“快速は1本のみ”、JRと直通運転する仙台空港アクセス線とは
SAT721系とJR東日本E721系(後ろ2両) 2024年08月04日撮影
第3セクターである仙台空港鉄道が運営する仙台空港線。JR東日本・東北本線との直通運転により、仙台駅と仙台空港駅の間を結び、「仙台空港アクセス線」とも呼ばれています。2007年に開業し、今年で18周年を迎えています。基本的には各駅停車のみが運行されていますが、1日1本だけ“快速”が設定されているのをご存知でしょうか。
各駅停車の停車駅は、仙台から東北本線内で長町・太子堂・南仙台・名取、仙台空港線内は杜せきのした・美田園・仙台空港で、約25分の所要時間で結ぶのに対し、“快速”は途中、名取のみに停車し約17分で終点に到達します。
仙台空港駅に掲出されている時刻表
©北村 真央
仙台空港アクセス線の停車駅案内
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一見、空港アクセスに特化した視点でみると非常に利便性が高く、荷物が多くなりがちな空港利用者向けに遠近分離が図られているようにも見えます。しかし同路線の特徴として、東北本線と一緒に走行する仙台〜名取間は東北本線の補完的役割を担っており、同区間のみの利用者も多数見受けられます。また、仙台空港鉄道の本社も所在する“杜せきのした”駅には、イオンモール名取があり、渋滞を避けて同地を訪れる利用者の鉄道需要があります。このことから、最速17分で仙台駅と仙台空港駅を結ぶ“快速”は設定こそされているものの、1日1本のみに抑えられており利便性という観点では空港利用者よりも沿線利用者へ重きが置かれています。
イオンモール名取が所在する「杜せきのした」駅付近を走行するSAT721系 2022年04月24日撮影
©レイルラボ キイロイトリさん
1日1本のみ設定されている“快速” 仙台空港駅にて
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仙台空港駅
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運用する車両形式は1つのみ。SAT721系電車は3扉車で、車内にはセミクロスシート(ボックス席とドア付近のロングシートが一緒に設置されたもの)が配されています。また、空港アクセスという側面も考慮し、車内には大型のスーツケースなども収容可能な荷物置き場も設置。SAT721系とほぼ同型である、JR東日本のE721系500番台電車と共通運用で、4両編成で運転される際には2両ずつ両社の車両が連結されることもあります。2両編成、4両編成いずれの運行時もワンマン運転になっており、途中駅でのドア開閉は車内設置のボタンで利用者が行います。JR東日本との関係性の深さから、ビューカード等の利用時におけるSuicaオートチャージにも同社の自動改札機は対応しています。
仙台空港駅に停車するSAT721系電車
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SAT721系電車の車内に設けられている荷物置き場
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JR東日本のE721系500番台電車と同様に、セミクロスシートが配置されているSAT721系電車の車内
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仙台空港鉄道の運行拠点が置かれている始発・終着駅である仙台空港駅は、2007年に開業。1面2線のプラットホームを有し、同時に2本の電車が入線可能です。2011年3月の東日本大震災では、駅手前のトンネルが水没したほか鉄道関連施設の多くが被害を受けました。その後に復興し、現在も開業時と同じ駅舎・設備を使用しています。仙台空港の国内線・国際線出発階とは連絡通路で結ばれており、外に出ることなく駅ホームとの間を行き来することが可能です。
仙台空港ターミナルに直結する仙台空港駅
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人気キャラクターシリーズ“鉄道むすめ”の新キャラクター「杜みなせ」
©北村 真央
花形の空港アクセスを担いつつも、地域の足としての活躍もみせる仙台空港アクセス線。“快速”が1日1本という珍しい運行体系もさることながら、JR東日本車両との併結運転など見どころもたくさん。ぜひお出かけしてみてはいかがでしょうか。