選手、生徒らへの暴言、誹謗中傷止まず寮への爆破予告も…部内暴力事案SNSで騒動加熱の広陵、甲子園辞退 不祥事での大会途中は史上初

広陵は7日の1回戦で、旭川志峯に逆転勝ちしていた。中央は選手たちに声を掛ける中井監督

第107回全国高校野球選手権大会に出場している広陵(広島)が10日、2回戦以降の出場を辞退した。同校の堀正和校長(63)が日本高野連と大会本部に辞退を申し入れ、受理された。1月に野球部寮内で起こった暴力事案に端を発し、交流サイト(SNS)などで同校に対する誹謗(ひぼう)中傷も含んだ情報が拡散していた。不祥事案による大会開幕後の辞退は史上初。14日に対戦予定だった津田学園(三重)は不戦勝となる。

会見で謝罪した広陵の堀正和校長(左)(撮影・成田隼)

約30分の会見で、広陵・堀校長は20秒近くにわたり計3度も深く頭を下げた。

「大会運営に大きな支障をきたし、このままでは高校野球の名誉、信頼を大きくなくすことになる。いかなる暴力も認めないことを掲げてきた中で、今回の事態を招いたことは誠に遺憾であり、じくじたる思い」

前日9日に学校法人広陵学園の緊急理事会を開催。理事の1人である中井哲之監督は当事者という立場から出席を見合わせ、他4人の理事で話し合った結果、全会一致で出場辞退を決定。その上で、堀校長は10日に甲子園球場を訪れ、日本高野連と大会主催者に正式に辞退を申し入れた。選手も10日に大阪府内の宿舎から失意のまま広島に戻った。

1月に寮内で部員間の暴力事案があり、これが大会直前にSNSなどで公となった。さらに元部員が被害を訴える別の暴力事案も重なり、SNS上で加害者とされる選手の実名や顔写真まで拡散。同校でも登下校の生徒に暴言が浴びせられ、追いかけられる被害や、さらには寮の爆破予告まであったという。

広陵は7日の1回戦で旭川志峯(北北海道)に勝利。2回戦以降についても日本高野連と大会主催者が出場を認めていた中で辞退に至った最大の理由について、堀校長は「新しい事実が発覚したわけではありません。人命を最優先に決意した。全校生徒と全教職員を守る責務がある」と強い口調で説明した。一方、暴力事案に関与していない部員もいる中での辞退については「苦渋の決断」と声を詰まらせた。

監督、コーチの暴力や暴言について、堀校長は「そういった事実は一切ございません」としたが、部内暴力が常態化している可能性も否定できない。今後、同校は速やかに野球部の運営、指導体制の掌握、抜本的な見直しに着手。調査終了まで中井監督には指導から外れてもらう事実上の〝謹慎処分〟を通達し、同監督も承諾した。広島県高野連副会長を務める校長自身も9日に同職の辞任を申し入れている。

甲子園大会を辞退した広陵の正門前(撮影・矢田幸己)

広陵は春夏通算53度の甲子園大会出場。春3度の優勝、夏4度の準優勝を誇り、プロ野球選手も多く輩出している名門の不祥事案による大会途中の出場辞退は熱戦に水を差すだけでなく、高校野球全体のイメージ低下も避けられない。(東山貴実)