阪神・小幡竜平、「球児さんの引退試合を自分が壊してしまった」と悔やんだ男が5年越し借り返した! 球児虎の窮地救う超美技

八回、巨人のトレイ・キャベッジが放ったライナーに飛び込む阪神・小幡竜平。グラブの先に白球をおさめた=西宮市・甲子園球場(撮影・林俊志)

(セ・リーグ、阪神6-2巨人、5回戦、阪神5勝、26日、甲子園)超満員の甲子園で「小幡コール」が鳴りやまない。絶体絶命のピンチで阪神・小幡竜平内野手(24)が見せたスーパーダイブ。こだわり続けた守備で、及川、そして藤川虎を救った。

「球が入ってくれた感じ。反応ですけど、入ってくれてよかったです」

1点もやれない場面で白球に飛びついた。2-2の八回1死満塁。一打勝ち越しのピンチで内野は前進守備を敷いた。打席には左の強打者、キャベッジ。低く痛烈なライナーが三遊間寄りを襲ったが、小幡が184センチの体を投げ出し、グラブの先で打球をつかんだ。転がりながら着地しても、決してボールをこぼしはしない。そして、ゲームの流れが変わった-。2死満塁から代打・大城卓の遊ゴロも難なく処理して無失点に切り抜けると、球場のボルテージは一気に上昇。その裏の勝ち越し劇につながった。

八回、巨人のトレイ・キャベッジが放ったライナーに飛び込む阪神・小幡竜平。グラブの先に白球をおさめた=西宮市・甲子園球場(撮影・林俊志)

並々ならぬ思いで、藤川阪神で戦っている。2020年11月10日、その年限りで現役を退くことを発表していた藤川監督の引退試合で、当時2年目の小幡は「8番・二塁」で先発。しかし、決勝点となる適時失策を犯した。自身のミスで、日米通算245セーブを挙げたレジェンドの花道を、白星で飾ることはできなかった。

八回、巨人のトレイ・キャベッジが放ったライナーに飛び込む阪神・小幡竜平。グラブの先に白球をおさめた=西宮市・甲子園球場(撮影・林俊志)

「球児さんの引退試合を自分が壊してしまった。あのプレーは忘れられないし、球児さんが監督になったときにもすぐ思った」

あの日の悔しさを胸に刻み、懸命に一球を追いかけてきた。努力が実を結び生まれたワンプレー。監督となって帰ってきた〝球児さん〟に5年越しに借りを返した。藤川監督も「どんどん前向きにチャレンジしていけば、今まで苦しかった扉がどんどん開いてくる」と24歳に期待を寄せた。

八回、巨人のトレイ・キャベッジが放ったライナーに飛び込む阪神・小幡竜平。グラブの先に白球をおさめた=西宮市・甲子園球場(撮影・林俊志)

打っては第3打席で4試合ぶりの安打を記録。5-2の八回1死二、三塁の第4打席では中犠飛で貴重な追加点を奪った。6試合連続で遊撃で先発出場し、その間チームは負けなしの6連勝。さらに16打席ぶりの安打でトンネルも抜け、安堵の表情を見せた。

「ピッチャーが打ち取った打球をしっかりアウトにできれば勝てると思う」

磨き抜いた華麗な守備で、白球だけでなく、正遊撃手の座もがっちりとつかみ取る。(萩原翔)

★藤川監督の引退試合

2020年11月10日の巨人戦(甲子園)。一回1死一、二塁で岡本の二ゴロを小幡がトンネルして先制点を許すと、一挙に3点を奪われた。先発の青柳は5回3失点(自責0)で敗戦投手となり、小幡は2打数無安打で途中交代。0-4の九回に藤川球児がマウンドに上がり、1回無失点で引退登板を締めくくった。