「政府やJAに不信感」「日本がなくなるのでは」…令和の米騒動で高まる不安 納得できる「適正価格」は【AERAアンケート結果発表】
日本人の「主食」として、これまで毎日なにげなく食べていたお米をめぐる「令和の米騒動」。昨春ごろは5キロ2千円台だった米価は4千円台で高止まりしており、お米の「適正価格」が話題になっています。AERA編集部の実施したアンケートで、「適正価格」として最も多かったのは「2501~3000円」。消費者として安価なお米を求める一方、安定的な生産のために農家の利益を考慮すべきという意見が目立ちました。
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今回の読者アンケートのテーマは「お米」。インターネット上で5月28日から6月4日まで実施し、回答者は933人でした。
まず、みなさんのお米を食べる頻度について聞きました。最も多かったのが「1日2回ほど」の44.9%。続いて多かったのが「1日1回ほど」の27.4%、そして「1日3回ほど」の18.9%でした。
高止まりが続いている米価の影響については、お米を食べる頻度が「かなり減った」「やや減った」はあわせて3割ほど。7割が「変わらない」でした。
お米の代わりに食べる機会が増えた食材については、「ない、変わっていない」が43.1%でしたが、最も多かった食材が「パン」(38.6%)。そのほかは「うどん」(33.3%)、「パスタ」(27.7%)、「ラーメン」(24.1%)などと続きました。
食事の際の「かさ増し」などのためのアイデアも、多く寄せられました。
「安くて高たんぱくな”おから料理”を増やして、おかず中心の食事にしている。お米には押し麦を混ぜて、かさ増ししている」(50代、男性)
「うすあげやちくわ、白菜を使っています。お米を食べる量は変わらないが、時々かさ増しに使う事があります」(50代、女性)
「自分は、もやしです。野菜炒め・ラーメン・焼きそば・ナムルにもなるし、安くて美味しいです」(50代、男性)
「何もかもが値上がりしているので、かさを増すというより、食材の単価を落としています。キノコやモヤシなどを多用するなど」(60代、女性)
■買うなら「国産の米」
また、お米を選ぶ際に重視していることについても聞きました。
約6割が選び、最も多かったのが「国産の米であること」(59.2%)で、「価格が安い」(40.4%)を上回りました。そのほかは「銘柄」(31.9%)、「好みの味」(15.8%)などでした。
スーパーなどでは、海外産のお米も販売されるようになっていますが、みなさんの評判はどうなのでしょうか。
「外国産の米(タイ米など)に対する抵抗感を持っている人が多い気がします。チャーハンにすれば大丈夫なんていう声もありそうですが、そういう声も美味しくないという前提で言っているのだと思います。 1990年代のタイ産の米の味を私は知りませんが、少なくとも現代のタイのお米は軽くてさっぱりしていて食べやすく、美味しいと思います。日本に輸入される高級米に限った話ではなく、タイで食べた一般的なタイ米も美味しかったです。 おそらく品種改良などが進んで品質が向上したのだと思います。外国産のお米の味を語るのに、30年ぐらい前の時の味のイメージで語るのはナンセンスだと思います。国産=良品、外国産=劣等品というような偏見は持たないでほしいなと思います」(30代、男性)
■読者の考える「適正価格」は
5月末から、随意契約で販売された備蓄米の販売が始まりました。一方で、全国のスーパーなどで販売されている通常の銘柄米は、5キロあたり4200円程度で推移しています。
では、備蓄米ではない、通常のお米の価格は、生産者側の得られる利益もふまえると、どれぐらいが「適正価格」なのでしょうか。みなさんの考えを聞きました。
最も多かったのが、5キロあたり「2501~3000円」(29.6%)。しかし、「3001~3500円」は25.6%、「2001~2500円」も23.3%と、大きな差はありませんでした。なお、「3501~4000円」は7.0%、「1001~2000円」は6.9%でした。
昨春は5キロあたり2000円ほどだった米価が2倍に値上がりしていることについて、複数回答でたずねたところ、「生産者・農家のことを考えると、価格が安すぎるのはよくない」という意見は48.2%、「以前は安すぎたが、今は高すぎる」は44.8%でした。
そして、「以前の水準(2000円前後)がいい」は39.2%ありましたが、「生産者・農家よりも、消費者として価格をできるだけ下げてほしい」は11.4%にとどまりました。
また、「米の安定供給のため、これからはもっと米の生産を増やす方向がいい」は53.0%。「人口減もあって米の消費量は減るから、減反政策を維持・または進めるべきだ」は1.9%と少数派でした。
「美味しいお米を食べたいので米の値段が高くても備蓄米は食べたくない、もともと米の値段が安かったのだから米農家さんの事も考えて米の値段を上げても良いと思う」(40代、女性)
「米に代わる小麦を食べすぎての小麦アレルギーも怖いし、もともと子供が便秘がちで、パンよりご飯があっているし好きなので、お米が買えないことの方が困る。今後農家のなり手がいない現状を考えると、もっと農家の収入改善が必要と思う」(50代、女性)
■政府やJAに厳しい意見
今回の「令和の米騒動」をめぐって、過去に減反政策を続けてきた日本の農政や、生産・供給を担っているJAに対して厳しい意見が多く寄せられました。いくつか紹介します。
「お米の価格が1年で倍以上になり、食費の割合が多くなり、他に必要なモノを我慢しています。生産者の大変さやコストが上がったのは分かりますが、これほど値上がりするのがなぜか納得がいきません。政府や間に入っているJAや様々な業者に対して、とても不信感を持っています」(50代、女性)
「今までの農政大臣は何をやっていたのでしょうか? 物価高でお米だけが上がっているわけじゃないので、庶民の暮らしは本当に大変です。農家の人の生活もあるので多少の値上げは仕方ないですが、倍になればコメ離れが進んでしまいます。実際うちは、お米は今までの半分でいいやと思うようになりました。そしてこれ以上の高騰が続けば、お米からうどんやパンに切り替える予定です」(50代、女性)
「気軽に買えなくなった。スーパーを何件かまわり、安い米を買っている。都心から離れた田舎に住んでるため、備蓄米は売ってない。農家からどんな工程を経て商品棚に並ぶのか消費者にはわからない。無駄な工程がないか見直しが必要と思う」(50代、女性)
お米を生産している側からもコメントがありました。
「零細な兼業米農家です。儲かるなんて無理です。ほとんど持ち出し、周りは高齢化で不耕作地も増えてます。法人化してそれなりに儲かる農業に変えていかないと、日本の米は輸入に頼る事になりかねません」(50代、男性)
「我が家は2反半の田んぼを、JAを介して個別に契約しておコメを作ってもらっています。農業用水使用負担金、固定資産税、その他諸々の負担金は全部払っていますが、お米、使用料等の払い戻しは一切無しです。これだけお米の価格が上がっても一切無しです。これから高齢に伴い、続けていけない小規模米農家も増えると思いますが、この制度では農家の持ち出しばかりで生活は無理です。JAへは不信感ばかりがつのります。小規模農家は無償でJAへ田んぼの管理をお願いしなければならないでしょうか? 農政として、これから高齢化していく小規模農家の田んぼを維持管理して小規模農家のいろいろな負担を軽減して欲しいです」(70代、女性)
■拡大していく不安、不信
これまで当たり前に食べることができていた「主食」のお米が気軽に手に入らなくなったことで、政治やJA、流通業者などへの不信感、そして国全体もふくめた将来への不安感が高まっているように、寄せられたコメントからはうかがえます。
「コメが足りない理由は、ニュースなどで、説明されているが、あまり納得、なるほどと思ったことがない。何か、ほかに理由があるのでは?と勘ぐってしまいます。小泉さんにかわってからすぐに備蓄米が出回るようになったと、ニュースに毎日でています。今までは何をやっていたのですかね、とも思います。古米という表現もよろしくないと思います。農家の方が一所懸命作られたのに。騒動に踊らされている私達。冷静に見て選んで感謝して食べたいと思います」(50代、女性)
「人口が減っている中、稲作をはじめ農業をする人も減っています。食べる人も減っているとは思いますが、やはり生産者の減りが加速しているので、今後食べ物もまた、土地もどうなっていくのか心配です。国が土地を守っていく、農業をこれまで以上にサポートしていかないと、日本という国が無くなるのではないかとすら思ってしまいます」(40代、女性)
(AERA編集部)