巨人・田中将大は広島戦が厳しい正念場に 「まだ2軍でフォーム固めが必要」と指摘する声
昨年限りで楽天を退団し、新天地の巨人で復活を目指す田中将大だが、現在はファームで再調整を行っている。4月25日には2軍の日本ハム戦で登板し、2回をパーフェクトで抑えた。次回の1軍登板は5月1日の広島戦(東京ドーム)の予定で、日米通算199勝目を目指すが、その難易度は高い。
「首位を快走する広島は小園海斗、末包昇大、ファビアンのクリーンアップを中心に状態が良い選手が多い。立ち上がりがカギになります。先制点を奪われるような試合展開になると、勢いに乗った相手打線に集中打を浴びて大量失点を喫する危険性があります」(スポーツ紙デスク)
移籍後初登板となった4月3日の中日戦では、5回5安打1失点と試合を作り、23年8月以来586日ぶりの勝利を飾ったが、喜びは続かなかった。17日のDeNA戦では2回7安打6失点と打ち込まれて早々にKOされた。楽天時代から取材してきたスポーツ紙記者はこう語る。
「DeNA戦では最速149キロを計測して制球力もそこまで悪くなかったと思いますが、直球に速さが感じられない。昨年までの楽天時代も球速は140キロ中盤を計測していましたが捉えられ、変化球に対応されていました。巨人で久保康生巡回投手コーチとフォーム改造に取り組んでいることが報じられていましたが、昨年までと比べてそこまで大きな変化は感じなかったですね」
田中は2月の春季キャンプから、久保コーチの助言を受けながら投球フォームの修正に取り組み、横振りになっていた体の回転を「縦振り」にする動きを繰り返していた。縦振りにすることでリリースポイントの位置が高くなり、体重が乗った力強い球を投げ込める。田中の生命線は直球だ。全盛期は躍動感あふれる直球で相手打者をねじ伏せていた。スプリット、スライダーなどの変化球も、直球の球威があってこそ生きてくる。ただ、「言うは易く行うは難し」。一度体にしみ込んだ動きを修正するのは容易ではない。
巨人の球団OBはこう語る。
「投球フォームを大幅に修正する時は考え方から変えなければいけない。でも、それが難しいんですよ。昔のフォームで抑えていたイメージを体が覚えているので、常に意識しないと戻ってしまう。田中は久保コーチに指導を受けてからまだ日が浅い。そう簡単には変わらないですよ。ある程度の時間が必要です」
■2年がかりだった菅野のフォーム修正
昨年15勝をマークし、完全復活した菅野智之(現オリオールズ)が良い例だろう。23年のシーズン途中から久保コーチと二人三脚でフォームの修正に取り組んだ。この年は4勝8敗に終わったが、翌年の復活劇につながった。
菅野と対戦した他球団の選手は変化を口にしていた
「リリースポイントが高くなり、角度のある直球で思った以上に差し込まれました。球速は前年と大きく変わらないですけど、キレが全然違いましたね。あとはフォークも厄介でした。落差が大きくなり、スライダー以外に縦の変化もケアしなければいけなくなったので攻略が一気に難しくなりました」
菅野がフォーム改造に取り組んだ時間の長さを考えると、田中もすぐに成果が出るとは考えづらい。そして、巨人の先発ローテーションを考えると、大きな重圧を背負い込む必要はないだろう。エースの戸郷翔征は精彩を欠いてファームで再調整しているが、山崎伊織、井上温大、赤星優志、新加入の石川達也が安定した投球を続けている。ファームにはグリフィンが控え、救援でロングリリーフが可能な横川凱も先発で活躍できる力を持っている。
「戸郷、グリフィンの状態次第ですが、田中は次回登板の広島戦で結果が出なければ、ファームで投球フォームを固める作業に打ち込むプランが考えられます。シーズン終盤に戦力になってくれれば十分ですし、今季中の通算200勝の達成も可能だと思います」(巨人を取材するスポーツ紙記者)
名球会入りの条件である通算200勝は、打者の通算2000安打よりハードルが高い。2015年からの10年間で、打者の2000安打達成者は11人いるが、200勝を達成した投手は16年の黒田博樹、昨年のダルビッシュ有の2人だけだ。
「先発、中継ぎの分業制が確立して規定投球回数に到達する投手が減っている中、200勝を達成するのは至難の業です。昨オフに楽天を退団し、一度は現役続行の危機を迎えた田中は、野球ができる喜び、1勝の重みを肌で感じたと思います。大記録は通過点に過ぎないかもしれませんが、早く達成したい思いは強いでしょう」(スポーツ紙デスク)
5月1日の広島戦で王手をかけられなくても、じっくり再調整して挑んでほしい。田中が大記録を手にする姿を、多くのファンが期待している。
(今川秀悟)