五輪7→6→5→4→4位の上村愛子、34歳だった最後のソチで飛びきりの「愛子スマイル」
[冬の記憶]フリースタイルスキー女子モーグル 上村愛子
![[冬の記憶]フリースタイルスキー女子モーグル 上村愛子, 名言「なんでこんなに一段一段なんだろう」, パフォーマスはソチが一番, 1年休養、「覚悟」できた, 来年の五輪、デュアルに注目](https://jps.alongwalker.co/media/id/aHR0cHM6Ly9pbWctcy1tc24tY29tLmFr-YW1haXplZC5uZXQvdGVuYW50L2FtcC9l-bnRpdHlpZC9BQTFIcFR6TS5pbWc_dz04-MDA/ce2da2f9903194d51ab0a1f81d997dc9.jpg)
22歳で臨んだ2002年のソルトレークシティー五輪、公式練習に臨む上村愛子さん
五輪の名場面をアスリートが振り返る「冬の記憶」。2014年ソチ五輪はフリースタイルスキー女子モーグルで日本のエース、上村愛子さん(45)にとって5大会連続、そして最後となった五輪でした。(聞き手、東京本社運動部・畔川吉永)
名言「なんでこんなに一段一段なんだろう」
――2010年バンクーバー五輪は4位。高校生で初出場した1998年長野五輪の7位から大会ごとに一つずつ順位を上げましたが、五輪4大会目でメダルに届かず、「なんでこんなに一段一段なんだろう」と涙を流しました。
その大会までは、自分が日本のモーグルを引っ張らないといけない――という気持ちだったし気負いもあったかもしれません。自分で自分に勝手に重圧をかけて戦っていたのかも。
――1年間の休養をはさんで、その後3年の競技生活を経て、34歳で臨んだのが14年のソチ五輪。シーズン中に第一線から退くことは決めていました。
自分の中ではあのシーズンで引退すると考えて過ごし、そんな中で出場できた五輪でした。(14歳でモーグルに出会って)20年間、五輪がずっと目標でした。目標の舞台を目指すのもこれで最後だなという気持ちでした。
パフォーマスはソチが一番
――予選からレースが進むにつれてタイムも速くなりターンやエアの切れも増したように見えました。
五輪前に世界ランクを上げる事ができず、周りからの印象としてはメダルの可能性は(バンクーバーに比べて)低い選手だったと思います。けれどメダルをつかみにいきたいと思い、レースでは前に行けました。バンクーバーがメダルには一番近い状況だったかもしれませんが、実際のパフォーマンスと内容はソチが一番よかったと思います。
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ソチ五輪フリースタイル女子モーグルで優勝したジュスティーヌ・デュフールラポワント(左)と抱き合う上村愛子さん(2014年2月8日)
ターンの完成度やエアの難易度などがメダリストに比べて少し劣っていたからこその順位だと思いますが、一番緊張するはずの決勝の最後のレースで一番の滑りができたのが良かったです。
――結果は日本勢トップの4位でしたが、この時の「愛子スマイル」が印象的でした。
メダルに絡める良いパフォーマンスができたのが良かったし、『やり残した感』はなかったです。本番まではそれ以上の準備はできなかったし、本当に全部出し切れた。これで終わりで寂しいとか悲しいではなくて、5大会目もそのレベルでチャレンジできたことがうれしかったです。
1年休養、「覚悟」できた
――3年間という短い準備期間がいい方向に向いたのでしょうか。
1年間お休みして、その間に日本チームのほかのみんなが頑張っていて、端から見て他の選手がすごく素敵に見えました。最初は追いつかない部分もあったけれど、(復帰して)みんなに追いつきたい、世界で戦えるための努力をして行きたいと考えました。3年といういつもより短いスパンだったので逆に覚悟できたのかなと思います。
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ソチ五輪の決勝2回目の滑りでエアを決める上村愛子さん(2014年2月8日)
それまでは、毎シーズン同じレールの上にずっと乗っている感じである意味安定していたのかも。ソチに向けてはとにかくチャレンジしたいという気持ちで取り組んだのですが、実は体力測定の結果が過去一番良かったりしました。それにすべりでいくら悩んでもソチの次はないんだと納得しながら毎日過ごすこともできました。
――シーズン終了後の現役引退記者会見では「本当に幸せな競技人生でした」と、ここでも笑顔でした。
ありがたかったのは後輩が伸びていたことです。後は後輩たちの活躍を楽しみにしたいという気持ちでしたね。
来年の五輪、デュアルに注目
――後輩たちが活躍し、ミラノ・コルティナ五輪を迎えます。
イタリアは現役時代から何度も訪れていますが、すごく楽しみな大会です。欧州の国らしくスキーに対する情熱があり、文化や歴史として冬季競技が根付いています。アルペンスキーやクロスカントリーといったクラシカルの競技は特に人気で、観客の皆さんが試合を観戦しながらその場の雰囲気を楽しむのがすごく上手です。
モーグルは比較的新しい競技ですが、選手のスタートからゴールまで全部一目で見れますし、音楽も流れます。(ワールドカップなどでは)モーグルもイタリアのお客さんに楽しんでもらえていたと思います。ここ2大会はアジアでの五輪開催が続いていました。久しぶりに欧州での開催という事も楽しみですし、今の日本代表のみんながそれぞれのパフォーマンスを出し切って勝負していく姿を応援できるのが楽しみです。
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上村愛子さん(2022年10月)
――モーグルは今回から2人が並走する「デュアルモーグル」も新種目で追加されました。
シングルとデュアルはスピード感も違います。デュアルは相手選手がいるので、どんどん勝負が白熱する。相手と競り合うおもしろさがありますね。
――日本勢は世界選手権で男女ともにメダルを獲得するなど活躍しました。
男子は堀島行真選手(トヨタ自動車)とミカエル・キングズベリー選手(カナダ)の技術が飛び抜けていて、どちらかが五輪で一番になるだろうとみんな想像しています。女子もエアの難易度が上がり、私が現役時代に一生懸命やろうとしていたことが皆、当たり前にできるようになっている。どの選手も4年間でどんどん伸びています。自分たちがやってきたことをしっかり出し切った先に結果はついてくると思います。