【厚生年金】月額15万円→月額27万6000円に増やせる!夢のような制度だが注意点も…「繰下げ受給」とは

年金の繰下げ受給とは, 【繰下げ受給】請求時の年齢と増額率, 繰下げ受給の注意点は必ず知っておこう, 繰下げ受給の注意点1. 加給年金額や振替加算への影響, 繰下げ受給の注意点2. 税金や保険料の負担が増えるかも, 老後について考えましょう

【厚生年金】月額15万円→月額27万6000円に増やせる!夢のような制度だが注意点も…「繰下げ受給」とは

物価上昇が続く中で、「老後の収入は少しでも多い方がいい」と考える人は少なくないでしょう。

人生100年時代と言われる今、老後の生活を支える年金は重要な収入源です。しかし、「年金だけでは生活できない」というシニア世帯は半数を超えます。

実は、年金を増やすための「繰下げ受給」という制度があり、受給開始時期を遅らせることで年金額を大幅に増やすことができます。

厚生年金の平均月額は約15万円(※国民年金を含む)ですが、繰下げ受給制度を利用すれば最大で月27万6000円まで増やすことも可能です。

しかし、メリットばかりではありません。繰下げ受給には見逃せない注意点も存在するのです。

この記事では、繰下げ受給の仕組みや増額率、て繰り下げる際に知っておくべきポイントを解説します。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

年金の繰下げ受給とは

年金の繰下げ受給とは、年金の受給開始年齢を遅らせることにより、老齢年金の受給額が増える制度のことです。

年金は本来65歳から受給開始となりますが、66歳以降に遅らせることにより、1ヶ月あたり0.7%ずつ受給額が増えるのです。

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繰下げ受給のしくみ

・増額率(最大84%※1)=0.7%×65歳に達した月※2から繰下げ申出月の前月までの月数※3

※1 昭和27年4月1日以前生まれの方(または平成29年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している方)は、繰下げの上限年齢が70歳(権利が発生してから5年後)までとなりますので、増額率は最大で42%となります。

※2 年齢の計算は「年齢計算に関する法律」に基づいて行われ、65歳に達した日は、65歳の誕生日の前日になります。

(例)4月1日生まれの方が65歳に達した日は、誕生日の前日の3月31日となります。

※3 65歳以後に年金を受け取る権利が発生した場合は、年金を受け取る権利が発生した月から繰下げ申出月の前月までの月数で計算します。

【繰下げ受給】請求時の年齢と増額率

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繰下げ受給の増額イメージ

繰下げ受給は1ヶ月単位でできますが、ここでは1年ごとにどれほど増えるのかをシミュレーションしてみます。

・66歳:8.4%

・67歳:16.8%

・68歳:25.2%

・69歳:33.6%

・70歳:42.0%

・71歳:50.4%

・72歳:58.8%

・73歳:67.2%

・74歳:75.6%

・75歳:84.0%

こちらをもとに、平均並みの「月額15万円」を想定していくらに増やせるか試算しましょう。

・66歳:16万2600円

・67歳:17万5200円

・68歳:18万7800円

・69歳:20万400円

・70歳:21万3000円

・71歳:22万5600円

・72歳:23万8200円

・73歳:25万800円

・74歳:26万3400円

・75歳:27万6000円

75歳まで我慢すれば、月額27万6000円にまで増やせます。目標とする年金月額がある場合、どれくらいまで我慢すれば達成できそうかをシミュレーションしてみると良いでしょう。

ただし、注意点もあります。

繰下げ受給の注意点は必ず知っておこう

ここでは繰下げ受給における主な注意点を2つ解説します。

繰下げ受給の注意点1. 加給年金額や振替加算への影響

年下の妻や子どもがいる場合、加給年金という家族手当のような役割を果たす金額が上乗せされる可能性があります。

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加給年金とは

例えば年下の配偶者が一定の要件を満たす場合、2025年度は1年あたり最大で41万5900円(年額)が年金に加算されます。

しかし、繰下げ待機期間(年金を受け取っていない期間)中は、加給年金額や振替加算を受け取ることができません。夫婦の年齢差によっては、総額で100万円以上受け取れないケースも発生するため、慎重に判断する必要があるでしょう。

また、加給年金額や振替加算額は増額の対象にならないことも注意が必要です。

繰下げ受給の注意点2. 税金や保険料の負担が増えるかも

年金が増額されることに伴い、所得がアップします。これによって税金や保険料もあがる可能性があるので注意しましょう。

「その分、金額が増えているならいい」と思われるかもしれませんが、所得と「税金・保険料」は比例するわけではありません。

ある段階で軽減措置が外れて一気に高くなることもあるので、手取りが逆転する可能性もあるのです。

非課税の人が課税されるケースもあるため、慎重に判断するようにしましょう。税金や保険料を正確に試算することは難しいので、年金事務所や自治体窓口等で相談してみることをおすすめします。

老後について考えましょう

年金の繰下げ受給制度について見ていきました。

年金が低い人は、一度は検討しておきたい制度といえます。しかし、受給開始を遅らせるのであればその分の収入確保が必須です。

働き続けられる保証がある人や、労働収入以外の収入が見込める人、もしくは十分な貯蓄がある人などが検討できる制度です。

反対に、年金の受給開始を早める「繰上げ受給」もあります。こちらはその分減額されてしまいますが、65歳までの収入が不安定な人などは利用するのもひとつです。

どの方法もメリットがデメリットがあるため、じっくり検討して判断するようにしましょう。

【参考】年金15万円の人の増額シミュレーション

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出所:日本年金機構「年金の繰上げ・繰下げ受給」をもとにLIMO編集部作成(「keisan 生活や実務に役立つ計算サイト」を使用)

参考資料

・日本年金機構「年金の繰上げ・繰下げ受給」

・keisan 「生活や実務に役立つ計算サイト」

・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

・日本年金機構「年金の繰上げ受給」

・日本年金機構「年金の繰下げ受給」

・日本年金機構「加給年金額と振替加算」