【60歳代の貯蓄】約2割がすでに「貯蓄3000万円以上」を保有!《無職夫婦の老後》「平均年金月額・ひと月の生活費」はいくら?
60歳~69歳「厚生年金と国民年金」の平均額を1歳刻みでチェック
【60歳代の貯蓄】約2割がすでに「貯蓄3000万円以上」を保有!《無職夫婦の老後》「平均年金月額・ひと月の生活費」はいくら?
お盆の時期は何かと出費が増える季節です。これを機に、家計や資産について改めて見直そうと考える方も多いのではないでしょうか。
特にシニア世代にとっては、年金だけではまかないきれない支出や、医療・介護といった将来的な不安への備えも必要になるため、貯蓄の重要性はより一層高まっています。
とはいえ、「他の人はどれくらい貯蓄しているのか」「平均的な金額はどの程度か」といった点は、気になるところかもしれません。
本記事では、60歳代・二人以上の世帯における「貯蓄3000万円以上」の保有割合や、公的年金の受給額の実態について詳しく解説していきます。老後の生活設計の参考に、ぜひ最後までご覧ください。
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【60歳代】「厚生年金と国民年金」の平均受給額は月額いくら?
厚生労働省の「令和5年度 厚生年金・国民年金事業の概況」によれば、65歳以降の平均的な年金額は、国民年金が月額5万円台、厚生年金が14万円台となっています。
もちろん、老後の生活を支えるうえでは、年金だけでなく、どれだけの貯蓄を確保できているかも重要な要素です。
では、実際に二人以上の世帯では、どの程度の貯蓄を保有しているのでしょうか。
【60歳代・二人以上世帯】「貯蓄額3000万円」以上の割合はどれくらい?
J-FLEC 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」を参考に、60歳代・二人以上世帯の貯蓄(金融資産を保有していない世帯を含む)を確認していきましょう。
※貯蓄額には、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。
60歳代の貯蓄額
貯蓄額を見てみると、60歳代・二人以上世帯の平均は2033万円で中央値は650万円となっています。
貯蓄額が3000万円以上ある世帯は全体の20.0%で、5世帯に1世帯という割合でした。
一方で、金融資産をまったく保有していない「貯蓄ゼロ」の世帯も20.5%にのぼっており、こちらも約2割を占めています。
このことから、老後の貯蓄状況には非常に大きな開きがあることが読み取れます。
リタイア後には、医療費や住宅の修繕費など、予想外の支出が発生することも考えられます。
そうした将来に備えるためにも、現役のうちから貯蓄計画を立てたり、資産運用を視野に入れたりすることが重要です。
【65歳以上・無職夫婦世帯】家計収支は「毎月3万4058円の赤字」に
厚生労働省が公表した「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上無職夫婦世帯のひと月の家計収支は以下のとおりです。
65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支(2024年)
毎月の実収入:25万2818円
■うち社会保障給付(主に年金)22万5182円
毎月の支出:28万6877円
■うち消費支出:25万6521円
・食料:7万6352円
・住居:1万6432円
・光熱・水道:2万1919円
・家具・家事用品:1万2265円
・被服及び履物:5590円
・保健医療:1万8383円
・交通・通信:2万7768円
・教育:0円
・教養娯楽:2万5377円
・その他の消費支出:5万2433円
・うち諸雑費:2万2125円
・うち交際費:2万3888円
・うち仕送り金:1040円
■うち非消費支出:3万356円
・直接税:1万1162円
・社会保険料:1万9171円
毎月の家計収支
・3万4058円の赤字
この世帯の月間収入は25万2818円で、そのうち約9割にあたる22万5182円が公的年金などの社会保障給付によるものです。
一方、毎月の支出は28万6877円で、その内訳は「非消費支出(社会保険料や税金など)」が3万356円、「消費支出(生活費など)」が25万6521円となっており、結果として毎月3万4058円の赤字が発生している状況です。
支出の見直しだけでは赤字を解消できない場合は、あらかじめ資産形成を進めておき、必要に応じて取り崩せるよう備えておくか、あるいは老後も働くことを視野に入れることが求められます。
【積立投資シミュレーション】老後までに「貯蓄3000万円」を達成するためには?
金融庁の「つみたてシミュレーター」を使って、目標額3000万円を達成するために必要な投資・貯蓄額を試算しました。
はじめに、安全性を優先して貯蓄のみで運用する想定利回り0.1%のケースを見てみます。
貯蓄期間20年
45歳から貯蓄だけで65歳までに3000万円貯める場合、月々12万円以上も貯蓄していかなければなりません。
貯蓄期間30年
積立期間を30年とし、たとえば35歳から積み立てを始めた場合でも、毎月の貯蓄額はおよそ8万2000円が必要になります。
貯蓄期間40年
25歳から積立を始めた場合でも、月々約6万1000円の貯蓄が必要となり、これを40年間継続するのは決して簡単ではありません。
このように、貯蓄だけで3000万円を目指すのは、相当な努力と継続力が求められることがわかります。
次に、投資信託や株式などを活用し、利回り4%で運用した場合を考えてみましょう。
投資期間20年
たとえ45歳から資産形成を始めた場合でも、利回り4%で運用すれば、月々およそ8万2000円の積立で目標額に到達することが可能です。
高所得の方であれば、45歳以降のスタートでも3000万円の資産形成を実現できる可能性は十分にあると言えるでしょう。
投資期間30年
35歳から資産形成を始め、30年間にわたって運用した場合、月々の積立額はおよそ4万3000円で3000万円に到達することが可能です。
複利の効果により、時間の経過とともに資産の増加スピードが加速し、最終的には3000万円のうち約半分が運用益によるものとなるのが特徴です。
投資期間40年
最後に、25歳から40年間にわたり資産運用を行った場合を見てみましょう。
このケースでは、月々およそ2万5000円の積立で、目標額の3000万円を達成することができます。
このとき、全体の約60%にあたる約1800万円弱が運用益によるもので、拠出総額はわずか1218万円という試算結果になります。
ただし、今回のシミュレーションは「運用利回りが長期間安定して続く」という前提に基づいています。
実際の資産運用では、相場の変動や景気の影響を受けるため、想定どおりに資産が増えるとは限りません。
資産運用には元本割れなどのリスクも伴うため、自分のリスク許容度や目的をしっかり見極めたうえで、無理のない範囲で取り組むことが大切です。
早めのスタートと正しい知識で老後資金準備を始めよう
ここまで、60歳代で貯蓄が3000万円以上ある世帯の割合について詳しく見てきました。
また、積立投資のシミュレーションを通じて、なるべく早い段階から資産運用を始めることが将来的に有利であるという点も確認いただけたかと思います。
ただし注意したいのは、資産運用を行えば必ずお金が増えるというわけではなく、元本割れなどのリスクを伴う場合もあるということです。
株式や投資信託、債券など、資産運用の手段にはさまざまな種類があり、それぞれに異なる特徴やリスク・リターンがあります。まずは、それぞれの運用方法についてご自身でしっかりと調べ、理解を深めることが大切です。
参考資料
・J-FLEC 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」
・厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
・総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・金融庁「つみたてシミュレーター」