F1分析|ハースF1のTPCに見る、富士スピードウェイで求められるタイヤマネジメント……セクター2とセクター3のバランスが重要?

 8月6日と7日の2日間にかけて、ハースF1チームのTPC(旧車テスト)が行なわれた。初日は平川亮、2日目は坪井翔がステアリングを握り、2日間合計で200周以上を走破。2日目にはトヨタ自動車の豊田章男会長が訪れ、開放されたスタンドには2日間延べ6000人以上のファンが訪れた。

 そんなTPCの初日、平川のロングランで面白い傾向があったのでご紹介しておきたい。

 平川は午前中にはショートラン中心の走行を行ない、午後はロングランが中心となった。さすがに真夏の日本……路面も気温もかなり高くなったが、その中で平川は、1分18秒538のベストタイムを記録。2008年の日本GPでフェリペ・マッサがフェラーリF2008で記録したコースレコードである1分17秒287には届かなかったものの、流石はF1マシンという速さを見せた。

 本稿で注目するのは、平川の最速タイムではなく、ロングラン時のペースである。

ハースF1 TPC:平川亮セクタータイム推移(ロングラン)

 上の表は、平川が実施した10周の連続走行の各セクターのタイムおよびラップタイムの推移である。

 セクター1はほぼ全てのラップで、きっちり20.6秒台を記録。さすがはF1ドライブするだけの才能というところをまざまざと見せつけられる。

 一方でセクター2は、26.0秒で走り始め、徐々にペースが向上。9周目には24.9秒と、このセクターだけで1秒以上ペースが上がった。対してセクター3は37.4秒で走り始め、最終的には38.0秒までペースを落とした。つまりセクター2とセクター3のペースの推移が、まるで逆なのである。

 ただラップタイムは、3周目には1分24秒0だったものが、9周目には1分23秒7と、全体的なペースが上がった。

ハースF1 TPC:セクタータイム推移(グラフ)

 わかりやすくするために、このペースの傾向を折れ線グラフで示したのが上のグラフである。これを見ると一目瞭然。オレンジ色の折れ線で示したセクター2のペースが上がっているのに対し、グレーの折れ線で示したセクター3のペースが下がっている。

 セクター3のペースが落ちても、セクター2のペースが上がることで、ラップタイムは(ほんのわずかではあるが)上昇……これはセクター3を犠牲にした方がメリットが大きいということだろう。

 一体何をやっていたのか? そう平川に尋ねると「タイヤマネジメントしていたんです」と明かしてくれた。

 セクター3は左右にクネクネと曲がるセクションであり、タイヤに負荷がかかる。そのためここで無理しない方が、タイヤを労わることができ、セクター2ひいてはラップタイム自体が上がるということなのだろう。

 翌日の走行を担当した坪井も、走行後に次のように語っていた。

「最後はセットアップチェンジをしてタイムをさらに伸ばそうとしたのですが、セクター2が良くなった分、セクター3が少し辛くなるという“富士あるある”が起きてしまいました」

 坪井が語ったこの傾向と、平川のロングランに見える傾向……セクター2と3のバランスが非常に重要だということが非常によく分かる、そんなデータだと言えるだろう。

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