セ・リーグがこだわり続けた「投手が打席に立つ野球」に決別 大転換の背景にある「球界の変化」とは
プロ野球セ・リーグ6球団による理事会が4日、東京都内で行われ、2027年シーズンから指名打者(DH)制の導入を決めた。2026年はDH制に向けた編成の準備など移行への猶予期間となる。
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◆「新しいセ・リーグの野球を見せていきたい」
セ・リーグ旗
国内外でDH制が主流となる中、投手が打席に立つ「9人野球」を貫いてきたセが、ついに採用に踏み切った。セ各球団の代表者からなる理事会メンバーは4日、東京都内で記者会見し、「新しいセ・リーグの野球を見せていきたい」と意欲を述べた。
セは「9人野球」の伝統や、1975年からDH制を採用するパ・リーグとは異なる野球の価値などに重きを置いてきたが、2016年ごろから導入を巡って協議。主にファンの反応や選手にとってのメリットとデメリット、アマチュア球界に与える影響の観点から議論してきたという。
◆アマ球界でも導入が進み「対応する必要性が生じた」
アマ球界では社会人野球や大学野球の大半が既にDH制を導入済み。さらに日本高野連が今月1日、来春の公式戦からの導入を決めた。東京六大学野球連盟と関西学生野球連盟も来春からの採用を決めており、これで全日本大学野球連盟の全27連盟がDH制となった。
投手ながら、打撃でも活躍してきた中日の柳裕也選手=バンテリンドームで(今泉太撮影)
会見で、セ理事長を務める広島の鈴木清明球団本部長は「アマチュア球界の潮流が大きく変化することに対応する必要性が生じた」と説明。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)など国際大会でもDH制が採用されていることを踏まえ、「リーグのルールを発展的に見直すタイミングだとの認識を共有するに至った」とした。
◆パ・リーグ相手の苦戦、DH制導入とは関係ない?
プロ野球の交流戦などではDH制のあるパの優勢が続くが、鈴木氏は今回の決定にあたり「そういう議論をしたことはない」と指摘。一方、DH制によって出場機会を得られる選手が増える可能性があり、「プレーヤーを目立たせることでファンが増えるのは球界にとって素晴らしいこと」とプロ野球の人気向上につながることを期待した。
3月19日、カブスとの開幕シリーズに指名打者で出場し、本塁打を放つ大谷翔平選手=東京ドームで(戸田泰雅)
米大リーグで運用されている、先発投手が降板後もDHで出場できるいわゆる「大谷ルール」も適用される方針という。
各理事からも前向きな意見が相次ぎ、中日の朝田憲祐球団本部長は「ファンには来年1年間、投手が打席に立つ最後の野球を楽しんでもらい、再来年以降のDH制、新たな魅力を感じてもらいたい」と述べた。(井上仁)
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