ボルトレトが明かす、頼れる先輩にして“僚友”のF1王者フェルスタッペン。ふたりを繋ぐのはシムレースへの情熱
今季キック・ザウバーからF1デビューを果たしたガブリエル・ボルトレトと、レッドブルに所属する4度のF1世界チャンピオンであるマックス・フェルスタッペンの仲は、今年何度か注目を集めてきた。
開幕戦オーストラリアGP決勝のスタート直前、フェルスタッペンはボルトレトにインターミディエイトタイヤを履くようにアドバイス。その判断が正解だったことは後に証明された。そしてオーストリアGPの予選でフェルスタッペンは、ボルトレトにスリップストリーム(トウ)を与え、ラップタイム改善の手助けをした。
しかしあまり知られていないのは、フェルスタッペンがF1デビュー前からボルトレトをサポートしていたということだ。
「マックスは素晴らしい男だよ」
ボルトレトはmotorsport.comの取材に対してそう語った。
「僕にとっては、アイルトン・セナと並んで彼は史上最高のドライバーだ。僕はマックスを最高のドライバーのひとりとして見ているよ」
「彼のレースへの取り組み方、レースに対する理解、マシンに対する理解、彼が全てで見せる忍耐強さを本当に尊敬している。レースにおける専門知識や全てにおいて、彼は僕がなりたいドライバー像の一例だ」
ふたりは2023年、まだボルトレトがFIA F3に参戦していた頃に意気投合した。
「マックスとよく話すようになったのは、F3のシーズンが始まった頃だった。一緒にゲーム、シムレースを沢山プレイし始めた」とボルトレトは言う。
「僕らはとても良い関係を築いていて、彼は僕を沢山助けてくれる。F1への道を歩む上で、彼は多くのヒントやアドバイスをくれたし、F1パドックの人たちにも僕のことをたくさん話してくれた」
レッドブルでスポーティングディレクターを長く務めた後、今年初めにザウバーのチーム代表に就任したジョナサン・ウィートリーもそのひとりだ。
「ジョナサンはいつも、僕がザウバー/アウディに来る前に、マックスが僕をとても高く評価していたと話してくれた」とボルトレトは明かす。
「マックスはあまりこういうことを話さないし、メディアでも話さないのは知っている。でも彼はF1にいる人に話すことで僕を手助けしてくれた。彼は僕が良い結果を出しているのを見て、喜んで僕を助けてくれたんだ」
ボルトレトとフェルスタッペンが初めて出会ったのは2017年に遡る。ボルトレトがInstagramに投稿した写真がその証拠だ。
「マックスに初めて会ったのは、そう、あの時だ」とボルトレトは振り返る。
「僕は震えていたよ。彼は僕が所属していたカートチーム、CRGにいたことがあり、そこのみんなは彼のことを非常に高く評価していた。マックスはF1で2年目のシーズンを終えたばかりで、若い彼がF1で上手くやっているという話をよく聞いていた」
「だから僕はどうしても彼に会いたかった。ある時、彼がレースに来て、写真をお願いした。彼は本当にクールで、すごく親切だった。それで写真を取った。(今年の初めになって)それが有名になった。今またその瞬間を見ることができて嬉しいよ」
たかがゲームと侮るなかれ
最初のツーショットから6年後、ボルトレトとフェルスタッペンはシムレースを通じて再会した。そして、ふたりとも真剣に取り組んでいる。
「おかしな話だけど、以前はシムレースが本当に苦手だったという背景があるんだ」とボルトレトは認めた。
「上手くいかないから、シムレースを始めた頃は大嫌いだった。基本的に、ボコボコにされるわけだから、苦手なモノには熱中しないでしょ?」
ボルトレトは初めてシムレースを経験した時のことを鮮明に覚えている。
「ミラノでのことだった。家にシムも何もなかった。(最初は)フェラーリの店にあったフェラーリのシムだった」とボルトレトは言う。
「そこへ行って試してみたけど、トップ選手と比べるとペースが遅かった。父が僕を見て『文句を言ったり、シムが良くないと言ったりするのはやめろ。愚痴を言うくらいなら、うまくなれ。これはお前のスポーツだ。これで一番になるべきだ』と言ったのを覚えている」
「父は僕のヒーローだから、僕は父の言うことを聞いた。文句を言ったり、『良くない』『こんなことをしても僕の人生は何も変わらない』『シミュレータをやるのはリアルじゃない』と言ったりするのは止めた。そして練習を始めたんだ」

Max Verstappen, Red Bull Racing, Gabriel Bortoleto, Sauber
それがボルトレトの転機となった。
「家で練習できるように、初めて小さなシミュレータを買ったんだ。そしたら病みつきになってしまった。シムレースは中毒性があるね。一度ドライビングを始めたら、やめられない」
「それでシミュレータのアップデートを始めて、リアルのドライバーとしては、シムレースでベストの部類に食い込んだ。もちろん、僕よりも優れたシムレーサーはいる。彼らは1日中、ずっとシムレースをやっている。でも僕もシムレースが大好きだし、1日の大半をシムレースで過ごしている」
ボルトレトは最初こそシムレースに違和感を覚えたが、今はドライバーとしての成長において「非常に重要」なモノになっているという。
「新しいサーキットに行く時、あるいは既に知っているサーキットに行く時でも、これは助けになる。家でずっと練習してきたから、サーキットに着くと、もう1000周は走ったような気になるんだ」
「マシンのセットアップについても多くを学ぶことができる。シムではセットアップを変更して、色々なことを試すことができる。もちろん、実際のF1マシンをシムでセットアップすることはできないけど、セットアップで変えられることは現実と同じはずだから、どんなことを変えられるかについては多くを学べるんだ。特定のサーキットでマシンがどのような挙動を示すかということを試すことができる」
フェルスタッペンのチームメイト
ボルトレトは、フェルスタッペンのプロフェッショナル・シムレーシングチームであるTeam Redlineのアンバサダーも務めている。
「まだF3にいた2023年に加入した。既にいつもみんなと離したり遊んだりしていたけど、その年に正式加入したんだ」とボルトレトは言う。

Gabriel Bortoleto, Sauber
Team Redlineでのボルトレトの役割は何なのだろうか?
「彼らと一緒に練習するだけだよ。僕は主にマックスとシムレースを沢山やっているし、たまに他のシムレーサーたちともやる。でも公式レースを一緒にやることはない。今年の末にはいくつか耐久レースに参加するかもしれないけど、どうなるか見てみよう」
フェルスタッペンとは異なり、ボルトレトはマシンのセットアップ面でチームを助けることには関与していない。
「いや、それは僕の仕事じゃない。そんな時間はないしね。それに彼らは主にiRacingや耐久レースをやっていて、僕が普段やっているゲームとは種類が違う。僕はアセットコルサでF1マシンをよく走らせる。たまにiRacingでGT3マシンもやるけどね」とボルトレトは語った。
「Team Redlineのみんなと一緒にプレイする時は、いいラップタイムを出そうとするし、互いに打ち負かそうとする。でも、ほとんどの時間はアセットコルサでF1マシンを走らせているよ」
世界トップ10入り
世界最高のシムレーサーの中で自身は何位に入るか? という質問に対してボルトレトは微笑みながらこう答えた。
「ゲームによるね。アセットコルサでF1に乗れば……しっかり集中すれば、トップ10くらいだ。トップ5にも入れるかもしれない。他のゲームではトップ50かトップ100だろう。何に集中するかによるね。ひとつのゲームに集中すれば、トップ10に入ることはできると思う。でも、それには多くの時間と注力が必要だ」
「最近はアセットコルサをよくプレイしている。タイヤの挙動やマシンの挙動が一番リアルに感じられるからね」
「iRacingはレースを楽しむには最高だ。予選や練習セッションもあるから、レース週末みたいな感覚もある。アセットコルサは自分ひとりで、あるいは友達と共に周回を重ねることに重きを置いている。だからレースというよりも、練習してスキルを磨くことがメインだ」
「でも少しiRacingに戻る必要がある。アセットでのF1に集中するために離れていたけど、ランキングを上げるためにiRacingに戻って少し集中する必要がある」
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