楽天・島内、日本ハム・今川、巨人・今村… 実績十分もファームが定着、交流戦後に「トレード」が囁かれる選手たち

 6月3日から開幕したセ・パ交流戦。両リーグの意地がぶつかった熱戦が全国各地で繰り広げられているが、気になるのは交流戦後のトレード補強だ。昨年は交流戦を終えて間もなく巨人の松原聖弥と西武の若林楽人の交換トレードを両球団が発表。7月上旬にはソフトバンクの野村大樹と西武の齊藤大将の交換トレードを両球団が発表した。

「下位に低迷している球団は戦力のテコ入れとして、トレードでの補強を検討しているでしょう。実績がありながらファーム暮らしの選手、潜在能力の高さを発揮できていない選手は有力候補になります。各球団を見渡すと、環境を変えれば輝ける可能性がある選手が少なくありません」(スポーツ紙デスク)

■ファーム暮らしが続く元打点王

 トレード候補として、実績が抜きんでているのが島内宏明(楽天)だ。勝負強いクラッチヒッターとして中軸を担い、2021年に打点王、22年に最多安打のタイトルを獲得した。だが、23年以降は出場機会が減少し、昨年は5月下旬に登録抹消されると以後はファーム暮らし。今年も開幕をファームで迎え、5月20日に1軍昇格したが、5試合出場で10打数無安打と結果が出ないと10日後に登録抹消された。

「楽天は前パドレスのオスカー・ゴンザレスの獲得を発表し、20年にア・リーグ本塁打王に輝いたルーク・ボイトの獲得交渉もしています。ゴンザレスは外野の両翼を守り、ボイトは一塁と指名打者での起用が予想されるため、ポジションが重なる島内の立場はさらに厳しくなります。今年はコンディション不良で出遅れましたが、ファームでは鋭いスイングを見せています。球団を支えてきた功労者ですが、35歳という年齢を考えると出場機会が増える環境でもう一花咲かせてほしい。貧打で苦しむ球団は獲得を検討する価値がある選手です」(仙台の民放テレビ関係者)

■ファームでは4割打者だが…

 他球団の評価が高い選手として名前が挙がるのが、今川優馬(日本ハム)だ。22年に自己最多の10本塁打を放って頭角を現したが、その後は出場機会が減少。今年はオープン戦で打率.308、1本塁打をマークして開幕1軍切符をつかんだが、11試合出場で打率.143、0本塁打とアピールできず、5月中旬にファーム降格している。イースタンリーグでは打率.408と格の違いを見せていることから、環境を変えれば1軍で活躍する力を秘めている。日本ハムは首位をキープしているが、手薄なリリーフ陣の補強に乗り出す可能性があり、交流戦後の戦力補強が注目される。

 能力を生かし切れていないという観点でいえば、濱田太貴(ヤクルト)が当てはまるだろう。広角に長打を放つ豪快なスイングで23年には103試合に出場して打率.234、5本塁打をマークしたが、その後は伸び悩んでいる。今年は開幕1軍入りしたが、10試合出場で打率.059、0本塁打とふるわず4月中旬以降はファーム生活に。イースタンリーグでも打率1割台と結果が出ていない。パ・リーグ球団のスコアラーは「最初に見た時は『凄い選手が出てきたな』と思いましたが、その後は思い切りの良さが失われているように感じます。何かきっかけをつかめば大化けするかもしれない。トレード移籍は選択肢の一つだと思います」と話す。

 センターを守れるチャンスメーカーとして計算できるのが、関根大気(DeNA)だ。21年から3年連続100試合以上に出場し、23年は140試合出場で自身初の規定打席に到達し、打率.261、3本塁打、31打点、チームトップの11盗塁を記録した。だが、外野陣は度会隆輝、梶原昂希、蝦名達夫が台頭してきたこともあり、昨年は79試合出場に減少。今年は1試合出場のみだ。

「俊足巧打で自己犠牲の精神が強い選手です。努力家で野球に向き合う姿勢も素晴らしい。DeNAは外野の層が厚いので出場機会に恵まれませんが、29歳とこれから選手として脂が乗り切る時期に入ります。センターが手薄な球団は獲得に乗り出しても不思議ではない」(DeNAの球団ОB)

■巨人は得点力不足解消にトレードの可能性

 投手に目を移すと、1軍で実績十分の今村信貴(巨人)、堀瑞輝(日本ハム)、上原健太(同)は今季1軍登板がない。

 巨人はリチャードをトレードで獲得した際、秋広優人と共に左腕の大江竜聖を放出しているため、左腕の今村をトレードの交換要員にするか判断が分かれるところだが、巨人を取材するスポーツ紙記者は「中川皓太、石川達也、バルドナードに加えて、ファームに変則サイドの高梨雄平、ロングリリーフができる横川凱、プロ2年目の又木鉄平と左腕が不足しているわけではない」と指摘する。岡本和真が左肘靭帯損傷で長期離脱した打線は得点力が下がっており、リチャード獲得に続いてトレードを敢行する可能性がある。

 トレード移籍は、選手にとって人生を変えるチャンスだ。中日で1軍定着できなかった郡司裕也は23年途中に日本ハムにトレード移籍すると、昨年は自己最多の127試合出場で打率.256、12本塁打、49打点をマーク。今年は早くも3度のサヨナラ打を放つなど、チームに不可欠な存在になっている。西武時代に打撃の確実性が課題だった若林もトレード移籍した巨人でボール球に手を出さなくなり、今年は打率と出塁率が大幅にアップ。開幕から一度もファームに降格することなく、1軍で奮闘している。

 シーズン後半に向けてどうやって戦力を増強するか。交流戦が進む間に、各球団はグラウンドの外でも戦いを繰り広げている。

(今川秀悟)