアドバイスだ。
「ランキング1位のJT、2位のINPEX、5位のソフトバンク、6位の武田薬品工業が高配当株の四天王セットです」
前回(2024年1〜8月)の調査でランクインしていたのに、今回は消えた銘柄も少なくない。日産自動車や安藤ハザマなどだ。
日産自動車は2025年3月期末を待たずに最終損益の赤字転落予想を発表しており、高配当どころの話ではない。
安藤ハザマはどうしたのか。
「株価が上がったので配当利回りが下がったんですね。新NISAで買おうと思いながら、結局は株価の安い局面を逃した投資家が少なからずいたでしょう」
安藤ハザマは2024年8月の安値1039円から2025年5月12日の高値1482円まで上昇。2月13日の大陽線がまぶしい。
鉄鋼株も目立つ。日本製鉄、JFEホールディングス、神戸製鋼所の高炉大手3社がそろってランクインしている。
「量では中国に勝てませんが、日本の鉄は高品質で、幅広い産業分野にニーズがあります」
配当利回りの数字だけでなく、配当の裏づけとなる企業の競争力も銘柄選びのポイントという。
今回のランキング表には入っていないが、配当好きな投資家が注目したい銘柄として日用品最大手の花王を挙げた。花王の配当利回りは2%台半ばと、東証上場企業の平均をやや上回る程度だが。
「利回りは地味ですが、連続増配記録を更新中で、今12月期で36年連続。業績も伸びています。
米国のP&Gやジョンソン・エンド・ジョンソンみたいな銘柄です。トランプ関連で全体調整局面は何度も来そうですから、花王がツレ安したら拾うのはアリ」
土信田さんはいう。
「配当利回り2%程度でも、長期保有すれば自分の買値に対する配当利回りは上がります。
36年も連続増配しているのですから、花王側も記録を途切れさせたくないでしょう。そういう銘柄は新NISAと好相性です」
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取材・文/中島晶子(AERA編集部)、大場宏明
重川利枝(しげかわ・りえ)ブラックロック・ジャパン ファンダメンタル株式運用部長 大型株式運用チーム ディレクター。フィデリティ投信で海外の年金向け運用、日本株運用などに従事。2019年6月より現職。大型株運用チームのヘッド
土信田雅之(どしだ・まさゆき)楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト。国内証券会社を経て2011年より現職。日本株、中国株に強くデータ分析が得意。アジア留学経験があり新興国株も
編集/綾小路麗香、伊藤忍
『AERA Money 2025夏号』から抜粋