日本株、我が国に「地の利」「時の利」あり…「プロ厳選・国策銘柄5選」
経済産業省は、次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」の国産化に向けた本格支援へ乗り出す方針だ。ペロブスカイト太陽電池は、従来の主流であるシリコン系太陽電池とは一線を画し、「軽量・薄型・柔軟」という特性を持つ新型太陽電池だ。厚さは僅か約1ミリメートルという特長から、これまでは太陽光パネルの設置が困難だったビルの壁面や、マンションのバルコニー、車の屋根など、様々な場所へ設置することが可能になる。
日本にはペロブスカイト太陽電池の技術開発における「地の利」もある。主要な原材料であるヨウ素の産出量はチリに続く世界第2位で、国内での安定調達が可能な点だ。エネルギー自給率が低く、多くを輸入に頼る日本にとって、安定供給に資するエネルギー源の確保は経済安全保障上からも大きな利点となる。
さらには「時の利」も訪れている。政府は脱炭素社会の実現に向け、2026年度から工場や店舗、学校などの事業者に対し、屋根置き太陽光パネルの設置目標策定を義務化する方針を打ち出した。ただし、国内の建造物の多くは、重量負担のかかる従来の太陽電池パネルの設置には適していない。つまり、軽量薄型のペロブスカイト太陽電池の推進を急ぐ必要性が高まっているのだ。
従来のシリコン型太陽電池などと重ねて発電効率を1.5倍程度に高める「タンデム型」(太陽電池を二枚以上重ねたもの)の開発も進められている。複数の電池で太陽光の異なる波長を幅広く吸収することにより、同じ設置面積でも発電量を増やすことが可能になる。官民一体の取り組みにより、技術革新が加速する期待は高まってきたといえそうだ。
伊勢化学工業(4107)
■株価(8月15日時点終値)29140円
日本はヨウ素の産出量で世界第2位を誇るほか、世界の産出量の約3割を占める。伊勢化学工業は、その日本のヨウ素生産の中心的存在であり、世界の生産量の約10%から15%を占めている。ヨウ素の生産地域は極めて限られていることから、世界屈指のヨウ素サプライヤーといってよいだろう。資源の少ない日本にとって、ヨウ素は貴重な地下資源だ。
2025年1~6月期の連結決算では、売上高が前年同期比26%増(192億円)、純利益は同48%増(33億円)で着地した。ヨウ素製品の販売数量が増加したことや、国際市況の堅調な推移が背景だ。利益貢献度に占めるヨウ素事業の重要度は極めて高いことが見て取れる。
ペロブスカイト太陽電池の実用化によって、従来とは比較にならないほど太陽電池市場が大きく伸びる今後の期待は高まるばかりだ。ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて動き出す2025年以降、ヨウ素需要がグローバルに押し上げられた場合、同社に与える利益貢献度はさらに拡大する可能性が高い。2027年の創業100周年に向けて、株主還元の拡大も期待される。

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コニカミノルタ(4902)
■株価(8月15日時点終値)507円
2025年4-6月期の連結営業損益(IFRS)は100.6億円の黒字(前年同期は18.2億円の赤字)を達成し、4年ぶりの最終黒字となった。2026年3月期の通期業績予想も最終損益240億円の黒字見込みだ。前期に実施した約2700人の人員削減を含むグローバルな構造改革や、子会社売却による事業の選択と集中の成果が大きく寄与した格好だ。
事業再建がようやく終わり、再成長へ向けた鍵と位置付けているのが、ペロブスカイト太陽電池向けの保護膜事業だ。コニカミノルタは、有機EL照明製造で培った技術を応用し、水分を一切通さない樹脂製のフィルムを開発し、2026年度からの生産開始を目指している。
軽量で柔軟性が高いことから本命視されるペロブスカイト太陽電池だが、わずかな水分でも性能が落ちるという耐久性の課題を抱えており、耐用年数は従来の太陽電池の半分程度にとどまっている。電池の耐用年数を約2倍の20年に延ばすことで、ペロブスカイト太陽電池の導入コストの回収が容易になり、普及に大きく貢献することが期待されよう。
積水化学工業(4204)
■株価(8月15日時点終値)2753.5円
塩ビパイプなどの環境ライフライン事業や住宅事業、高機能プラスチックス事業を中心に展開してきた。今後の新たな成長の柱に据えるのがペロブスカイト太陽電池だ。量産化に向けて巨額の投資を行うことで、リーディングカンパニーとなることを目指している。

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同社が開発したフィルム型のペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン型に比べて重さが10分の1以下と軽量で、薄くて曲げられるという特長を持つ。本社のある大阪のオフィスビル「堂島関電ビル」では、国内初の試みとしてビルの外壁に導入し、従業員のパソコンやスマートフォンの非常用電源として活用されるなど、実用化に向けた取り組みが進められている。
2025年度中には製品販売をスタートさせ、2027年には年間10万キロワット級の製造ラインを稼働させる計画だ。さらに、2030年には原子力発電所1基分に相当する100万キロワット級まで生産規模を拡大させる。大規模な量産化には、総額3100億円超の経費を投じ、その半分を政府の補助金で賄う予定だ。シャープの堺工場の建物を転用するなど、スピード感を重視して事業を垂直に立ち上げる姿勢を見せている。
アイシン(7259)
■株価(8月15日時点終値)2267円
自動車部品製造を主力とするアイシンもペロブスカイト太陽電池の実用化に向け、大規模な実証実験に乗り出している。同社は世界トップクラスのシェアを誇る駆動ユニットやパワースライドドアなどを手掛ける企業だが、新たな成長分野としてエナジーソリューション関連事業を強化している。

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アイシンが開発したペロブスカイト太陽電池は、従来の太陽光パネルの5分の1という軽さと、20分の1という薄さを実現している。さらに、通常のネジで壁に固定するだけで設置できるため、施工費用は従来の100分の1に抑えられるという。この革新的な特長を活かし、同社は愛知県安城市の安城工場で実証実験を開始している。
今後は大林組<1802>との共同実験も実施し、折り曲げたり、チャックをつけて施工しやすくしたりするなど、耐久性や施工性といった性能を多角的に検証していく。今後は2028年の試験販売を経て、2030年の事業化を目指しており、将来的には一般家庭や自動車向けへの展開も視野に入れている。
パナソニックHD(6752)
■株価(8月15日時点終値)1523円
2025年4-6月期の営業利益は前年同期比4%増の869億円と好調な滑り出しを見せた。EV向け電池工場の生産計画見直しなど、不確実性の高い事業環境への対応を進める一方、構造改革による収益改善への期待感を高める内容となった。経営陣の変革への強い意思が感じられるなか、注力領域の成長シナリオを具体化できれば、株価はPBR1倍を超える可能性が高まろう。
全社的な「グループ経営改革」を進めるなかで、ペロブスカイト太陽電池も成長領域のひとつに位置付けられている。注目すべきは、世界初となるガラス建材一体型のペロブスカイト太陽電池を開発し、モデルハウスでの実証実験を進めていることだ。独自のインクジェット技術を用いて厚さ1マイクロメートル以下の均質な層を作り、要望に応じた発電層を削ることで、透過度を調整できる。
2026年にも窓ガラス向け製品の試験販売を開始する方針であり、将来的には数百億円規模の事業に成長させる狙いを持つ。都市部ではガラス建造物が増加していることもあり、従来の太陽電池では設置が難しかったビルの壁面や窓への設置が可能になる効果は大きいと考える。
2025年は「ペロブスカイト太陽電池元年」として、今後の動きが一段と活発化していきそうだ。日本は、かつて従来の太陽光パネル開発競争で海外勢に敗れた苦い経験を持つ。しかし、ペロブスカイト太陽電池は「日本発」の革新技術であり、主要原料も国内で調達可能という好条件が揃っている。本格的な実用化には時間を要する可能性はあるが、日本のエネルギーと経済を支える可能性を秘めたテーマとして注目してみたい。
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