打線が苦しい巨人の電撃トレードは続く? トレード要員候補に小林誠司らの名前、狙い目は楽天の元打点王か

 巨人が苦しい戦いを続けている。5月15日の広島戦で1-5と敗れ、今季初の4連敗。最大5あった貯金を吐き出して勝率5割に戻り、4位に転落した。

 大きいのが主砲の不在だ。4番を担ってきた岡本和真が5月6日の阪神戦で一塁守備の際、打者走者の中野拓夢と衝突して左肘を負傷、長期離脱することになった。打率.308、8本塁打、25打点と好調だっただけに、大きな痛手だ。

 岡本不在で迫力不足の打線を立て直そうと、球団フロントは緊急補強に動いた。秋広優人と大江竜聖を交換要員に、ソフトバンクのリチャードを獲得するトレードが、12日に両球団から電撃発表された。秋広は将来のクリーンアップ候補と言われていただけに波紋を呼んだが、スポーツ紙デスクが舞台裏を明かす。

「巨人がリチャードの獲得を熱望したようです。ソフトバンクの球団内ではトレード敢行に否定的な意見があったようですが、秋広を獲得できることで成立した。リチャードはウエスタンリーグで5年連続本塁打王を獲得するなど、長打力は球界屈指の能力を持っていますが、なかなか1軍に定着できなかった。本人が昨オフに球団と交渉の席でトレード志願していましたし、巨人移籍が野球人生の転機になるかもしれません」

■リチャードに過度な期待は禁物か

 リチャードはトレード移籍してすぐの13日の広島戦に「7番・三塁」で先発出場すると、5回に森翔平の直球を振り抜いて左中間に名刺代わりのアーチを放ってアピールした。打線の起爆剤になれるか注目されるが、ソフトバンクを取材する福岡のテレビ関係者は「過度な期待は禁物です」と強調する。

「リチャードはボールを遠くへ飛ばす能力だけで言えば山川穂高にも引けを取りませんが、ファームでも打率が低かった。コンタクト能力を上げなければ巨人でスタメン定着は難しいと思います」

 近年は戦力層の厚いソフトバンクで出場機会に恵まれず、他球団に移籍して素質を開花させた選手が目立つが、リチャードがその境遇に当てはまるかというと判断が難しい。今年は栗原陵矢が故障で離脱したため、開幕から三塁で先発出場していたが、ソフトバンクでは6試合出場で打率.091、0本塁打と結果を出せずファームに降格。ウエスタンリーグでも21試合出場で打率.162だった。今年に限らず、1軍で何度もチャンスを与えられてきたがモノにできず、一昨年から本塁打ゼロ。13日の広島戦のアーチは1軍では3年ぶりの本塁打だった。巨人で定位置をつかむためには、持ち味の長打力を発揮するとともに確実性を上げられるかが大きなポイントになる。

■巨人はまだ強打者が欲しい

 リチャードの活躍が未知数なだけに、巨人を取材するスポーツ紙記者は、「巨人は今後も電撃トレードを行う可能性がある」と分析する。

「右大腿二頭筋筋損傷でリハビリが続いていた丸佳浩がファームで実戦復帰しましたが、打撃不振の坂本勇人は1軍昇格のメドが立っていません。エリエ・ヘルナンデスも精彩を欠いていますし、得点力を上げるためにはクリーンアップを打てる強打者が欲しい」

 即戦力の強打者を補強するのは容易ではないが、球界関係者はこう語る。

「可能性の話ですが、トレード移籍があり得るのは楽天の島内宏明です。打点王、最多安打を獲得した実績がありますが、近年は故障と若手の台頭で出場機会を減らしています。今年もコンディション不良で出遅れましたが、ファームで実戦復帰して、鋭いスイングを見せています。打撃はまだまださびついておらず、トレードのコマになることは考えられます」

 楽天と巨人の間では積極的にトレードが行われており、20年のシーズン途中に楽天のゼラス・ウィーラーと巨人・池田駿のトレードが成立。巨人に移籍したウィーラーは勝負強い打撃を発揮し、同年のリーグ優勝に貢献している。

 秋広を放出したように、トレードで欲しい選手を獲得するためには出血覚悟になる。巨人で交換要員の有力候補とささやかれるのが小林誠司、今村信貴だ。

■1軍出場がなく厳しい立場の小林

 小林は今季1軍出場がないが、昨年は菅野智之(現オリオールズ)が登板した全試合で先発マスクをかぶって復活をサポートし、菅野とともに最優秀バッテリー賞を受賞した。だが、昨オフにソフトバンクの正捕手だった甲斐拓也がFA移籍で加入し、厳しい立場に追いやられた。1軍は甲斐が正捕手を務め、岸田行倫、大城卓三が控えている。他球団の首脳陣は「経験に裏打ちされた守備の安定感は小林の大きな強みです。数字に表れにくいですが、彼はまだまだ1軍でプラスをもたらせる選手ですよ」と高い評価を口にする。

 今村は今季1軍登板がないが、イースタンリーグで防御率1.80と安定した投球を続けており、左腕のリリーバーがコマ不足の球団には戦力となりえる。

 昨年リーグ優勝を果たした巨人がこのまま下位に低迷しているとは思えない。トレードを含め、戦力をどのように整備して逆襲を図るか、目が離せない。

(今川秀悟)