こんなに快適で安くていいの?「コスパ抜群の私鉄特急」6選【写真多数】この夏に乗りたい!

乗ること自体が旅の目的となるような特急電車の中でも、コストパフォーマンスが良くて、快適性の高い列車を5つ紹介しよう。(ライター 前林広樹)

 5月に公開した記事『「もう普通車には戻れない…」思わずうなる「コスパ最強のJRグリーン車」5選【写真多数】』では、全国各地のJR特急のグリーン車について、お得感の強いものを5つ紹介した。

 この記事の読者から、「私鉄にはさらにコスパのいい特急がある」といった複数のコメントをもらった。確かに、私鉄にはJRにも負けず劣らず、非常に豪華な設備あるいはコスパがいい特急が存在する。沿線の観光振興で走っている列車も多く、夏の旅行にもぴったりだ。

 そこで今回は、コスパのいい私鉄特急について筆者のおすすめを6つ、紹介しよう。

長野電鉄2100系「スノーモンキー」 Photo:PIXTA

長野電鉄2100系「スノーモンキー」

グリーン個室が超格安で乗れる!

 まず紹介するのは、長野電鉄の長野駅~湯田中駅を走る2100系だ。この列車の愛称は「スノーモンキー」。雪が降る冬場の名物、地獄谷野猿公苑の温泉に入る猿にちなんで命名された。

 この列車、実は1991年~2010年に「成田エクスプレス」で利用されたJR東日本の253系をリニューアルしたもの。その1号車にあるグリーン個室が、非常におすすめだ。

 この個室席は、成田エクスプレス時代にはVIPの利用を想定したもので、広々としたソファや荷物スペースが設けられている。当時は非常に高額で、個室料金だけで1室6000円 、運賃や特急料金を含めると都心から成田に行くだけで1人9000円近くかかった。

 そんな、JR時代は「コスパの悪さ」で知られていた個室が、長野電鉄になってからはなんと個室料金はたった1200円!4人まで同一料金で利用できるので、4人いれば1人当たり300円と、超格安なのだ。

 なお、運賃は長野~湯田中で2790円。終点には観光地である湯田中・渋温泉郷がある。旅館やホテルは100軒ほどあるので、信州の名湯をめぐる旅行にぴったりだろう。

西武001系「Laview」 Photo:PIXTA

西武001系「Laview」

シートピッチ広い!窓が大きい!

 次に、西武池袋線の特急001系「Laview」を紹介したい。2019年に登場したLaviewは丸みを帯びた車体、大きな窓が特徴の車両。車内は黄色い座席が明るい雰囲気だ。何より、座席がソファのように上質で、コンセントも完備。シートピッチは1070mmと、JR特急の標準的なグリーン車(1040mm)よりも広い。

西武001系「Laview」のシート Photo:PIXTA

 これだけの快適性をそなえていながら、特急料金は池袋~西武秩父間の片道で900円、運賃と合わせても1700円(切符利用、IC運賃で796円)。池袋~西武秩父間の76.8kmとほぼ同じ距離を、JRの普通列車のグリーンで走ると仮定した場合よりも安く、お得といえるだろう。

 埼玉県にある秩父エリアは、夏は川遊び、秋は紅葉、冬は氷柱、春は芝桜と季節ごとに異なる自然を楽しめる。さらに祭りや寺社仏閣が多く、実は多様な観光ができる地だ。首都圏在住者なら列車で日帰り旅行も気軽でおすすめだ。

東武N100系「スペーシアX」 Photo:PIXTA

東武N100系「スペーシアX」

伝統を受け継ぐ東日本一の豪華特急

 続いて、東武 N100系「スペーシアX」を挙げたい。東武鉄道は栃木県の日光方面に、1720系「デラックスロマンスカー」(1960年登場)や、100系「スペーシア」(89年登場)など最高クラスの設備を持つ豪華列車を設けてきた。

 その伝統を受け継ぎ2023年に登場したのが、N100系「スペーシアX」だ。この列車も豪華で、スタンダードシートでさえピッチは1100mmもある。

 さらに上級席は圧巻だ。2列+1列の座席配置で、電動リクライニングやネックサポート可動式枕などを備えた座席「プレミアムシート」、半個室席の「ボックスシート」、コの字型ソファと可変テーブルを備えた個室席「コンパーメント」、展望を独占できる最大7人乗りの広々個室「コックピットスイート」と、とにかく席の種類が豊富なのだ。

 極めつけは1号車の「コックピットラウンジ」で、日光金谷ホテルや大使館別荘などをモチーフとした洒落たデザイン。前面展望を楽しめるソファとカフェが設けられた車両で、クラフトビールや栃木県産の食材を使ったおつまみ、スイーツなどが楽しめる。

東武N100系「スペーシアX」の「コックピットラウンジ」 Photo:PIXTA

 気になる料金は、浅草~東武日光(片道)でスタンダートシートなら3340円、プレミアムシートで3920円。そのほかの特別座席は追加料金がかかるものの、コックピットラウンジ(1人用)なら3840円、ボックスシートなら1人当たり3740円。東京~宇都宮の新幹線自由席4490円より安く、コスパは最高レベルだ。

 人気かつ車両自体が少ないので、座席は争奪戦。早めに予約を入れるようにしよう。

小田急30000形 EXEα Photo:PIXTA

小田急「ロマンスカー」

JRグリーンよりもお得でコスパ最強

 小田急電鉄の特急「ロマンスカー」は、箱根や江の島旅行の定番。首都圏の特急列車で知名度は高い。

 一方で、残念ながら座席間隔は西武Laviewや東武スペーシアXと比べると狭い。シートピッチが最も広いのはEXEの1000mmで、最新型で展望席を持つGSEは980mm、地下鉄千代田線に乗り入れるMSEだと983mmとなっている。

 とはいえ、JRの標準的な特急・普通席の960mm、普通・グリーン席の970mmよりも広いうえ、座り心地もいいので不満に思う人は少ない。何より最大の魅力はコスパの良さだ。

 新宿~小田原間の片道の料金は1851円(チケットレス特急料金+ICカード)~1910円(特急料金+切符)。同区間をJR湘南新宿ラインのグリーン車に乗った場合(2320~2520円)よりも安い!まさに、コスパ抜群の私鉄特急だ。

近鉄特急80000系「ひのとり」 Photo:PIXTA

近鉄80000系「ひのとり」

名古屋~大阪で新幹線以外の選択肢

 さて、関西方面にも目を向けたい。近鉄名古屋駅~大阪難波駅を結ぶ近鉄の「ひのとり」を紹介しよう。

 名古屋~大阪間は、スピードと本数ではJRの東海道新幹線にとうてい勝てない。そこで近鉄は料金の安さと快適性で対抗しており、中でも20年に登場した80000系「ひのとり」はすごい。

 座席はレギュラーシートでもフットレスト付きでシートピッチは1160mmもある。上級のプレミアムシートになると2列+1列配置かつ、シートピッチはなんと新幹線の最上位席グランクラスと同等の1300mm。しかもシート表面は本革の、高級感あふれる仕様だ。

「ひのとり」プレミアムシート Photo:PIXTA

 さらに、挽きたてのコーヒーを楽しめるサーバーや、電話対応のベンチ席も充実。それでいて近鉄名古屋~大阪難波間の料金はレギュラーシートで4990円、プレミアムシートで5690円と、東海道新幹線の名古屋~新大阪間5940円(自由席)よりも安い!

 名古屋~大阪間を移動する際、急がない旅であれば、乗る価値は大だろう。

近鉄50000系「しまかぜ」 Photo:PIXTA

近鉄50000系「しまかぜ」

伊勢志摩を楽しむ西日本一の豪華特急

 最後に紹介するのは、近鉄の伊勢志摩方面への観光特急50000系「しまかぜ」だ。基本席が電動リクライニング付き本革のプレミアムシートで、2列+1列配置かつシートピッチは1250mmの広々設計という豪華さ。先頭車はハイデッカー構造なので、迫力満点の前面展望を堪能できるのも特徴だ。

「しまかぜ」の前面展望 Photo:PIXTA

 L字型のソファを備えた洋風個室、大型テーブルを備えたセミコンパートメントのサロン席の他に、靴を脱いで上がる掘りごたつ式の和風個室もあるのが面白い。専属アテンダント(接客係)が常駐し、サービスもしてくれる。

 また、カフェ車両では大きな窓から海を眺めつつ、松坂牛カレーや銘菓の赤福などが楽しめる。

しまかぜの洋風個室 Photo:PIXTA

 料金は大阪難波~賢島で5460円と、通常の近鉄の特急よりも1000円以上高い。個室はさらに1050円の料金もかかる。それでもこの豪華仕様を考慮すれば十分納得できる。

 車両本数が少なく座席は争奪戦。乗りたい時期に合わせて、できるだけ早めに予約しよう。

 私鉄特急は、ライバルと差別化するためにも工夫を凝らした車内仕様や、コスパの良さが魅力。旅行や出張で活用して、快適な移動を楽しんでほしい。