年間60万円以上の固定資産税、相続税の試算額は8,000万円…60代男性が直面した現実と相続税を「ほぼゼロ」にできたワケ【相続の専門家が解説】

自宅土地は80坪 半分に建てている, 自宅の固定資資産税が年間60万円以上!, 母親が先に亡くなった, そもそも相続税はどれくらい?, 参考の建築プラン, ① ローン返済額(年), 賃料相場(新築マンション・駅徒歩圏), 他に考慮すべき要素, 相続税はどうなる?

(※写真はイメージです/PIXTA)

年間60万円以上の固定資産税。相続税の試算額は約8,000万円。60代の典男さんが直面したのは住んでいるだけでこれだけの税負担がのしかかるという現実でした。自宅敷地の「空き地」をどうするか? 典男さんが、将来の安心のために選んだ土地活用の選択肢とは? 相続実務士・曽根惠子氏(株式会社夢相続 代表取締役)が解説します。

自宅土地は80坪 半分に建てている

典男さん(60代)が自宅の土地活用について、相談に来られました。

典男さんは両親と二世帯住宅で同居されています。20年前にいまの建物に建て替えて、二世帯住宅にしたといいます。

それまでは、父親(90代)が所有する80坪の自宅敷地の半分にもともと同居する家がありました。築年数が経ってきたことや典男さんの子どもが大きくなったこともあり、空いている敷地に3階建ての二世帯住宅を新たに建てて、住み替えたのです。それまで住んでいた家は祖父の代に建てられたことから築年数が経っていました。それを解体して更地になりましたので、自宅敷地の半分は空き地になっています。

自宅の固定資資産税が年間60万円以上!

今年の6月に固定資産税通知が送られてきましたので、典男さんに持参してもらいましたところ、634,500円!

二世帯住宅とはいえ、自分の家に住んでいるだけなのに、毎月5万円以上の固定資産税を負担しなければならないということです。父親はまだ自宅で生活ができていて、年金が入るというものの、その負担は少なくありません。

典男さんにとっては、固定資産税の額も気になるということでした。

母親が先に亡くなった

典男さんが自宅の土地活用をしたいと動き出された理由はもうひとつありました。父親が90代になったということもありますが、2年前に母親が亡くなったのです。父親よりも5歳下ですので、父親が先に亡くなれば、母親の配偶者の特例を生かして無税のメリットが生かせるとぼんやり考えていたと言いますが、それが使えなくなってしまい、いよいよ、相続対策に取り組まないといけない状況になったといいます。

そもそも相続税はどれくらい?

典男さんの心配は、そもそも父親が亡くなったら、相続税がどれくらいかかるかを知っておきたいということもあるといいます。

そこで、典男さんよりヒアリングした金融資産もふくめて財産評価をしてみますと、父親の財産は2億7,200万円、相続税は約8,000万円となりました。

典男さんは父親と同居をされているので、小規模宅地等の特例を適用すると相続税は3,300万円程度で半分以下となります。

父親の金融資産はちょうど相続税分程度あり、金融資産に余裕があります。相続税が払えるという安心感はありますが、残しているために相続税が課税されていることでもあります。それを建築費の一部にすれば相続税の節税にもなります。

参考の建築プラン

賃貸事業をするにつき、アパートメーカーに参考プランを作成してもらいました。最寄駅から徒歩5分の立地の良さがあり、賃貸事業に適しているといえます。参考プランは、木造3階建て9戸、事業費9,500万円とします。

提案内容まとめ

・25–28㎡クラス(6戸):月額9.5〜10.5万円が予想範囲

・32㎡クラス(2戸):月額12〜14万円前後が見込み

・総月額収入:約95~100万円

・年収換算:約1.14〜1.20億円(12か月×月額想定)

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総事業費 試算

・本体工事費:6,700万円

・外構工事費:220万円

・設計管理費:280万円

・地盤改良費+杭工事:500〜900万円(中間値:700万円想定)

・予備費(約8〜10%):約700万円

総事業費の目安

計:6,700 + 220 + 280 + 700 + 700 = 8,600万円(税抜)

備考:

地盤調査結果や杭仕様によっては大きく変動あり

消費税(10%)を含めると、税込 約9,460万円

登記費用、融資関連費用、火災保険等の「諸費用」は別途必要なケースも多いです

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① ローン返済額(年)

月返済額:29.07万円(=290,700円)

※借入額9,500万円/金利1.5%/35年 → シミュレート値

年間返済:約348.8万円

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賃料相場(新築マンション・駅徒歩圏)

SUUMO調査(新築+徒歩1~5分)

ワンルーム:9.1 万円

1K:9.5 万円

1DK:11.3 万円

1LDK:14.6 万円

ハウスコム(新築・貸マンション)

20~30㎡:8.4 万円

30~40㎡:空き – ただし全体1R‑1LDK平均は9.6 万円

Yahoo!不動産

〜1DK:10.3 万円

1LDK:14.2 万円

全体相場

駅近新築物件はおおむね 9〜15万円/月 の範囲で推移)

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25–28㎡(1K〜1DK):徒歩5分以内・新築条件で家賃は 約9~11万円 が標準

ワンルームより広いため、多少高めに設定可能

32㎡(1LDK相当):新築で駅近なら 12~14万円 が市場水準

他に考慮すべき要素

立地条件(駅距離、1~5分圏内か)

設備仕様(追い焚き、浴室乾燥、オートロック、宅配BOX 等)

管理費・共益費:別途設定する場合は+1~1.5万円程度想定

需要見込み:単身~DINKS向けのサイズ層で賃貸需要は安定傾向

合計収入予想(月額・税込み想定)

25.88㎡ ×3戸:9.5万円 ×3 = 28.5万円

27.53㎡ ×4戸:10.5万円 ×4 = 42.0万円

32.03㎡ ×2戸:13.0万円 ×2 = 26.0万円

合計想定賃料96.5万円/月(管理費別途加算)

相続税はどうなる?

アパートの事業費9,500万円を総額借入し、建物が増えた場合は相続税が半分以下になり、そこから自宅と賃貸用の小規模宅地等の特例を適用すれば相続税はほぼかからなくなります。

アパートの事業費を現金で賄う場合、額面通りの現金から、建築費の30%程度の建物の固定資産税評価になり、さらに貸家評価になりますので、やはり確実な節税になると言えます。

ただし、まとまった現金が一度に手元からなくなってしまうことの不安はあると言えますので、事業費は総額借入をして調達し、現金は贈与するなどして少しずつ減らしていく方法を組み合わせる方法が現実的でしょう。

典男さんは「自宅の空き地の土地活用が効果的だということがよくわかれました。あとは建築会社を選定して、早めに決断します」と。ほっとされたようで、具体的な相続対策が進みそうです。

曽根 惠子

公認不動産コンサルティングマスター

相続対策専門士

相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。