新入幕の草野が敢闘賞と技能賞をダブル獲得 父も親戚も競輪選手 恵まれた身体能力で出世街道を爆走する
大相撲名古屋場所千秋楽は27日、IGアリーナで行われ、25歳の琴勝峰が1差で追っていた安青錦を突き落とし、13勝2敗で初優勝を果たした。
関脇対決は若隆景が霧島を寄り切って10勝。新入幕の草野は敢闘賞と技能賞を初受賞した。
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◆子どもの頃には自転車で競輪場のバンクを疾走
新入幕だった大相撲名古屋場所で千秋楽まで優勝争いを演じ、自身初の三賞となる敢闘賞と技能賞をダブル受賞した草野は初土俵から8場所目。スピード出世に髪の伸びが追いつかず、大銀杏(おおいちょう)を結えないまげ姿で「幕内優勝の挑戦は始まったばかり」と前を向く。
敢闘賞と技能賞を受賞した草野=IGアリーナで(田中久雄撮影)
6歳から相撲に熱中した。日大4年時には学生横綱に輝いた大器だ。先代宮城野親方(元横綱白鵬)への弟子入りを希望したが、入門直前に部屋が閉鎖。昨年夏場所、転籍先となった伊勢ケ浜部屋から幕下最下位格付け出しで初土俵を踏んだ。身長183センチ、体重151キロと均整の取れた体で生み出す速攻相撲を身上にしている。
父は元競輪選手。「親戚に5、6人プロの競輪選手がいる」という家系で育ち、高い身体能力を受け継ぐ。幼少期、初めて訪れた競輪場で傾斜のきついバンクを、怖がることなく自転車で駆け抜け、プロ選手を驚かせたこともある。
本名はしこ名と同じ。有明海に面する熊本県宇土市出身で、「体幹とバランス感覚はあるタイプ」とサーフィンはお手のもの。角界でも、私生活でも波に乗っている。(丸山耀平)
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◆安青錦は外国出身の最速初Vならず…「相撲人生これから」
外国出身力士の最速初優勝は、かなわなかった。ウクライナ出身の安青錦は「プレッシャーはあった。いつもと違う感じ」。未体験の重圧に苦しみ、勝てば優勝決定戦に持ち込める一番で、琴勝峰に敗れた。
琴勝峰(左)に敗れ引き揚げる安青錦=IGアリーナで(田中久雄撮影)
取組内容もこれまでとは違った。下に落ちない相撲が強みなのに、右からの突き落としをあっさり食らってしまった。「体がついていかなかった」。大一番で力を発揮できなかった未熟さを認めた。
新入幕から3場所続けて11勝し、初の金星と技能賞を獲得。来場所は初土俵から所要12場所での新三役が確実で、年6場所制となった1958年以降初土俵の力士では最速(幕下付け出しを除く)となる。「一番のライバルは自分。来場所こそ、この経験を生かしたい」と自信も深めた。
外国出身の最速初優勝の記録は、初土俵から所要24場所で優勝した朝青龍。更新するチャンスは、十分残っている。「まだ21歳。相撲人生はこれからです」。負けを引きずる様子は、全くなかった。
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◆若隆景が大関とりへ大きな白星
関脇若隆景が大関とりの足場固めに成功した。霧島を寄り切って10勝に到達。先場所で12勝を挙げており、来場所で11勝すれば、大関昇進の目安とされる三役での3場所で33勝に届く。「9勝と10勝では違う」と自らも認める大きな白星だった。
若隆景(右)が寄り切りで霧島を破る=IGアリーナで(田中久雄撮影)
今場所は3日目から格下に3連敗しており、「この結果で満足しているようでは。悔しい気持ちが強い」とも。「来場所に向け、しっかり体と気持ちをつくりたい」と誓った。(対比地貴浩)
三賞の記念撮影前、言葉を交わす草野㊧と安青錦=IGアリーナで(田中久雄撮影)
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