【65歳以上の懐事情】「貯蓄2000万円以上」の割合は何パーセント?二人以上世帯《貯蓄の平均値・中央値》はいくら?
- 《年金制度改正》老後の暮らしにどう影響する?
- 年金制度改正の全体像《主な見直しポイント》をチェック
- 【65歳以上の懐事情】無職夫婦世帯「平均的な家計」はどうなっている?
- 65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支(2024年)をチェック
- 【65歳以上の懐事情】二人以上世帯「貯蓄の平均値・中央値」はいくら?
- 世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄現在高(二人以上世帯)平均・中央値
- 世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄現在高の金額別世帯分布 (二人以上世帯)
- 【65歳以上の懐事情】無職夫婦「平均貯蓄額」2019年~2024年でどう変わった?
- 【65歳以上の無職夫婦世帯】平均貯蓄額の推移をチェック
- 【2025年度の公的年金】2024年度よりも2.7%増額改定!年金額例をチェック
- 2025年度の年金額例
- 【老後に受給する公的年金】国民年金・厚生年金の「平均月額」はいくら?
- 「国民年金」「厚生年金+国民年金」全体・男女別《平均月額と個人差》をチェック
- 老後の生活費が不足しないよう「必要な貯蓄額」を確認しておきましょう
《年金制度改正》老後の暮らしにどう影響する?
【65歳以上の懐事情】「貯蓄2000万円以上」の割合は何パーセント?二人以上世帯《貯蓄の平均値・中央値》はいくら?
長らく続く物価高により、生活費が圧迫されやすくなっているため「思うように貯蓄ができていない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今の収入をもとに「今の生活費」だけでなく「老後の生活費」も貯めていく必要があります。
なぜなら、年金だけでは老後生活を過ごすことが難しい傾向にあるからです。
では、今の65歳以上のシニア世代の方は、どのくらい貯蓄ができているのでしょうか。
この記事では、65歳以上のシニア世帯の平均的な生活費や貯蓄額、年金月額をご紹介します。
また「貯蓄2000万円以上」の割合は何パーセントなのかも解説しますので、ぜひ参考にしてください。
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
《年金制度改正》老後の暮らしにどう影響する?
2025年6月13日、年金制度改正法が成立しました。
働き方や家族構成などの多様化に合わせた年金制度の整備、私的年金制度の拡充などにより、老後の暮らしの安定や、所得保障機能の強化に繋げていくことが主な狙いです。
今回の改正の主な見直しポイントを整理していきましょう。
年金制度改正の全体像《主な見直しポイント》をチェック
年金制度改正の全体像《主な見直しポイント》
社会保険の加入対象の拡大
・短時間労働者の加入要件(賃金要件・企業規模要件)の見直し(年収「106万円の壁」撤廃へ)
在職老齢年金の見直し
・支給停止調整額「月62万円」へ大幅緩和(2025年度は月51万円)
遺族年金の見直し
・遺族厚生年金の男女差を解消
・子どもが遺族基礎年金を受給しやすくする
保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ
・標準報酬月額の上限を、月65万円→75万円へ段階的に引き上げ
私的年金制度
・iDeCo加入年齢の上限引き上げ(3年以内に実施)
・企業型DCの拠出限度額の拡充(3年以内に実施)
・企業年金の運用の見える化(5年以内に実施)
このような見直しポイントからも、公的年金制度が現役世代の働き方やライフプランに深く関係していることが分かります。
現在、老齢年金の受給開始年齢は原則65歳。しかし、65歳以降のシニアの生活には個人差、世帯差があるでしょう。
完全にリタイアして年金生活をスタートする人もいれば、まだまだ現役として働き続ける人、さらには年金を受け取りながら何らかの仕事を続ける人など、その暮らし方はさまざまです。
【65歳以上の懐事情】無職夫婦世帯「平均的な家計」はどうなっている?
総務省「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、標準的な65歳以上無職夫婦世帯の家計収支は、ひと月「約3万4000円の赤字」となりました。
65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支(2024年)をチェック
65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支(2024年)
毎月の実収入:25万2818円
■うち社会保障給付(主に年金):22万5182円
毎月の支出:28万6877円
■うち消費支出:25万6521円
・食料:7万6352円
・住居:1万6432円
・光熱・水道:2万1919円
・家具・家事用品:1万2265円
・被服及び履物:5590円
・保健医療:1万8383円
・交通・通信:2万7768円
・教育:0円
・教養娯楽:2万5377円
・その他の消費支出:5万2433円
■うち非消費支出:3万356円
・直接税:1万1162円
・社会保険料:1万9171円
毎月の家計収支
・3万4058円の赤字
この世帯の場合、毎月の収入は平均で25万2818円ですが、そのうち約9割にあたる22万5182円が公的年金などの社会保障給付で占められています。
一方、毎月の支出は合計28万6877円にのぼります。内訳は、食費や光熱費といった生活費が25万6521円、税金や社会保険料などの非消費支出が3万356円です。
このため、収入だけでは生活費をまかなえず、毎月3万4058円の赤字が発生しています。
多くの世帯がこの不足分を、貯蓄を取り崩すことでカバーしているのが実情です。
ただし、この家計調査のデータを見る上で、注意すべき点がいくつかあります。
まず、高齢者世帯は持ち家率が高いため、家計調査の住居費は1万6432円と低く抑えられています。
もし賃貸住宅に住んでいる場合は、この金額では済まない可能性が高いでしょう。
また、この支出には介護に関連する費用が含まれていません。
将来、介護が必要になった際には、さらに家計の負担が増すことになります。
さらに、趣味や旅行、そして「孫費用」といった、いわゆる「ゆとりある老後」のための費用を確保したいと考える人も多いでしょう。
現状の家計収支を考えたとき、ゆとりある老後のための「プラスアルファ」の資金を確保するためには、現役時代からの長期的な資産づくりへの取り組みが求められていると言えそうです。
【65歳以上の懐事情】二人以上世帯「貯蓄の平均値・中央値」はいくら?
総務省の「家計調査報告(貯蓄・負債編)2024年(令和6年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」から、65歳以上の世帯主がいる二人以上世帯の貯蓄額データを確認します。
【65歳以上の懐事情】二人以上世帯「貯蓄の平均値・中央値」はいくら?
世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄現在高(二人以上世帯)平均・中央値
・平均値:2509万円
・貯蓄保有世帯の中央値:1658万円
平均値は一部の富裕層により引き上げられる傾向があるため、より実態に近い「貯蓄保有世帯の中央値」に注目することが大切です。この中央値は1658万円となり、平均値と比べるとかなり下がります。
貯蓄額の世帯分布についても見てみましょう。
世帯主が65歳以上の世帯の貯蓄現在高の金額別世帯分布 (二人以上世帯)
先述のグラフから、貯蓄額ゾーンごとの世帯数も見ていきます。
・100万円未満:8.1%
・100万円~200万円未満:3.6%
・200万円~300万円未満:3.1%
・300万円~400万円未満:3.6%
・400万円~500万円未満:3.3%
・500万円~600万円未満:3.3%
・600万円~700万円未満:2.9%
・700万円~800万円未満:2.8%
・800万円~900万円未満:3.3%
・900万円~1000万円未満:2.5%
・1000万円~1200万円未満:4.8%
・1200万円~1400万円未満:4.6%
・1400万円~1600万円未満:5.1%
・1600万円~1800万円未満:3.3%
・1800万円~2000万円未満:3.3%
・2000万円~2500万円未満:7.4%
・2500万円~3000万円未満:5.8%
・3000万円~4000万円未満:9.4%
・4000万円~:20.0%
富裕層が平均値を引き上げる一方で、貯蓄額は世帯によって大きな偏りが見られます。
世帯全体の42.6%が2000万円以上の貯蓄を保有しており、そのうち29.4%は3000万円を超えています。
その一方で、貯蓄額が200万円未満の世帯も11.7%存在し、貯蓄格差は顕著です。
【65歳以上の懐事情】無職夫婦「平均貯蓄額」2019年~2024年でどう変わった?
次は、世帯主が65歳以上の「無職世帯」に絞って、貯蓄額の推移や資産種類の内訳を見てみましょう。
【65歳以上の無職夫婦世帯】平均貯蓄額の推移をチェック
【65歳以上の無職夫婦世帯】平均貯蓄額の推移
・2019年:2218万円
・2020年:2292万円
・2021年:2342万円
・2022年:2359万円
・2023年:2504万円
・2024年:2560万円
世帯主が65歳以上の無職世帯(二人以上世帯)の貯蓄額は、2019・2020年は2200万円台でしたが、2021年に2300万円台、2023年には2500万円を超えたあと、2024年ではさらに2560万円に到達しています。
なお、2024年における貯蓄の種類別内訳は以下の通りです。
・定期性預貯金:859万円(33.6%)
・通貨性預貯金:801万円(31.3%)
・有価証券:501万円(19.6%)
・生命保険など:394万円(15.4%)
・金融機関外:6万円(0.2%)
【2025年度の公的年金】2024年度よりも2.7%増額改定!年金額例をチェック
公的年金は、物価や賃金の変動を踏まえ、年度ごとに改定されるルールです。
公的年金は、偶数月の15日(※)に、前月までの2カ月分が合算で支払われます。
また、毎年度の改定率は、6月に支給される「4月分」の年金額から適用されています。
※15日が土日・祝日の場合は、直前の平日に前倒しされます。
2025年度の年金額例
2025年度の年金額例
・国民年金(老齢基礎年金(満額)):6万9308円(1人分※1)
・厚生年金:23万2784円(夫婦2人分※2)
※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額6万9108円(対前年度比+1300円)です。
※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。
公的年金の年金額は、3年度連続のプラス改定となりましたが、「マクロ経済スライド(※)」の発動により改定率は物価上昇率を下回っています。
つまり、物価上昇には追い付けず、年金は実質的に「目減り」している状態です。
※マクロ経済スライドとは:「公的年金被保険者(年金保険料を払う現役世代の数)の変動」と「平均余命の伸び」に基づいて設定される「スライド調整率」を用いて、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するしくみ
【老後に受給する公的年金】国民年金・厚生年金の「平均月額」はいくら?
厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、65歳以上(※)の各年齢における平均年金月額は、国民年金のみの受給権者で5万円台、厚生年金(国民年金部分を含む)の受給権者で14万円台~16万円台です。
ただし実際の受給額は、現役時代の年金加入状況により個人差が出ます。
※60歳~64歳までは、繰上げ受給を選択した人、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢の引上げにより、定額部分のない、報酬比例部分のみを受け取る人の年金額となるため、平均年金月額は65歳以降よりも低めです。
「国民年金」「厚生年金+国民年金」全体・男女別《平均月額と個人差》をチェック
「国民年金」「厚生年金+国民年金」全体・男女別《平均月額と個人差》をチェック
60歳~90歳以上の全受給権者の平均年金月額は下記の通りです。
国民年金(老齢基礎年金)
・〈全体〉平均年金月額:5万7584円
・〈男性〉平均年金月額:5万9965円
・〈女性〉平均年金月額:5万5777円
厚生年金+国民年金
・〈全体〉平均年金月額:14万6429円
・〈男性〉平均年金月額:16万6606円
・〈女性〉平均年金月額:10万7200円
日本の公的年金は「2階建て構造」と呼ばれており、
・国内在住の20歳から60歳未満の人全員が加入する「国民年金(1階部分)」
・会社員などが上乗せで加入する「厚生年金(2階部分)」
という、2つの年金制度から成り立つものです。
現役時代の働き方によって、老後の年金受給額は大きく変わります。
国民年金のみに加入していた人は月5万円台が平均であるのに対し、厚生年金にも加入していた人は平均14万円台と、大きな差があります。
また、厚生年金受給権者の中でも男女差が見られ、男性が平均16万円台である一方、女性は10万円台です。
これは、厚生年金の加入期間や収入が年金額に反映されるため、長く働き、収入が多かった人ほど年金額が増える傾向にあるためです。
老後の生活費が不足しないよう「必要な貯蓄額」を確認しておきましょう
ここまで、65歳以上のシニア世帯の平均的な生活費や貯蓄額、年金月額をご紹介しました。
また「貯蓄2000万円以上」の割合は何パーセントなのかも解説しました。
貯蓄が2000万円以上ある世帯は、世帯全体の42.6%を占めています。
その一方で、貯蓄が200万円未満の世帯は11.7%となっており、今のシニア世代は保有している貯蓄額が二極化しているようです。
老後必要な生活費はライフスタイルによって異なりますが、「どれくらい貯蓄があれば足りるのか」あらかじめ把握しておくことが大切です。
参考資料
・厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
・総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」
・総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2024年(令和6年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」
・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします~年金額は前年度から 1.9%の引上げです~」
・日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」