【シニア・高齢者は見逃さないで!】申請すれば国からもらえる給付金・手当5選!高齢者対象の公的支援にはどんなものがある?
「年金生活者支援給付金」の新たな対象者向け→9月頃に「請求書」が発送!
【シニア・高齢者は見逃さないで!】申請すれば国からもらえる給付金・手当5選!高齢者対象の公的支援にはどんなものがある?
高齢者や収入が限られている方を対象とした給付には、申請しないと受け取れないものが少なくありません。
夏休みやお盆で出費が増える8月は、家計を見直す良いタイミングでもあります。こうした時期に、公的支援制度の存在を知っておくことは、今後の生活を考える上で大きな助けになるかもしれません。
この記事では、申請が必要な支援制度の中から、代表的で利用しやすいものをいくつか紹介します。「自分も対象かも?」と思った方は、この機会にぜひチェックしてみてください。
※LIMOでは、個別の相談・お問い合わせにはお答えできません。
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
【申請しないともらえない】国から支給される「給付金、補助金、手当」とは?
公的年金(老齢年金・障害年金・遺族年金)は、私たちの生活に欠かせない収入源ですが、自動的に振り込まれるわけではなく、受給には必ず申請手続きが必要です。
また、国や自治体が実施する「給付金・補助金・手当」も同様に、申請しなければ受け取れない仕組みになっています。
中には、申請期限を過ぎると受給できなくなったり、減額されるものもあるため、対象となる場合は忘れずに申請し、必要な支援を受け取ることが大切です。
今回は、シニア世代を対象にした「申請しないともらえない」公的支援金を5つ紹介します。
申請しないともらえない「年金関連」の公的なお金 2選
まず、シニア世代向けの「申請が必要な」公的支援のうち、公的年金と特に関わりの深い2種類について説明します。
1:年金生活者支援給付金
年金生活者支援給付金は、老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金を受給している方のうち、所得が一定基準未満の方を対象とした制度です。
ここでは、その中でもシニア世代との関わりが最も大きい「老齢年金生活者支援給付金」に焦点を当てて解説します。
【老齢年金生活者支援給付金の支給要件】
・65歳以上の老齢基礎年金の受給者
・同一世帯の全員が市町村民税非課税
・前年の公的年金等の収入金額※1とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は88万9300円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は88万7700円以下※2である。
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で78万9300円を超え88万9300円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で78万7700円を超え88万7700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
2025年度の「老齢年金生活者支援給付金」の基準額は、2024年度から140円引き上げられ、月額5450円となりました。
年金生活者支援給付金の給付基準額
ただし、この金額はあくまで基準であり、実際の支給額は月額5450円をもとに保険料納付済期間に応じて算出され、以下①と②の合計額として支給されます。
・①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5450円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
・②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1551円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480月
これまで特に年金を受給していない方で、65歳に達したときに年金生活者支援給付金を受け取る場合、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金事務所に「年金生活者支援給付金請求書」を提出する必要があり、通常、65歳になる3カ月前をめどに、年金請求書(事前送付用)が送付されます。
なお、転居など何らかの事情で受け取れなかった場合は、日本年金機構のWebサイトでダウンロードも可能です。
2:加給年金
年下の配偶者や子どもを扶養している年金受給者にとって重要なのが「加給年金」です。
これは、年金における家族手当のような役割を持つ制度です。
対象となるのは、厚生年金に20年以上加入している人が、65歳(または定額部分の支給開始年齢)に達した時点で、特定の「配偶者」や「子ども」を扶養している場合です。
加給年金の対象者と年齢制限
・配偶者:65歳未満
・子:18歳到達年度の末日までの間の子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子
※ただし、配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上あるもの)、退職共済年金(被保険者期間が20年以上あるもの)を受給する権利がある場合、または障害厚生年金、障害基礎年金、障害共済年金などを受けている場合、配偶者への加給年金は支給されません。
加給年金の加給年金額
参考までに、2025年度の「加給年金」の年金額(年額)は以下のとおりです。
・配偶者:23万9300円
・1人目・2人目の子:各23万9300円
・3人目以降の子:各7万9800円
老齢厚生年金の受給者については、生年月日に応じて、配偶者に3万5400円から17万6600円の特別加算が支給されます。
加給年金は、対象の配偶者が65歳に達すると支給が終了しますが、その配偶者が老齢基礎年金を受給している場合、一定の条件を満たせば老齢基礎年金に「振替加算」として上乗せされることがあります。
留意点として、加給年金は年金機構のホームページでダウンロードできる「老齢厚生年金・退職共済年金 加給年金額加算開始事由該当届」をお近くの年金事務所または街角の年金相談センターに提出しなければ支給されません。
申請の際には、原則として次のような書類が必要です。
添付書類
ただし、該当届に本人および加給年金額の対象者の個人番号(マイナンバー)を記載すれば、添付書類を省略できます。
この場合は、「老齢厚生年金・退職共済年金 加給年金額加算開始事由該当届」のみで申請が可能です。
申請しないともらえない「仕事関連」の公的なお金 3選
国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」によれば、年齢階層別の平均給与は50歳代後半で男性712万円、女性330万円ですが、60歳代前半では男性573万円、女性278万円、さらに60歳代後半では男性456万円、女性222万円と大きく減少しています。
シニア層の就労を支援する制度は整備されているものの、60歳を境に収入が下がることは一般的で、再就職も容易ではありません。
そこで本章では、シニア世代の就労に関わる「申請しないともらえない公的支援金」を3つ紹介します。
1:再就職手当(65歳未満)
再就職手当は、早期の再就職を後押しする目的で設けられた制度です。
失業から再就職、または事業開始までの期間が短いほど、支給額が多くなる仕組みになっています。
・対象者:雇用保険受給資格者で基本手当の受給資格がある人
・支給要件:対象者が雇用保険の被保険者となる、または事業主となって雇用保険の被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給
・手当の額:就職等をする前日までの失業認定を受けた後の基本手当の支給残日数により下記のとおり給付率が異なる
再就職手当の金額は、所定給付日数の残日数によって決まります。
具体的には、所定給付日数の3分の1以上を残して再就職した場合は残日数の60%、3分の2以上を残して再就職した場合は残日数の70%が支給されます。※1円未満の端数は切り捨てとなります。
参考として、下記の表を用いながら具体的なケースを確認していきましょう。
再就職手当の額
【再就職手当の金額】ケース1
・基本手当日額:4000円
・所定給付日数:270日
・就職:受給資格決定日以後50日目
・基本手当の支給残日数は228日(待機期間が受給資格決定日を含めて7日となる)→給付率は70%
・再就職手当=4000円×228日×70%=63万8400円
【再就職手当の金額】ケース2
・基本手当日額:4000円
・所定給付日数:270日
・就職:受給資格決定日以後100日目
・基本手当の支給残日数は178日(待機期間が受給資格決定日を含めて7日となる)→給付率は60%
・再就職手当=4000円×178日×60%=42万7200円
再就職手当は、ハローワークに必要書類を提出することで受給できます。
申請方法は、窓口への持参または簡易書留による郵送で、提出時には以下の書類が必要となります。
・① 再就職手当支給申請書
・② 関連事業主に関する証明書
・③ 雇用保険受給資格者証
・④ 紹介証明書(給付制限の1か月以内に、職業紹介事業者の紹介で採用された方のみ)
・⑤ 失業認定申告書
中には事業主や職業紹介事業者に発行を依頼しなければならないものもあるため、再就職が決まったら早めに準備を始めることをおすすめします。
2:高年齢雇用継続基本給付
高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の方が引き続き就労し、賃金が60歳到達時と比べて減少した場合に支給される制度です。
・対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者
・支給要件:賃金が60歳時到達時の75%未満
・支給額:最高で賃金額の10%相当額(2025年4月より)
・申請先:在職中の事業所を管轄するハローワーク
【早見表】高年齢雇用継続給付
なお、老齢年金を受給しつつ厚生年金に加入し、「高年齢雇用継続給付」を受け取る場合は、在職による年金の一部支給停止に加え、標準報酬月額の最大6%に相当する額も支給停止となるため、この点には注意が必要です。
【高年齢雇用継続給付の支給額&年金支給停止額の例】
以下は60歳到達時の賃金月額が30万円である場合の支給額の例です。※2025年4月1日以降に受給資格を満たした場合の支給額の例
1.支給対象月に支払われた賃金が26万円のとき
賃金が75%未満に低下していませんので、支給されません。
2.支給対象月に支払われた賃金が20万円のとき
低下率が66.67%で64%を超えていますので、支給額は1万4545円です。
3.支給対象月に支払われた賃金が18万円のとき
低下率が60%ですので、支給額は1万8000円です。
高年齢雇用継続給付は、ハローワークへの申請によって受け取れる給付金ですが、原則として事業主を通じて手続きを行います。
ただし、事業主が協力しないなど申請が進まない場合は、被保険者本人が直接提出することも可能です。
必要書類は以下のとおりです。
・高年齢雇用継続給付支給申請書
・払渡希望金融機関指定届
・雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書
・高年齢雇用継続給付受給資格確認票
・支給申請書・賃金証明書の記載内容を確認できる書類
基本的には事業主が用意してくれるため、まずは就職先に手続きを進める依頼をすると良いです。
詳細は厚生労働省「高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について」を確認してみてください。
3:高年齢求職者給付金(65歳以上)
高年齢求職者給付金は、65歳以上で失業した方を対象に支給される制度です。
・対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で失業した人
・支給要件:下記の全ての要件を満たした人
・支給額:被保険者であった期間に応じて次の表に定める日数分の基本手当相当額
高年齢求職者給付金の額
65歳未満の失業手当と異なり、この給付金は一括で支給される点と、他の給付金に比べて、手続きが比較的簡単である点が大きな特徴です。
受給するには、ハローワークで就職希望の意思を示す「求職」の申込みを行い、あわせて離職票を提出します。
公的年金だけに頼るシニア世帯の割合はどれくらい?
厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」から、高齢者世帯(※)の収入の実態を見ていきましょう。
まず、高齢者世帯全体の平均的な所得構成を見ると、収入の63.5%を「公的年金・恩給」が占めており、次いで仕事による収入である「稼働所得」が25.3%、「財産所得」が4.6%となっています。
しかし、これはあくまで全体の平均値です。
「公的年金・恩給を受給している世帯」に絞ると、収入のすべてが「公的年金・恩給」である世帯が43.4%にものぼることがわかっています。
※高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の者が加わった世帯
【総所得に占める公的年金・恩給の割合別 世帯構成】
出所:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
・公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%
このようにシニア全体で見れば稼働所得なども一定の割合を占めていますが、年金受給世帯に絞ると、その半数近くが公的年金収入のみに頼って生活しているという実態が浮き彫りとなっています
シニア向け給付金制度は最新情報をチェックして
今回は、シニア世代が対象の給付金制度について詳しく解説しました。
老後は、現役時代と比べて収入が大きく減少する人がほとんどです。
最近では定年退職後も再雇用などで働く人も増えていますが、現役時代の収入にはなかなか及ばないでしょう。
限られた年金収入でやりくりする高齢者世帯にとって、政府からの給付金はありがたい存在かもしれません。
うっかり請求が漏れていた、ということが無いよう、制度の内容や申請方法についていま一度確認しておきましょう。
参考資料
・厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付~」
・厚生労働省「再就職手当のご案内」
・厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」
・日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
・日本年金機構「か行 加給年金額」
・日本年金機構「加給年金額と振替加算」
・厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況
・厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」用語の説明