シニアが使える “申請しないともらえない” お金5選。「年金生活者支援給付金」「高年齢雇用継続基本給付」など
シニアが使える “申請しないともらえない” お金5選。「年金生活者支援給付金」「高年齢雇用継続基本給付」など
2025年8月、連日猛暑日が続き、電力需給が逼迫する中で、家計への負担増を心配されている方も多いのではないでしょうか。また、物価高騰は依然として収束の兆しを見せず、特に年金生活者にとっては生活を圧迫する大きな要因となっています。
このような経済状況では、公的年金に加えて、国や自治体から受け取れる給付金や手当の存在は、家計を支える上で非常に重要です。
しかし、これらの支援金の多くは、自ら申請しなければ受け取ることができません。制度をよく知らず、本来受け取れるはずのお金を申請し損ねているケースも少なくありません。
本記事では、特にシニア世代の方々が対象となる「申請すればもらえる」代表的な公的支援金について、その概要を分かりやすく解説します。
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
【申請すればもらえる】国から支給される「お金」には何がある?
公的年金(老齢年金、障害年金、遺族年金)は生活の大切な収入源ですが、これらは自動的に振り込まれるものではなく、受給には必ず申請手続きが必要です。
さらに、国や自治体が支給する給付金や補助金、各種手当も同様に、申請しなければ受け取れないため、対象となる方は早めに申請することが重要です。
今回は、シニア世代を中心に、「申請しなければもらえない」代表的な以下の公的支援金を5つ紹介します。
・年金生活者支援給付金
・加給年金
・再就職手当
・高年齢雇用継続給付
・高年齢求職者給付金
【年金関連】申請すれば受け取れるお金2選
まずは、シニア世代向けの「申請しなければ受け取れない」公的支援金の中から、特に公的年金と密接に関連する2つの給付について説明します。
年金関連のお金1:年金生活者支援給付金
年金生活者支援給付金は、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の受給者のうち、所得が一定の基準を下回る方を対象とした支援制度です。
今回は、特にシニア世代に関わりの深い「老齢年金生活者支援給付金」について詳しく解説します。
【老齢年金生活者支援給付金の支給要件】
・65歳以上の老齢基礎年金の受給者
・同一世帯の全員が市町村民税非課税
2025年度における「老齢年金生活者支援給付金」の給付基準額は、2024年度よりも140円引き上げられ、5450円となりました。
年金生活者支援給付金の給付基準額
ただし、上記の金額はあくまで基準となる額であり、実際の支給額は「月額5450円」を基準に、保険料の納付期間に応じて計算されます。
具体的には、以下の①と②の合計額が支給される仕組みです。
・①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5450円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
・②保険料免除期間に基づく額(月額) = 1万1551円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480月
年金関連のお金2:加給年金
年下の配偶者や子どもを扶養している年金受給者にとって、重要な制度が「加給年金」です。
これは年金の「家族手当」のような役割を果たすもので、厚生年金に20年以上加入し、65歳に達した時点(または定額部分の支給開始年齢に達した時点)で特定の配偶者や子どもを扶養している場合に支給されます。
加給年金の対象者と年齢制限
・配偶者:65歳未満
・子:18歳到達年度の末日までの間の子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子
※ただし、配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上あるもの)、退職共済年金(被保険者期間が20年以上あるもの)を受給する権利がある場合、または障害厚生年金、障害基礎年金、障害共済年金などを受けている場合、配偶者への加給年金は支給されません。
加給年金の加給年金額
一例として、2025年度の「加給年金」の年金額(年額)は以下のとおりです。
・配偶者:23万9300円
・1人目・2人目の子:各23万9300円
・3人目以降の子:各7万9800円
老齢厚生年金を受給している方の生年月日により、配偶者には特別加算額が支給されます。
また、加給年金は、対象の配偶者が65歳になると支給が停止されますが、その配偶者が老齢基礎年金を受給している場合、一定の条件を満たすと老齢基礎年金に「振替加算」として加算されることがあります。
【仕事関連】申請すれば受け取れるお金3選
シニア世代の就労支援制度は整っていますが、60歳を過ぎると収入が減るケースが多く、再就職も容易ではありません。
そこで本章では、シニアの就労に関わる「申請が必要な公的支援金」を3つ紹介します。
仕事関連のお金1:再就職手当(65歳未満)
再就職手当は、できるだけ早く再就職を目指す人を支援するための制度で、失業後、再就職や起業までの期間が短いほど、受け取れる金額が多くなる仕組みになっています。
・対象者:雇用保険受給資格者で基本手当の受給資格がある人
・支給要件:対象者が雇用保険の被保険者となる、または事業主となって雇用保険の被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給
・手当の額:就職等をする前日までの失業認定を受けた後の基本手当の支給残日数により下記のとおり給付率が異なる
再就職手当の支給額は、残っている所定給付日数に応じて決まります。
具体的には、所定給付日数の3分の1以上を残して就職した場合は、残日数の60%が支給され、3分の2以上残っている場合は、残日数の70%が支給されます。※1円未満の端数は切り捨てとなります。
以下の表を参考にしながら、具体的なケースを確認していきましょう。
再就職手当の額
【再就職手当の金額】ケース1
・基本手当日額:4000円
・所定給付日数:270日
・就職:受給資格決定日以後50日目
・基本手当の支給残日数は228日(待機期間が受給資格決定日を含めて7日となる)→給付率は70%
・再就職手当=4000円×228日×70%=63万8400円
【再就職手当の金額】ケース2
・基本手当日額:4000円
・所定給付日数:270日
・就職:受給資格決定日以後100日目
・基本手当の支給残日数は178日(待機期間が受給資格決定日を含めて7日となる)→給付率は60%
・再就職手当=4000円×178日×60%=42万7200円
仕事関連のお金2:高年齢雇用継続基本給付
高年齢雇用継続給付は、60歳から65歳未満の方が引き続き就労し、60歳到達時と比べて賃金が減少した際に受け取れる支援金です。
・対象者:雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者
・支給要件:賃金が60歳時到達時の75%未満
・支給額:最高で賃金額の10%相当額(2025年4月より)
・申請先:在職中の事業所を管轄するハローワーク
【早見表】高年齢雇用継続給付
なお、老齢年金を受給しつつ厚生年金に加入し「高年齢雇用継続給付」を受ける場合、在職による年金の一部支給停止に加え、標準報酬月額の最大6%相当が支給停止となるため、この点にも注意が必要です。
【高年齢雇用継続給付の支給額&年金支給停止額の例】
60歳到達時の賃金月額が30万円である場合の支給額の例(※)です。
1.支給対象月に支払われた賃金が26万円のとき
賃金が75%未満に低下していませんので、支給されません。
2.支給対象月に支払われた賃金が20万円のとき
低下率が66.67%で64%を超えていますので、支給額は1万4545円です。
3.支給対象月に支払われた賃金が18万円のとき
低下率が60%ですので、支給額は1万8000円です。
※令和7年4月1日以降に受給資格を満たした場合の支給額の例です。
仕事関連のお金3:高年齢求職者給付金(65歳以上)
高年齢求職者給付金は、65歳以上の方が失業した際に支給される給付金です。
・対象者:高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で失業した人
・支給要件:下記の全ての要件を満たした人
・支給額:被保険者であった期間に応じて次の表に定める日数分の基本手当相当額
高年齢求職者給付金の額
65歳未満の失業手当と異なり、高年齢求職者給付金は一括支給されるのが特徴です。
いつまで働く?年金はいつ受け取る?老後の目標設定は今のうちに
ここまで、年金や雇用保険に関する給付金について詳しく見てきました。
筆者は普段から、個人向け資産運用についてのご相談をよくいただいておりますが、最近では、定年後も何らかの形で働き続けるシニアの方が増えています。
65歳までではなく、「70歳まで働く」ことを前提とし年金の繰り下げ受給を考えている人も多いのではないでしょうか。
老後生活は基本的には年金のみで生活していくことになりますが、今回ご紹介したような制度や自助努力を含め、早めに資金計画を考えていくことが大切です。
シニア世代のお金に関連する記事
老齢年金世代のお金【70歳代】貯蓄3000万円以上を有する世帯はやっぱり少数派?「厚生年金・国民年金」の平均月額はいくら?
円グラフ(70歳代の貯蓄額)
1月に届く「公的年金等の源泉徴収票」の見方を解説「税金」や「社会保険料」がいくら引かれているのかチェックしよう!
確定申告不要制度
【国民年金・厚生年金】2025年度の年金額は1.9%増額!だが、実質的には目減りとなる理由とは?
令和7年度の年金額例
参考資料
・厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付~」
・厚生労働省「再就職手当のご案内」
・厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>」
・日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
・日本年金機構「か行 加給年金額」
・日本年金機構「加給年金額と振替加算」