なぜKDDIはNTTと関係強めるSBI証券と手を組むのか。決算会見で松田社長が語った金融新戦略

KDDIは8月1日、7月に本格稼働した高輪ゲートウェイシティの新社屋で初めて決算会見を実施した。
KDDIは8月1日、2025年度(2026年3月期)第1四半期決算を発表した。売上高は前年同期比3.4%増の1兆4363億2800万円、純利益は同3.3%減の1711億2200万円と増収減益となった。
4月1日からKDDIの代表取締役社長に就任した松田浩路氏は、8月1日の決算会見で「主要事業は順調に推移している」とし、減益要因も一過性の要素を含む「過年度の販促費影響」だとした。

減益要因となっているのは「過年度の販促費」で、214億円のうち73億円は「一過性」のものだという。
8月1日の決算会見ではKDDIの金融事業完全子会社の「auフィナンシャルホールディングス(auFG)」が、7月30日に公表したネット証券大手・SBI証券との業務提携に注目が集まった。
KDDIの金融事業は「auマネ活バリューリンクプラン」など、今や個人向け通信事業と切ってもきれない関係性になっている。
決算会見で松田氏や、KDDI 取締役執行役員常務の勝木朋彦氏が語ったKDDIの金融と通信の戦略について解説しよう。
金融事業再編を機に優遇対象の証券会社を拡大

auFGとSBI証券が7月30日に発表した業務提携の具体的な内容は、auFG傘下の銀行・auじぶん銀行の口座からSBI証券の口座への入金がリアルタイムで可能になる「リアルタイム口座振替」が主軸となっている。
リアルタイム口座振替により、スムーズな資産運用が可能になるだけでなく、同機能を設定したユーザーにはauじぶん銀行の円普通預金金利を+0.10%(税引前)優遇するという特典を用意する(2025年秋から実施予定)。
現在もauじぶん銀行は「三菱UFJ eスマート証券」(旧auカブコム証券)と同様の金利優遇施策を実施していたが、SBI証券との連携はこの動きを拡大させる動きと言える。
その背景にはKDDIの金融事業の再編がある。
もともとauじぶん銀行もauカブコム証券も三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)とKDDIのそれぞれの子会社が出資する合弁会社だったが、2024年11月にauカブコム証券はMUFG、auじぶん銀行はKDDIの完全子会社になることが公表された。
そして2025年2月に、MUFGはauカブコム証券を三菱UFJ eスマート証券に改称。auじぶん銀行と三菱UFJ eスマート証券は業務提携関係を続けているため、従来のau金融経済圏のユーザーには大きな影響は出ていない。
証券会社を手放したKDDIは「協業戦略」に舵切り

エムットの公式サイトには、三菱UFJ eスマート証券とウェルスナビがエムット内の資産運用サービスとして紹介されている。
ただし、この動きは近年の「通信と金融」の一体戦略からやや外れたものとなる。
KDDIの競合であるNTTドコモは「マネックス証券」、ソフトバンクは「PayPay証券」、楽天は「楽天証券」というように証券事業をグループ傘下に持ち、一定のシナジーを生み出しているからだ。