【参院選・激戦区ルポ】参政党・さや氏は追い風に乗り「善戦」? 山尾志桜里氏はよしりんの応援を受けて…
7月20日投開票の参院選が3日公示され、選挙戦が始まった。改選数6に欠員分1が加わり、7議席を32人で争う東京選挙区。都議選で躍進した参政党から立候補のさや氏(42)は報道各社の情勢調査などで「善戦」が伝えられる一方、急転直下、無所属での立候補となった山尾志桜里氏(50)は「苦戦」と報じられている。2人の選挙戦とは――。
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参政党から出馬したさや氏(42)は7月4日、うだるような暑さの中、東京・谷中銀座商店街を練り歩いていた。
「新しい党なんです。自民党が嫌だなと思ったらぜひ、参政党にお願いします」
■握手を求めてくださる方が本当に増えた
そして、さや陣営は聴衆に「平仮名2文字で、さやでございます。ぜひ握手してください。日本人ファーストを掲げております」「1、2、参政党です。ぜひ握手してください」などと語りかけていた。
街頭演説でさや氏は「参政党に今、大きな風が吹いております。都議会選挙で3名の都議会議員が輩出しました。地方議員は150名以上です。国会議員は5名誕生しております。みなさん、この勢いに乗って、しっかりとした経済政策を果たせる参政党に力を貸してください」
商店街の人々は、さや氏が話しかけると、おおむね好印象。通り掛かった男性は「日本人ファーストか、そうだな」などと言い、さやと握手していた。
街頭演説後にさや氏に話を聞くと、「握手を求めてくださる方が本当に増えたなと思います。風は感じていますね」。
政権与党の自民党については、「私の実感では、ほとんどの国民が自民党のやっている政策に関して満足していないと思います。今の生活が苦しいと感じている方たちが、自民党を選び続けることはおそらくない。そもそも選挙に参加したくないというような理由で、5割が投票権を無駄にしています(前回参院選の東京選挙区の投票率は56.55%)。失望している人の受け皿になれるのは、国民目線の私たちだけ」と力を込めた。
政治の世界に足を踏み入れる前まではシンガー・ソングライターとして「ラブ&ピース」のスピリットで歌っていたさや氏。「(ジョン・レノンの)イマジンの世界。まさに国境をなくせというほうでした。戦争を防ぎたいとか戦争のない世の中にしたいというのは、今も変わっていない。その選択肢としていろんな可能性がある。今は日本がすべきことというのは、自国で自国を守れる態勢を作るべきじゃないかというふうに考え方が変わっていった」
きっかけは元航空幕僚長の田母神俊雄さんだったという。
「番組で6年間ご一緒させていただきましたので。『だいぶ右に振り切れた』と言われるんですが、ヨーロッパもアメリカも、自国をどう守るかを大事に考えています。自国ファーストというのを各国が打ち出している中で、日本が自国ファーストじゃないとバランスがとれないですよ。そういう意味では今でいうところの王道じゃないかと思っています」
参政党に入党したのは直近だ。「ただ、議員さんとはよく番組でご一緒していました。参政党の神谷宗幣代表とは『チャンネル桜』でも会いましたが、神谷さんがまだ吹田市議の頃から存じあげているんですね。話もたくさん聞いていましたので、理念とかは共感する部分が大きかったです」
■「まだなんとも読めません」
7議席をめぐり32人が立候補した東京選挙区。一部報道はさや氏の優勢を伝えている。
「ありがたいですけど、激戦です」
公示直前に立候補を表明した無所属の山尾志桜里氏(50)については、「かなりウィングが広いという印象です」
参政党は、選挙区に45人、比例代表に10人の計55人を擁立した。参政党の選対関係者によると、目標は当選6人だという。東京選挙区をどう見ているのか。
「前回の参院選(2022年・改選6)は山本太郎さんが得票率9.0%で、6人目の当選。落選となった得票率が7番目の海老澤由紀さんが8.4%だった。そのくらいが今回のボーダーラインになるのかなと見ています」
参政党は6月22日投開票の東京都議選で、立候補した4人中、3人が当選。報道各社による参院選の比例投票先を尋ねる世論調査でも、約6%~7%と上昇傾向だ。
「都議選での参政党の得票率は世田谷区10.9%、練馬区10.3%、八王子市9.0%、大田区8.7%といずれも8.4%を上回っています。これら立候補した4つは温まっている。ただほかが未知数で、まだなんとも読めません」と引き締める。
■「もう、吹っ切れてますから」
国民民主党から比例代表で立候補予定だったが過去の不倫疑惑などが問題視され、公認取り消し。一転、東京選挙区から無所属で出馬となった山尾氏は5日、東京・池袋で『ゴーマニズム宣言』や『おぼっちゃまくん』で知られる漫画家の小林よしのり氏とともに街頭演説した。
白いスーツで現れた小林氏は「国民民主の玉木(雄一郎)代表から(山尾氏は)徹底的にいじめられた」と話し、「国民民主党をぶっ潰す」と宣言した。
「山尾さんから出馬すると私が報告を受けてから、公認取り消しになるまで、2カ月くらいしかなかった。そんなムチャクチャな話はない。山尾さんは真面目な方だから『国民民主党に復讐はしない』と言いますが、ワシは復讐しますよ(笑)、情念の人間だから。山尾さんは悪党ではないから美学を貫いてください。ワシが悪党を引き受ける」
街頭演説では山尾氏は6月10日の過去の言動についての釈明会見の沈うつな表情とは一変。伸び伸びと、心からの笑顔を見せて手を振っていた。街頭演説終了後、山尾氏に、「きょうはイキイキしていますね」と話しかけると、山尾氏は笑顔で「もう、吹っ切れてますから」と返した。
(AERA編集部・上田耕司)
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東京選挙区ではこのほか、共産の吉良佳子氏、れいわの山本譲司氏、無所属の吉永藍氏、無所属の土居賢真氏、諸派の藤川広明氏、社民の西美友加氏、保守の小坂英二氏、諸派の峰島侑也氏、自民の武見敬三氏、立憲の奥村政佳氏、国民の牛田茉友氏、諸派の酒井智浩氏、諸派の福村康広氏、諸派の桑島康文氏、諸派の渋谷莉孔氏、国民の奥村祥大氏、諸派の吉田綾氏、自民の鈴木大地氏、立憲の塩村文夏氏、無所属の吉沢恵理氏、諸派の市川たけしま氏、公明の川村雄大氏、維新の音喜多駿氏、無所属の平野雨龍氏、諸派の千葉均氏、無所属の増田昇氏、諸派の辻健太郎氏、諸派の早川幹夫氏、諸派の石丸幸人氏、無所属の高橋健司氏が立候補している。