球界ここだけの話 ヤクルト・石山泰稚「今までやらなかったことを思い切ってやろうと」 シーズン完走を見据えて調整での〝働き方改革〟とは…

ヤクルト・石山泰稚

〝働き方改革〟で長丁場のシーズンを走り抜ける。ヤクルト・石山泰稚投手(36)が、抜群の安定感で救援陣の中心としてチームを支えている。

プロ13年目の今季は、4月5日の中日戦(神宮)でNPB史上21人目となるイニング3者連続三球三振の「イマキュレートイニング」を達成するなど、4月24日時点で8試合連続無失点。さらに無安打無死四球と一人の走者も許さない圧巻の投球を続けている。

2018年には、自己最多の71試合に登板するなど通算535登板の実績を誇る。〝再覚醒〟の予感を漂わせているベテランは、キャンプ前から標準に定めるシーズン終盤でのフル回転に向けて、調整面で新たに貫く信念がある。

「極力、投げない。極力、休む」

練習をしないなどといった、決してネガティブな意味合いではない。シーズン完走を見据えての大胆な決めごとだが、短い言葉の背景には昨季の苦い経験が根底にある。昨季は3年ぶりのセーブを記録した一方で、9月以降は2軍調整が続き37試合の登板で防御率4・35、5セーブ、8ホールドにとどまった。

「去年はただ単純に一年間もたなかった。野球ができる年数も限られてきていると思うので、今までやらなかったことを思い切ってやろうと思って」

年々変化する体と向き合い続けて13年目。30歳代半ばで初挑戦することになった調整法だった。2月の沖縄・浦添キャンプでも「若いときみたいに2月1日に合わせてやる感じでもない。ずっとそうやってきたけど、今年はゆっくりやろうと思う」とマイペース調整を続けていた。

スワローズ一筋で歩んできた石山は、坂本勇人、田中将大(ともに巨人)、米大リーグのタイガースの前田健太らと同じ1988年生まれ。プロ野球界を長らく席巻してきた88年世代も今年で37歳となる。「今はこうやって抑えていますけど、ポンポンと打たれて、調子が悪くなって考え出すと投げたりするけど、そこでも〝投げない〟を貫いてやろうと思う」。背番号12が貫く新たな試みの真価は、勝負どころの9月に発揮される。(樋口航)