アルバイトで月に8万円ほど稼ぐ大学生の息子。「働きすぎると奨学金が減額されるかも」と聞いてビックリ!いくらまでなら稼いでもいい?
アルバイトで月に8万円ほど稼ぐ大学生の息子。「働きすぎると奨学金が減額されるかも」と聞いてビックリ!いくらまでなら稼いでもいい?
わが家の息子は、4月から大学生になりました。給付奨学金をもらいながら大学に通っています。授業料も免除されるので、親の負担が少なくて済んでいます。学生生活が落ち着いてきた頃から、息子は空き時間にアルバイトを始めました。先月のアルバイト代は8万円近くあったそうです。 しかし、息子がクラスの友人に、このアルバイト代のことを話したら、「そんなに稼いでいるのか。働きすぎると、奨学金が減額されるかも」と言われてしまったそうです。それを聞いて、私もビックリしました。 では、いくらまでなら稼いでもいいのでしょうか?
給付奨学金の収入基準
経済的理由で進学をあきらめないように、「高等教育の修学支援新制度」が2020年4月から始まりました。日本学生支援機構の給付奨学金と、授業料・入学金の免除や減免の支援が受けられるものです。世帯収入の基準を満たしていれば、成績だけで判断されず、面接やレポート等で「学ぶ意欲」があると確認されれば、支援を受けることができます。
給付奨学金の世帯収入の基準は、市町村民税の所得割が非課税世帯と、非課税に準じる世帯の学生が対象となっています。
生計維持者と学生本人それぞれの、前年の所得とそれに基づく住民税の情報から「支給額算定基準額」を算出し、その合計金額により給付奨学金の支援区分を満たすかどうかを判断します。
支援区分は、図表1のとおり4つの区分に区切られます。
図表1
学生本人と生活維持者の支給額算定基準額の合計額をAとすると、図表2のようになります。
図表2
計算は、「支給額算定基準額=住民税所得割の課税標準額×6%-(調整控除額+調整額)」です。
当該の世帯が住民税所得割非課税の場合、支給額算定基準額は0です。ただし、住宅ローン減税、寄付金控除(ふるさと納税など)、定額減税によって住民税が非課税になっていたとしても、支給額算定基準額が0にはならないケースがありますので留意しておきましょう。
ここでは、課税証明書に記されている数値を使いますが、記載がない場合は市役所等に確認する必要があります。ただし、政令指定都市の場合は「(調整控除額+調整額)×3/4」という計算式が用いられます。
(出典:独立行政法人日本学生支援機構「進学後(在学採用)の給付奨学金の家計基準」)
支援区分が見直しされると……
毎年10月に支援区分の見直しが行われ、10月から1年間の支援区分を決定します。
そのため、入学時に給付奨学金の対象となっていたとしても、前年度の所得に変動があれば、見直しにより区分が変更されることがあります。また、区分対象外となったら、奨学金の支給が停止されることがあります。
例えば、第1区分で採用された国立大学・自宅生が、見直しによって、第1区分から第2区分になった場合に、どれだけ支援が減少するのかを見てみましょう。
第1区分では、給付奨学金2万9200円×12=35万400円と、授業料免除53万5800円、1年間で88万6200円の支援を受けられます。
これが第2区分になってしまうと、支援が3分の2になります。金額にして約59万円。給付奨学金を合わせれば授業料の負担はありませんが、支援額が約29万少なくなってしまいます。
いくらまでなら稼いでいいの?
それでは、学生がいくらまでなら稼いでも奨学金の給付額に影響がないのでしょうか。
給付奨学金の家計基準は、世帯の所得や世帯の人数により判定がされるので、学生本人の収入だけでは何ともいえません。本人が、住民税非課税枠であっても、生計維持者の所得が増加することで、支援区分から外れることもあります。
しかし、学生本人が住民税非課税であれば、学生本人の稼ぎによって、支給額が減額になるということは避けられます。
住民税所得割が非課税となる所得は45万円、令和7年分より給与所得控除額の最低額が65万円であるので、110万円が非課税ラインです。
もし、住民税所得割の非課税額を超えてしまった場合、勤労学生控除を利用しましょう。給与が、65万円(給与所得控除)+43万円(基礎控除)+26万円(勤労学生控除)=134万円までであれば、うっかり110万円を超えても非課税枠にとどまることが可能です。
また、給付奨学生であるには「適格基準(学業)」もあります。取得単位数、平均成績、出席率が問われます。基準に満たないと、給付の停止、廃止されることに。さらに著しい学業不良は、給付の返還を求められる場合もあります。ご注意ください。
アルバイトに時間を取られ、学業に差し障りが出てしまっては本末転倒です。進学した目的を忘れずに、しっかりと学んでいきましょう。
出典
(※)独立行政法人日本学生支援機構 返さなくていい国の奨学金があります
独立行政法人日本学生支援機構 進学後(在学採用)の給付奨学金の家計基準
独立行政法人日本学生支援機構 給付奨学金の給付額
独立行政法人日本学生支援機構 【アルバイト収入のある学生の皆さん】年収が100万円を超えていたら「勤労学生控除」を忘れずに申告しましょう
国税庁 No.1175 勤労学生控除
総務省 説明資料[個人住民税について]
国税庁 令和7年度税制改正による基礎控除の見直し等について
独立行政法人日本学生支援機構 支給額算定基準額 及び 貸与額算定基準額の計算手順(確認シート)【2025年度版】
執筆者 : 林智慮
CFP(R)認定者