老後「公的年金」だけで生活できている高齢者世帯の割合は?「いまのシニア世代の年金額」と「将来の受給世代の年金額の見通し」
公的年金に依存しない資産づくり
老後「公的年金」だけで生活できている高齢者世帯の割合は?「いまのシニア世代の年金額」と「将来の受給世代の年金額の見通し」
8月15日は年金支給日です。年金は前2ヵ月分がまとめて支給される仕組みのため、上手に家計をやりくりしていく必要があります。
老後の生活を公的年金だけで賄えている世帯はどれくらいいるのでしょうか。また、現状の年金生活から、将来の受給世代である私たちの年金受給額はいくらの見通しとなっているのでしょうか。
この記事では、シニア世代の年金生活の現状と、将来世代の年金受給額の見通しを解説します。
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年金だけで生活できる高齢者世帯の割合は「半分以下」
まずは、年金だけで生活できている世帯がどれくらいあるのか確かめてみましょう。厚生労働省の「令和6年 国民生活基礎調査」によれば、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち、所得がすべて年金・恩給となっている世帯は43.4%となっています。(詳細以下画像)
公的年金・恩給を受給している高齢者世帯における公的年金・恩給の総所得に占める割合別世帯数の構成割合
年金だけで日々の生活ができている世帯は、年金受給世帯の半分にも満たないのです。
同調査によると、高齢者世帯の収入のうち、公的年金・恩給が占める割合は63.5%です。よって、年金以外の収入も得ながら家計をやりくりしているのが、現在のシニア世代の生活状況といえます。
次章では、シニア世代の収支状況を解説します。
シニア世代の収支状況「国民年金と厚生年金」・「生活費」
シニア世代の収支を見て、年金だけでは生活が難しい理由を見てみましょう。
まずは基礎年金と厚生年金(基礎年金含む)の平均受給額を確かめます。
国民年金
・〈全体〉平均年金月額:5万7584円
・〈男性〉平均年金月額:5万9965円
・〈女性〉平均年金月額:5万5777円
厚生年金
・〈全体〉平均年金月額:14万6429円
・〈男性〉平均年金月額:16万6606円
・〈女性〉平均年金月額:10万7200円
厚生年金と基礎年金を合わせても月額14万円ほどです。専業主婦世帯なら世帯で約20万円、共働き世帯なら世帯で約29万円となります。
では、毎月の支出はどれくらいなのでしょうか。総務省統計局の「家計調査報告 〔 家計収支編 〕」によると、夫婦世帯・単身世帯の支出額は以下のとおりです。
65歳以上無職世帯の家計収支
・夫婦世帯:25万6521円
・単身世帯:14万9286円
夫婦世帯は共働きで2人とも平均付近の年金を受給して、ようやく年金で生活費を賄えます。専業主婦世帯では収入20万円に対して支出が25万円と、約5万円ほどの赤字です。
単身世帯は、平均の年金額を受け取っていても、赤字となります。基礎年金のみ受け取っている人であれば、赤字額はさらに増えます。
シニアの生活は、平均程度の年金額を受け取っていても赤字が発生する状況です。そのため、労働収入や個人年金といった公的年金以外の収入が必要になるのです。
次章では、将来世代の年金受給額の見通しを解説します。
私たちの年金はどうなる?受給額の見通し
現在のシニア世代の生活状況はなかなか厳しいものです。こうしたなかで、将来年金を受け取ることになる現役世代の受給額はどれくらいなのでしょうか。
私たちの年金受給額を見通す際に重要なのが「所得代替率」です。所得代替率は、年金を受け取り始める際の年金額と、現役世代の手取り収入を比較した割合です。
2024年に行われた年金の財政検証によると、年金の所得代替率は、今後経済が成長すれば2040年度・2060年度ともにで57.6%となっています。一方、過去30年と同じような経済成長であれば、2040年度は56.3%、2060年度は50.4%と、ギリギリ所得の半分を賄う試算になっています。(詳細以下画像)
所得代替率及びモデル年金の将来見通し
厚生労働省では、経済成長ごとの将来の平均年金月額も試算しています。経済成長が継続すれば、現在40歳の人は約16万円、30歳の人は19万円、20歳の人は約23万円の年金が支給されます。
一方、過去30年と同じような経済成長だと、現在40歳の人は12万円、30歳の人は約13万円、20歳の人は約14万円と、受け取れる額は現在とほとんど変わりません。(詳細以下画像)
モデル年金額
最低限の年金額を受給できる可能性は高いですが、いくら受け取れるのかは今後の経済成長次第といえるでしょう。
次章では、公的年金に依存しない資産の備え方を解説します。
公的年金に依存しない資産づくりとは
公的年金は社会保障制度が成り立つ以上支給され続けますが、支給金額は経済情勢に左右されます。これからの老後生活では、公的年金に頼らない資産づくりが重要です。資産づくりのためには、iDeCoやNISAのような制度の活用を検討しましょう。
iDeCoは、自分で掛金を拠出して運用し、運用結果を年金として受給する「確定拠出年金」のひとつです。掛金が全額所得控除の対象になり、受取時も一定額までなら非課税になるなど、税制上のメリットが大きいのが特徴です。原則60歳までは引き出せませんが、年金資産づくりをするには最適な制度といえます。
NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度です。通常は20.315%の税金がかかりますが、NISAで運用したお金には税金がかからないため、運用益をそのまま受け取れます。iDeCoと異なりいつでも引き出せるため、老後の資産だけでなく教育費や住宅資金などの備えにも役立ちます。
制度を活用しながら、老後に向けた備えを用意していきましょう。
まとめ
老後に公的年金だけで生活できる高齢者世帯は、決して多くありません。高齢者世帯の収入の内訳は、年金が6割で、残り4割が年金以外になっています。
年金以外の収入をどれくらい増やせるかによって、老後の生活しやすさも変わります。公的年金の受給額見通しもチェックしつつ、自分で資産を増やすことにも注力していくとよいでしょう。
参考資料
・厚生労働省「令和6年 国民生活基礎調査の概況」
・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・総務省統計局「家計調査報告 〔 家計収支編 〕 2024年(令和6年)平均結果の概要」
・厚生労働省「令和6(2024)年財政検証結果の概要」
・厚生労働省「令和6(2024)年財政検証関連資料②ー年金額の分布推計ー」